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「公益活動」評価への失望と期待感

 当番弁護士や法律相談などの弁護士会の、いわゆる「公益活動」の社会的な認知度の低さを嘆く弁護士会関係者の声を今でも聞くことがあります。そして、必ずこれにくっついていわれるのは、弁護士会の広報不足、あるいは広報下手という話です。ただ、ここで認知度が低いというのは、「知られていない」というだけでなく、別の意識が背景にあります。つまりは、「もっと評価されていいのではないか」というものです。

 会員に義務化してまで実践している公益活動(「『公益性』と『競争』という仕掛け」 「弁護士とボランティアの厄介な関係」)なのに、その意味で、弁護士会の存在意義に対する社会の目線が変わってきたとか、高まったとか、要するにプラスの方向での実感がない。

 もちろん、こう考えてしまえば、果たしてこれは広報の問題か、という会員のとらえ方もあります。弁護士会が「やっている」と認知されれば、評価が変わるのか、いや、弁護士会が法律相談をやっていることくらい、多くの市民は知っている、と。そもそも、広報以前に、弁護士会の活動は、社会一般の評価につながりにくい性格もあります。言ってみれば、司法への関心と比例している面があります。つまり、一般的な縁遠さとともに、当事者になって初めてご縁ができる、我がことに感じる領域が多いからです。

 そう考えると、司法改革が描いた司法や弁護士の登場場面が格段に増え、だれもが必要とする、ご縁ができてしまうという社会では、そういう評価につながりにくい性格も変わるはずと思い描いた方々もいたのかもしれません。

 ところで、弁護士会の公益活動への評価と書いていますが、いうまでもなく、これはそれを支えている弁護士という存在への評価です。法律事務所のホームページでは、所属弁護士が弁護士会の公益活動に積極的に参加していることをうたっているところもあります。ブランドイメージづくりいう観もありますが、そうしたアピールが弁護士全体のイメージを「公益」的存在へ引き上げているとまではいえる状況にありません。

 依然として、弁護士は個人として利益を追及する事業主。そうした強固なイメージ゛があるがゆえに、弁護士会にしても、個々の弁護士にしても、「公益」的アピールは、前記強固なイメージに吸収されている、ということもできるようには思えます。

 弁護士会のなかにも、広報だけでなく、質の向上をいう人たちはいます。例えば、法律相談にしても、その経験者がすべて弁護士会の「公益」的存在意義を評価するスピーカーになっているわけではありません。むしろ、「事務的対応」「通りいっぺん」といった、期待できないという声の方が広がっています。法律問題で悩んでいる市民に接したとき、ほとんどの人は、弁護士会の法律相談を知っている、少なくとも「まず、弁護士会に相談」までの認識は相当程度周知され、既に体験済みの人も少なくありません。むしろ、問題はそこから先の人がほとんどです。

 相談者の不満ということについていえば、法律相談そのものがはらむ厄介な性格もありまが(「法律相談の『不満』要素」)、少なくともその存在を知らせるだけで、弁護士会へ評価が変わって来るという見通しに立てる状況ではないように思えます。

 できるだけのこと、やれことは尽くすという姿勢をよし、とするムードがこれまでも弁護士会にはありました。広報の充実、質の向上への努力。「もっと評価されていい」という、いわば身銭を切っている側の意識がそれを支え、会員が一応それに向って汗を流すムードもありました。ただ、今、多くの弁護士の意識は、そうした方向からどんどん離脱しているように見えます。「もっと評価されていい」よりも、「やっていられない」の方向に。

 公益活動の認知度の低さをいう関係者の声が、どうも足もとで起こっている、そのことの深刻さの方を認知していないようにとれ、時々、奇妙な気持ちにさせられます。

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