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河井元法相事件被買収者、当然の「起訴相当議決」、混乱を長期化させた検察に重大な責任

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この記事などを受け、市民団体「河井疑惑をただす会」の事務局長が検察に確認したところ、告発は2020年中に受理され、東京地検の事件番号も付されて捜査中であるとの回答だった。ようやく、検察が被買収者の公選法違反事件を刑事立件したことが明らかになったのである。

私は、3月8日に出した記事【河井夫妻買収事件「被買収者」告発受理!処分未了では「公正な再選挙」は実施できない】で、被買収者の刑事処分について、以下のように指摘した。

検察は、早晩、刑事処分を行わざるを得ない。不起訴にするとしても、犯罪事実は認められるが敢えて起訴しないという「起訴猶予」しかないが、前述した求刑処理基準に照らせば、「起訴猶予」の理由が全くないことは明らかだ。告発人が不起訴処分を不服として検察審査会に審査請求すれば、「起訴相当」の議決が出ることは必至だ。検察は、その議決を受け、「検察は不起訴にしたが、市民の代表の検察審査会が『起訴すべき』との議決を出したので、起訴せざるを得ない」と言って、起訴することになるであろう。

被買収者側は、河井夫妻の公判で、検察の意向どおりに「投票の取りまとめ」の依頼の趣旨を認識して現金を受領したと証言することで、検察の判断によって起訴されることを免れることはできても、最終的には、検察審査会の議決を受けて起訴されることを免れることはできない。「検察に騙された」と気付いても時すでに遅しである。それは、被買収者側の「自業自得」であり、同情の余地は全くない。

しかし、検察が、そのような意図で、「公選法違反事件の処理としてあり得ないやり方」を用いて今回の公選法違反事件を処理し、検察審査会の議決まで刑事処分が遅延するということになれば、本来、公選法による処罰の目的であるはずの「選挙の公正」が、逆に、根底から損なわれる事態を招くことになる。

しかし、実際には、その後も、被買収者の刑事処分が行われることがないまま、4月25日の参議院広島選挙区の再選挙を迎え、河井夫妻の多額現金買収事件での自民党への批判も大きく影響し、自民党公認の西田候補は、野党統一候補の宮口治子氏に敗れた。

そして、6月18日、克行氏に対して、広島県内の地方議員や後援会員ら計100人に1約2900万円を供与した公選法違反の買収罪で「懲役3年」の実刑判決が言い渡された。

被買収者に対する刑事処分が行われたのは、克行氏の有罪判決からさらに半月余り経った7月6日だった。

東京地検の山元裕史次席検事が記者会見し、100人の被買収罪の成立を認定した上で99人を起訴猶予で不起訴、1人を被疑者死亡で不起訴にしたと明らかにした。

不起訴の理由についての「克行被告から強引に現金を渡されたり、返金したりしたケースがあった。いずれも受動的な立場にあった。」などの山元次席検事の説明が、全く支離滅裂で到底合理的な説明になっていないことは、【河井夫妻事件被買収者“全員不起訴”で「検察の正義」は崩壊】で詳述したとおりだ。

通常、選挙買収事件は、候補者側が、票や選挙運動をお金で買おうとして積極的にお金を渡そうとするのが大部分であり、被買収者側から、投票や選挙運動をしてやるからと言って金を要求する事案というのはむしろ少ない。「選挙の買収金を渡そうとしているとわかって、何回も押し返そうとしたが、結局、そのまま受け取ってしまって、返すに返せず、そのまま自宅で保管していた」などというのはよくある話だが、だからと言って、被買収が不起訴になるなどという話は聞いたことがない。そのような理由で被買収者側が処罰を免れることができるのであれば、買収罪の摘発は成り立たない。

その不起訴処分に対して、告発人の市民団体は検察審査会に審査を申し立て、それに対して、審査会が、今回、「起訴相当」、「不起訴不当」などの議決を行ったのは、あまりに当然のことであり、検察も、十分に予想していたはずだ。

検察が告発を受理していることが判明した2021年3月以降の展開は、まさに上記【河井夫妻買収事件「被買収者」告発受理!処分未了では「公正な再選挙」は実施できない】で予想したとおりになったと言えよう。

今回の議決を受け、検察は、起訴相当とされた首長・議員35人については、事件を再起(不起訴にした事件を、もう一度刑事事件として取り上げること)して全て起訴するだろう。従来の公選法違反の求刑処理基準によれば、「1万円~20万円が略式請求(罰金刑)」で、「20万円を超える場合は公判請求(懲役刑)」である。執行猶予付き懲役刑であれば執行猶予期間、罰金刑であれば原則5年間(情状により短縮可)公民権停止となるので、現職議員等は失職、公民権停止期間中は公職の選挙に立候補できない。

法律上は、検察が再度不起訴にすることも可能だが、その場合は、検察審査会で再び「起訴すべき」とする議決が行われれば、裁判所が指定した弁護士によって起訴手続がとられることになる。起訴猶予の不起訴処分について検察審査会で「起訴相当」議決が出された例として、黒川弘務東京高検検事長の「賭け麻雀」の賭博事件、菅原一秀衆議院議員の公選法違反事件(【菅原一秀議員「起訴相当」議決、「検察の正義」は崩壊、しかし、「検察審査会の正義」は、見事に示された!】)があるが、いずれも、検察は、1回目の議決を受け入れて起訴している。

「不起訴不当」の46人については、検察としては、再度不起訴にすれば、それで事件は終結するが、今後の同種事件への影響を考慮し、再検討の上、起訴する例が出てくる可能性もある。

河井夫妻の起訴の時点で被買収者も同時に起訴するという、通常の刑事処分を行っていれば、多くの被買収者に対して、昨年4月の参議院広島選挙区の再選挙の前に判決が出て、事件は終結していたはずだ。

検察の「公選法違反の実務の常識からはあり得ない対応」が行われた結果、被買収者の公民権停止を含む刑事事件の終結が2年近く遅れることになった。買収事件があった参議院選で当選した案里氏は、有罪が確定して当選無効となり、事件の中心人物の克行氏は一審で実刑判決を受け、控訴するも、昨年10月21日に取下げて有罪が確定、既に服役している。ところが、被買収者のうち現職議員26人は、来年4月の統一地方選挙まで1年余りとなった時期に、検察に起訴され、これから裁判を受けることになるのである。河井夫妻現金買収事件が広島県政界と広島の社会にもたらす混乱が、さらに長引くことは避けられない。

黒川東京高検検事長定年延長問題などをめぐる安倍政権と検察最高幹部との対立が続く中で、河井夫妻による選挙買収事件という、過去に例のない大型買収事件の摘発に執念を燃やした検察の姿勢は評価できよう。しかし、それに伴って被買収者の刑事処分を行うことが必然であるのに、それを回避し続けてきた検察は、公選法違反の捜査処分に関して汚点を残し、その信頼を大きく傷つけることになった。当然の刑事処分から逃げ続けた検察の責任はあまりに重い。

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