- 2022年02月01日 10:03
映画『テレビで会えない芸人』が描いたテレビ界の自主規制体質について製作者に聞いた
1/2KTS鹿児島テレビが制作したドキュメンタリー映画『テレビで会えない芸人』が1月14日の鹿児島での先行上映に続いて1月29日から東京のポレポレ東中野ほか全国公開された。ポレポレ東中野では予想通り初日満員御礼の盛況だ。
映画は芸人・松元ヒロさんの半生を追ったもので、ヒロさんの舞台での芸もふんだんに映されており、エンタテインメントとしても楽しめる。だからヒットして当然とも言えるが、ここで私が指摘したいのは、これをほかならぬテレビ局が製作したことの意味だ。
タイトルからもわかるように、これは松元ヒロさんの芸を公開できないテレビメディアのあり方をも問うた映画だ。ある意味ではテレビ批判とも言える作品をテレビマンがどんな思いで作り上げたのか。そこには今のテレビ界の苦悩が反映されている。テレビ界の現状について疑問を感じながらなかなか変わらない現実に悩む現場の思いが、この映画の背後から伝わってくる。
そういう思いを聞くために、監督を務めた鹿児島テレビ報道制作局のお二人に会って話を聞いた。
映画について少し説明しておくと、ベースとなったのは鹿児島テレビで放送されたドキュメンタリー番組だ。同番組は2020年に日本民間放送連盟賞最優秀賞やギャラクシー賞優秀賞など数々の賞を受賞し、高い評価を得た。約50分の番組を81分の映画にしたのが今回の作品だ。
ヒロさんは鹿児島出身で、これまで社会風刺のネタを舞台などで披露してきた。安倍元首相や麻生元首相をギャグにして笑いのめすヒロさんの芸も映画にふんだんに盛り込まれている。
映画で圧巻というべきなのはこれまであまり知られていなかったヒロさんの奥さんとの自宅でのやりとりだ。この女性が実に個性的で、ヒロさんの芸や生き方を理解するうえで彼女の存在が欠かせないことを示してくれる。
そのあたりはぜひ映画館に足を運んでスクリーンで確かめてほしい。
以下、鹿児島テレビ報道制作局の四元良隆部長と牧祐樹ディレクターのインタビューだ。映画の監督はこのお二人が務めている。
「テレビじゃできない」が心に引っかかった
――松元ヒロさんのドキュメンタリー番組を作ることになったきっかけは何だったのでしょうか。
四元 2004年に、鹿児島出身の吉俣良さんという音楽家の取材をしたんですが、その時に、すごい面白い鹿児島出身の芸人さんがいるんだという話を聞いたんです。絶対テレビで流せないネタばかりやるんだけど、という話を聞いた時に、「テレビじゃできない」というところが何か心に引っかかりました。
2019年2月に松元ヒロさんの鹿児島公演を観に行って、酒席をともにする機会がありました。そこでヒロさんから「最近、テレビ局の人が観に来るんです。そして、必ず言われます。『ヒロさん、面白い。絶対、テレビに出せないけど…』」。15年前に感じた心の引っかかりを思い出しました。忖度が横行している今の時代に対する思いもあって、ヒロさんにカメラを向けさせてもらえませんかと話をしたら、「いいよ」とおっしゃった。それが取材の始まりでした。いつ放送するとかは決めていませんでした。実際何が撮れるかわからない。とりあえずカメラを回していこうとなりました。

――テレビではどういう枠で放送したのですか?
四元 最初の放送が2019年7月で、30分番組でした。フジテレビ系列の九州と沖縄の局で制作する「ドキュメント九州」という深夜のドキュメンタリー番組でかけました。
一人の芸人の眼を通して、表現と言論の自由について考えるというのが番組のテーマで、例えば麻生元首相に対して風刺を交えながら、厳しく言及するシーンなど最初から入れました。表現にタブーを設けないよう、ただ単に芸人を追った番組にならないよう心掛けました。
牧 次に2020年5月に1時間番組にまとめて、深夜枠で放送しました。
それが日本民間放送連盟賞のエンターテインメント部門で最優秀賞をいただいて、今度は受賞記念ということで、鹿児島ローカルの枠ですけれど、10月に19時からのゴールデンで再放送しました。
四元 賞を取ったことで社内が盛り上がり、ゴールデンでやりましょう、ということになったのです。
牧 いろいろな賞をいただいたことで追い風が吹いたという感じです。
四元 その頃から映画化の提案を配給会社からいただいて、これまでドキュメンタリー映画を何本も作ってきた東海テレビの阿武野勝彦さんに相談に乗ってもらい、さまざまなお力添えをいただきました。結果、配給会社は東海テレビの映画を手掛けている東風に決まり、映画のプロデューサーもやっていただくことになりました。



