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河井元法相事件被買収者、当然の「起訴相当議決」、混乱を長期化させた検察に重大な責任

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2019年の参議院選挙広島選挙区での河井克行元法務大臣の多額現金買収事件で、河井夫妻の起訴状で被買収者(買収金を受け取った者)とされたのに刑事処分が行われず、その後、公選法違反で告発されて不起訴になっていた100人について、検察審査会は、広島県議や広島市議、後援会員ら35人(現職県議13名、現職市議13名)については、「起訴相当」議決、既に辞職した市町議や後援会員ら46人について「不起訴不当」、検察が捜査に着手する前に現金を自ら返却していた県議や後援会員ら19人については、「不起訴相当」議決を行った。

公選法の買収罪については、従来は、買収者と被買収者の両方の刑事処分を行うのが通常であった。ところが、2020年7月に河井夫妻が起訴された時点での記事【河井夫妻事件、“現金受領者「不処分」”は絶対にあり得ない】でも述べたように、河井夫妻の買収事件の被買収者については、勾留満期の2~3日前から、「検察は現職議員ら現金受領者側をすべて不問にする方針」と報じられ、起訴の時点の次席検事レクで、「少なくとも今、起訴するという判断はしていない。起訴すべきと考えた者を起訴している」とされ、結局、被買収者側は刑事立件すらされなかった。このような検察の対応は、従来の公選法違反事件の実務からはあり得ないものだ。

検察側が、現金受領者側の起訴を「現時点では予定していない」というのは、供述者側に、「本来は起訴されるべき自らの犯罪について起訴が見送られている」という恩恵を与えることを意味する。その恩恵が継続し、最終的に、起訴されないで済ませてもらおうと思えば、供述者は、河井夫妻の公判で検察官調書どおりの証言をせざるを得ない。現職の首長・議員等の現金受領者に「投票の取りまとめの依頼の趣旨と認識して現金を受領した」ことを公判でも証言させるために、現金受領者側に、「検察の意向に沿った証言をすれば、自らの処罰を免れることができる」との期待を持たせようとしたのではないか、と疑われても致し方ない状況だった。

河井夫妻から現金を受領したことが公選法違反に当たり、有罪となると、公民権停止となり、首長・議員を失職することになるだけに、公選法違反で起訴を免れることができるかどうかは死活問題だ。そこで、検察は、「案里氏を当選させるため、票の取りまとめの依頼と認識して現金を受領した」という内容の供述調書を録取し、河井夫妻の公判で、供述調書どおりの証言をすれば起訴を免れることができるとの期待を持たせ、公判証言で検察に協力させようと考えたのではないかと推測された。

このように検察が被買収者の刑事処分すら行わなかったこと受け、同年9月、広島市内の市民団体「河井疑惑をただす会」などが、河井夫妻の起訴状で被買収者とされた100人を公選法違反で告発したが、検察は、告発状を受け取っただけで、受理すらしなかった。

同年秋に、河井夫妻の公判が始まった。河井夫妻の公判では、被買収者のほとんどが証人として出廷したが、大半が、「案里氏を当選させるための金と認識して受領した」という検察官調書の内容に沿う証言を行い、選挙買収の金であったことを認めた。この時点では、検察は、被買収者に対す市民団体の告発状を預かったまま、告発を受理したか否かも不明な状態だった

そして、克行氏が全弁護人を解任することで公判審理の進め方に抵抗したこともあって、案里氏の公判が克行氏の公判と分離され、2021年1月21日に案里氏に一審有罪判決が出され、2月4日の控訴期限までに控訴が行われず確定し、案里氏の当選は無効となった。それに伴い、4月25日に参議院広島選挙区の再選挙が実施されることになったが、それでも、検察が告発を受理したという話はなかった。

本来、被買収者も公選法違反で公民権停止となり、一定期間選挙権もないし、選挙運動を行うことも禁じられるはずであるのに、検察が被買収者について刑事処分を行わず、起訴も処罰も行われていない状況で、参議院広島選挙区の再選挙が行われることとなった。経産省の元課長補佐の西田英範氏が自民党公認候補として再選挙への立候補を表明し、同氏の選対本部の立上げの会合では、証人尋問で河井克行氏から買収の趣旨の多額の現金を受け取ったことを認めている首長・議員が多数参加し、再選挙に向けての選挙活動に加わるなどしていた。

私は、【案里氏「当選無効」に伴う参議院広島再選挙、被買収者の選挙関与で「公正な選挙」と言えるか】で、

当然に行われるべき被買収者側の刑事処分が行われていないため、本来、公民権停止になって選挙に関わる資格がないはずの者が、選挙に関わってしまいかねないという、異常な状況になっており、検察が再選挙の告示までに刑事処分を行わない場合は、広島で公正な選挙が行われる前提条件が充たされない

と、検察の対応を厳しく批判した。

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