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米国の歳出強制削減のまとめ

米国では3月1日から歳出強制削減が始まりました。これは去年の財政管理法で、若し議会が新しい赤字削減措置に合意できなかった場合は、自動的に政府予算をカットすることが決められ、結局、それ以降、全部で3回あった話し合いのチャンスが全て物別れに終わった事で、とうとう強制措置が自動的に始まってしまったことによります。その結果、向こう10年間で3兆9千億ドル、日本円にして367兆円の歳出が削減されます。

3兆9千億ドルの内訳をみると、このようになっています。

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読者の皆さんは日本の新聞報道で3兆9千億ドルではなく「1兆ドル」という数字を読まれたかと思いますが、それは今回の歳出強制削減分だけです。しかし一歩下がって財政緊縮策全体を見ると去年の年末から今年の一月にかけて所謂「財政の崖」回避時の赤字削減ならびに増税、2011年財政管理法が成立した際に決められた強制削減などがあります。また議会承認を必要とする政府支出の削減も今回分に入れている報道もあります。

おなじ3兆9千億ドルを、今度は増税か、それとも支出のカットかという切り口で見ると、増税分は全体の18%で、残りは予算カットが65%、金利コストの低下が17%となります。
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上のグラフの青い部分、つまり歳出カット65%の部分をもう少し詳しく見ると、下のように44%が防衛関連ということになります。

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次に今回の削減で米国の財政赤字がどうなるかを示したのが下のグラフです。向こう10年間で財政赤字が36%減る計算になります。

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次に過去からの借金の累積である、米国の公的債務に対する影響を示したのが下のグラフです。赤字幅はGDPの80%以下に抑えられることになります。

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ここまでをまとめると、今回の一連の削減でエコノミストたちが主張していた、アメリカが努力すべき赤字削減が、ほぼ達成できてしまったことを意味します。

つまり歳出強制削減は米国経済にとってショックではありますが、それは悪いことだけでは無いのです。赤字を減らして健全な体質にするという面では今回、約束通りカットがはじまったことは米国財務省証券に対するクレディビリティ、つまり信頼感という意味ではプラスなのです。

ただネガティブなインパクトとして今年の雇用にして70万人分が新たに失われることになります。最近は非農業部門雇用者数が均してみると大体15万人程度で推移しているので、その数字を単純に当てはめれば、4.6カ月分が失われると言う事です。だから、今後この数字が下がってきても、余り驚いてはいけないということです。

さらに議会予算局は今回のカットがGDPを少なくとも0.5%押し下げるとしています。

いま世界各国のGDPを見ると下のグラフのようになっています。

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すると2013年のGDP成長率予想の1.9%から0.5%を引き算しても、アメリカは他の先進国より高い成長をするわけです。

これはいつも僕が書いている事だけど、一般論としてGDP成長率が高ければ金利政策は「固めになるぞ」と市場参加者は予期します。それは通貨高になりやすいことを意味します。

しかも今回の削減は財政政策という面からは痛みを伴う改革を、前倒しで実行するということに他ならないので、市場は多分、それがもたらす景気減速を一時要因に過ぎないとして、無視すると思います。

するとカットのポジティブな面ばかりが市場から評価されるという可能性も、無いとは言えないのです。

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