- 2022年01月31日 10:16 (配信日時 01月31日 08:15)
習近平の「共同富裕」は生涯国家主席への道か、中国バブル崩壊への引き金か
2/2不動産融資規制は「共同富裕」を実現させるポーズ
社会主義市場経済を導入してからの中国の経済指針は、先富論(豊かになれる者から先に豊かに)→小康社会(ややゆとりのある生活の実現した社会)でした。しかし2021年7月の中国共産党創立100周年祝賀記念式典で、習近平は「小康社会の全面的完成」を宣言し、次なる目標として「共同富裕」を掲げたのです。
共同富裕とは「貧富の差をなくし、みんなで豊かになる」ことです。確かに一部の富裕層だけでなく、中国人民すべてを豊かにすることができれば、習近平の支持基盤は盤石になり、生涯国家主席への道も夢ではなくなりそうです。しかし、そのためには今の不動産バブルは行き過ぎました。価格が高騰しすぎ、もはや住宅は、富裕層と一部の中間層以上の人間にしか手が出せない代物になってしまいました。このままでは、人口の大多数を占める一般勤労世帯の支持は得られません。
だから習近平は、恒大集団を不動産融資規制で追い込む姿勢を、ある意味「中国人民に見せつけた」と考えられるのです。恒大集団は中国バブルの牽引役でしたから、これは「過熱しすぎた不動産市場を少し冷ますぞ」という中国政府からのメッセージになります。これをすると、バブルが沈静化する反面、富裕層が損をすることにつながりますが、いいかえれば、それは「富裕層にある程度、損をさせつつ、住宅価格を一般民衆の手の届く所まで下げてくれる」ことにもなります。これぞ、まさに共同富裕。習近平はこうして、生涯国家主席に向けての民衆の求心力を高めようとしていると考えられるのです。
中国が不動産バブルをキープするために必要なこと
しかしながら、これはあくまで習近平が思い描いた(と思われる)青写真であり、実際に、そううまくいくとは限りません。確かに、これがうまくいけば、彼の支持基盤は盤石なものになるでしょう。しかし、このやり方は、下手をすると「バブル崩壊の引き金」にもなりかねません。なぜなら住宅価格の高騰を抑える政策は「もう不動産ではもうからない」というメッセージとも受けとれるため、投資家たちを「売り」方向に暴走させる危険性があるからです。
※写真はイメージです - iStock.com/Dilok Klaisataporn
中国は、その気になれば政府の市場介入で、ある程度のバブル状態を維持することはできると思います。しかし金融のグローバル化が進んでいる今日は、外資の逃げ足も速いため、中国政府が望んでいる水準で維持できるとは限りません。
もし中国が今の不動産バブルの状況を「ほどよくキープ」したいなら、大切なのは次なるメッセージでしょう。つまり、何のために恒大集団に厳しくあたっているのか、それによって国民がどんな得をできるのか、これらが富裕層と一般民衆のすべてにちゃんと伝わらない限り、中国は不慣れな市場経済に足元をすくわれかねないのです。
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蔭山 克秀(かげやま・かつひで)
代々木ゼミナール公民科講師
「現代社会」「政治・経済」「倫理」を指導。3科目のすべての授業が「代ゼミサテライン(衛星放送授業)」として全国に配信。日常生活にまで落とし込んだ解説のおもしろさで人気。『経済学の名著50冊が1冊でざっと学べる』(KADOKAWA)など著書多数。
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(代々木ゼミナール公民科講師 蔭山 克秀)
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