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患者家族とのトラブル

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当院で提供する医療にご不満があると転院をご希望されるが、これがすんなりとはいかない。A病院にご紹介しようとすると「そこは以前に医療ミスをされたことがあり嫌だ」とおっしゃる。ご家族から経過を聞く限りでは医療ミスではなく標準的な医療行為による経過でも説明可能だが、もちろんそんなことはこちらからは言わない。

ならばB病院にご紹介しようとしたら今度はB病院から受け入れを断られる。建前では医学的な理由や病床の不足が挙がるが、過去に家族とB病院の間でトラブルがあったのだろうと推測できる。覚悟を持って当院で診続けるしかない。

医療ミスならともかく「A病院では人体実験されていた」「毒を点滴に混ぜられて殺されそうになった」というようなことを仰るご家族もいる。訂正不可能な誤った信念をお持ちであるように見える。ご家族は私の患者ではないので、自傷他害の恐れがなければ、余計な介入はできない。患者ご本人の利益を第一に考えて対応する。

家族の間で意見が一致しないこともある。もともと折り合いが悪い兄弟で、遺産の分配でもめているのがうかがえる。原則としてはキーパーソンを一人に定め、ご家族で意見を集約していただくのであるが、いつも原則通りにいくとは限らない。キーパーソンである兄が「弟も病状を聞きたがっている。説明してやってくれないか」とおっしゃったとしよう。

同じ病状説明を2回するのは手間であり、病状を聞きたいのなら同席して聞いていただくのが原則なのだが、断ると兄からも弟からも不満が出て医師-患者家族関係が悪化する。別途、弟との病状説明の場を設けると、病状はそっちのけで兄が決定した治療方針に対する不満と愚痴が述べられる。立場上、兄の方針を否定するわけにはいかないが、「そういうお考えもありますね」「お気持ちはよくわかります」などと相槌を打って傾聴すれば治まる。

患者家族へのケアも医師の仕事の範囲内だ。プロフェッショナルとして十分な仕事は行う。ほとんどの場合は医師-患者家族関係にはおおむね良好であって、問題になるのは少数のケースに過ぎない。ご家族の事情はそれぞれだし、ご家族がなんらかの問題を抱えているとして、だからこそ十分な支援を要するのだ。ただ、一臨床医としては、正直、しんどいと感じることが最近は多い。医学のことだけ考えていたい。

たいていは時間をかけてお話を聞き丁寧にご説明すればなんとかなる。最悪の場合でも訴訟されるだけだとこれまでは考えていた。幸いなことに訴訟されたことはないし、仮に訴訟になっても負けるような診療はしていない。ただ、今回の事件のようなことが起きることまでは予測していなかった。どうすればいいのか考えているところだ。きわめてレアケースであるので考えても仕方ないのかもしれない。

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