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「無差別襲撃が相次ぐのはメディアの責任である」犯人にわざわざ手口を教えるマスコミの罪

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過去の事件に刺激され、学習していく犯人たち

実はこれは日本にもそのまま当てはまる。アメリカの銃乱射事件にあたる、市街地や小学校などで刃物を振り回す無差別襲撃事件の犯人のほとんどは、過去の無差別襲撃事件の犯人を「ロールモデル」に見ている。

例えば、1999年9月に池袋で死者2名、負傷者6名の通り魔事件が起きた。その約3週間後、下関駅の構内に自動車に突っ込んで、利用者を次々と跳ねた後、刃物で切りつけて死者5人、負傷者10人が出た通り魔事件が起きた。犯人は公判の中で池袋の事件を意識したことを認めて、このように述べた。

「池袋の事件のようにナイフを使ったのでは大量に殺せないので車を使った」

池袋の事件後、メディアは連日のようにこの事件を報じた。筆者も当時は新米記者だったのでよく覚えているが、今とは比べ物にならないほど報道は過熱しており、犯人の素顔、人柄、周囲にどのようなことを語っていたかということを競い合うように大きく報じていた。それに下関の事件の犯人はインスパイアされ、学習して、犯行に及んでいたのである。

そんな「池袋事件の模倣犯」が大きく報道されて有名人にまつり上げられれば、新たな模倣犯を呼ぶのは明らかだ。2001年6月に大阪教育大学附属池田小学校に侵入して児童や教師を次々と刃物で刺し、死者8名、負傷者15名を出した犯人だ。実際にこの男は公判で、下関の事件の模倣犯になりたかったと述べている。

「模倣犯」がほしい情報をテレビが垂れ流し

このように例は他にも枚挙にいとまがない。例えば、昨年から続く小田急線刺傷事件、京王線刺傷事件、大阪ビル火災なども同様だ。メディアが事件を大きく取り上げて、スタジオのコメンテーターたちが「なぜ模倣の連鎖が続くのでしょう?」と議論して大騒ぎをすればするほど、前の犯行をコピペしたような模倣犯が次々と生まれている。

冷静に考えれば、当然だ。現場に大挙して押し寄せて、中継をしながらどういうふうに凶行が繰り広げられたかを事細かにリポートするなど、「模倣犯」にとっては喉から手が出るほどほしい情報を朝から晩まで垂れ流している。

ニュースリポーターがマイクを向ける

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Mihajlo Maricic

おまけに、犯人の顔写真を繰り返し放映して、スタジオでは立派な肩書の専門家やタレントが、「社会への不満が爆発したのではないでしょうか」とか「コロナ禍で孤立が深まっていて、このような人が増えているのでは」なんて感じで“悲劇の主人公”のように持ち上げている。

「なるほどね、オレもああやれば、こんなに世間は注目して大騒ぎになるのか。よし、どうせ死ぬんだから思いっきり目立ってやるか」

そのように勘違いをして、米銃乱射件事件の犯人や、通り魔事件を起こした人間のように、同じアクションに走るというのは容易に想像できよう。実際、大阪ビル放火事件の死亡した容疑者は、犯行前にスマホで「史上最悪の事件」を検索していたという。

アメリカでは「悪名を広めるな」という団体が発足

筆者も凄惨(せいさん)な事件を起こした犯人や、複数の人を殺めた犯人などに実際に会って話を聞いた経験があるが、彼らの多くは、過剰なほど自己顕示欲がある印象だ。「いつ死んでもいい」などと自暴自棄的なことを言う一方で、自分の人間性や、犯行の手口などを間違って報道されたりすると常軌を逸した怒り方をする。

矛盾をしているが、自己破滅的な事件を起こしておきながら、自分が世の中からどう見られるかということを異常なまでに気にするのだ。

2012年7月20日、アメリカで起きたオーロラ銃乱射事件の遺族は、報道が模倣犯側に及ぼす悪影響を防ぐため、「No Notoriety(悪名を広めるな)」という団体を発足している。その名の通り、事件を起こした人間にフォーカスせず、有名人にしない事件報道をメディアに求めている。

日本のメディアでは、これまで「報道の自由」の名の下に、事件を起こした人間が望むままに持ち上げて、「有名人」に仕立て上げてしまっていた。それが社会と、「模倣犯」にどんな悪影響を及ぼすのかをそろそろ真剣に考えなくてはいけないのではないか。

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窪田 順生(くぼた・まさき)
ノンフィクションライター
1974年生。テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者等を経て現職。報道対策アドバイザーとしても活動。数多くの広報コンサルティングや取材対応トレーニングを行っている。著書に『スピンドクター“モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)、『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)など。
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