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「キューバ危機」再来も――バイデン・プーチン「仁義なき戦い」-(名越健郎)

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プーチンに刷り込まれたオバマ政権の「弱さ」

 プーチン大統領が、ウクライナへの肩入れを強めるバイデン氏を敵視したことは間違いない。

 米連邦捜査局(FBI)によれば、2020年大統領選の民主党予備選で、ロシア情報機関は「社会主義者」を自認するバーニー・サンダース候補を支援し、バイデン候補を貶める偽情報工作を行った。本選挙では、2016年ほどの規模ではないにせよ、トランプ再選に向けたサイバー攻撃や偽情報工作を行ったという。

 一方で、プーチン大統領はオバマ大統領の「引きこもり外交」を軽蔑していた。オバマ政権の世界的撤退の間隙を縫って、ウクライナに武力介入し、2015年にはシリア内戦に空軍部隊を送った

 オバマ政権の副大統領だったバイデン氏なら、武力攻撃の緊張を高めることで、安全保障上の譲歩を勝ち取れると考えたかもしれない。昨年8月のアフガニスタン親米派政権崩壊も、米国の弱さを印象付けた。

 前出のトレーニン氏は、

「この30年間、欧州の安全保障は基本的に米国に支配され、NATOがその主要な手段になった。プーチンの目的は、米国主導の欧州安保システムを西欧とロシアの二本柱の構造に変えることだ」

 と指摘した。

 相手がバイデン政権なら、ロシアに不利な欧州安全保障体制を修正するチャンスという見立てだ。

 ロシアは昨年12月、(1)NATOの東方拡大中止(2)在外配備の米軍核兵器撤去(3)欧州のNATO軍事配備を1997年の水準に縮小――など8項目の条約案を米国に提示した。いずれも米側が応じられない内容ばかりで、交渉進展は難しい。外交交渉決裂のタイミングが、緊張を著しく高めそうだ。

1月下旬に中南米の3首脳と電話会談

 プーチン大統領の対米挑発がエスカレートすれば、「第2のキューバ危機」に発展しかねない。

 実はプーチン大統領は1月下旬、ニカラグア、ベネズエラ、キューバの中南米3首脳と相次いで電話会談している。クレムリンの発表では、新型コロナ対策でロシア製ワクチンの提供やエネルギー協力が話し合われたとされるが、ウクライナ危機のさ中に懸案もないこれら3国と電話協議するのは異例だ。

『ニューヨーク・タイムズ』(1月24日付)は、ロシア政府関係者の話として、

「ロシアは核兵器を西半球に配備し、米国の諸都市を短時間で攻撃できる場所に置くことを検討するかもしれない」

 と伝えた。そのために、中南米の反米3国にミサイル配備を打診した可能性があるという。

 ミサイル配備が実現すれば、1962年にソ連がキューバに核ミサイルを持ち込み、一触即発の核戦争の脅威が13日間続いた60年前の「キューバ危機」の再現となる。

 キューバ危機は、ソ連のニキータ・フルシチョフ首相が若いジョン・F・ケネディ大統領を試そうと挑発したものだった。今度は、プーチン大統領が高齢のバイデン大統領を試そうと挑発するかもしれない。

 ケネディ、バイデン両大統領はアイルランド系カトリックで、カトリック教徒の米大統領はこの2人しかいない。

 バイデン氏は2013年、ケネディ大統領を回顧する著作集に寄稿し、

「ケネディが当選した時、私は高校生だった。ケネディは就任演説から月面到達の夢まで、あらゆる可能性を切り開いた。1960年代、われわれアイルランド系カトリックは二級市民とみなされていたが、彼のおかげでプライドを持てた」

 と書いていた。

 世界は「キューバ危機再来」という歴史のアナロジーに怯えることになるかもしれない。

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