記事

大学入学共通テスト「数学ⅠA」に受験生が苦戦 急激な難化は正当だったのか

1/2
写真AC

難化した大学入学共通テスト「数学ⅠA」 平均点は史上最低となる公算大

「流石に無理がある」

受験生を受け持つ塾経営者の一人として、大学入学共通テストの数学ⅠAを解き終えた後、そんなフレーズが頭をよぎった。

共通テストは、思考力・判断力・表現力を養いたいとか、実用的な場面で応用できる生徒を育みたいとか、現場を把握せずに様々なことを要求されてきた。その結果、基礎学力を計測するという元来の目的はどこかへ飛んでいってしまい、教科書の内容を理解するだけでは到底太刀打ちできない代物へと変貌を遂げてしまっていた。

2022年度大学入学共通テストの受験生の自己採点結果の集計にもとづく予想平均点を駿台予備学校とベネッセコーポレーションが運営する「データネット」が1月18日昼過ぎに発表した。難化した科目が多く、昨年より急落する見通し。教科・科目別の予想平均点をみると、とりわけ数学の平均点が落ち込んでおり、「数学1A」(科目名の数字はローマ数字)は歴代最低となる可能性が高い。
—— 大学入学共通テスト2022 自己採点集計は文系511点、理系515点 数学IAは38点、歴代最低か(高校生新聞オンライン) https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/8505

受験生からは問題作成者への恨み節が方々から聞こえてくる。当塾の生徒が通う某高校の先生に至っては「最悪」と嘆いたうえに、時間内に解くのを諦めたそうだ。受験産業から軒並み「時間内に解き終えるのは難しいだろう」といったコメントが出ていることからも、問題の難易度に対してとにかく時間が足りなかったのだ。結果、難関大の数学で十分な点数を取れる生徒でさえ、苦戦を強いられることとなった。

共通テストは、基礎学力を測る問題とすべきだった

当然の話だが、難関大の二次試験の方が高度な思考力・判断力・表現力といった多面的な能力が要求される。共通テストより多くの試験時間が課せられ、しかも問題数が抑制的なのだから、受験生から見てもじっくりと思考力を働かせる時間がある。

ところが、今回の試験のように時間内に解き切るのが難しい試験になってしまうと、もはや思考力をじっくり働かせる余地などない。その代わりに要求されるのは、猛スピードで正確に問題を解いていく情報処理能力や、簡単に解くことのできる時短テクニック(今回の試験であれば、大問3は完全順列の公式という、ややマニアックなものを知っていれば随分と時短できた)の習得である。これでは、十分な思考力を有した受験生までもが、共通テスト専用の盲目的トレーニングに多くの時間を割かざるを得ない。そんな能力を磨いて、いったい何になるのだろうか。かつての共通一次や初期のセンター試験のように、基礎学力を十分有した生徒であれば悠々と高得点を取れる試験の方が有意義だったのではないかとさえ思える。

しかしながら、責任を問題作成者に押し付けるべきではない。根本的には、迷走を続けた挙句、無理難題を作成者側に要求した人々が悪いのである(荒唐無稽な入試改革の経緯については拙著『入試改革はなぜ狂って見えるか』(ちくま新書)をご参照いただければと思う)。

そもそも、各大学・学問によって求める思考力・判断力・表現力等のあり様は異なるのだから、共通テストで計測することそのものに無理がある。多面的な能力の計測は各大学に任せて、全ての受験生にとって共通して要求されるベーシックな学力・能力を計測すべきではないのか。

あわせて読みたい

「大学入学共通テスト」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。