- 2022年01月23日 15:32 (配信日時 01月23日 12:15)
「性格が激変し、仕事を失い、夫とも離婚」30代女性を10年間苦しめた若年性更年期の怖さ
2/2乳がんリスクが不安なら定期的な検診を
更年期と判明したところで、いよいよ治療がスタート。私の場合、閉経前だったことと、生理痛が重く、経血量過多の月経困難症でもあったことから、低用量ピルが処方された。
「ピル」というと、避妊薬のイメージを強く思う方もいるが、月経困難症の他、子宮内膜症の予防やニキビ予防などにも処方される。乳がんのリスクが不安視されるが、厚生労働省による調査では「乳がんのグループに比べ、乳がんではないグループのほうに約2倍のHRT(低用量ピルなどによるホルモン補充療法)経験者がいた」という結果もある(45~69歳の日本人女性が対象。過去10年間以内に乳がんの手術を受けた女性と、受けていない女性にHRTなど21項目のアンケート調査を2004~2005年秋に実施)。
もちろん乳がんのリスクはゼロというわけではないが、定期的に乳がん検診を受けることで不安は大幅に解消されるはずだ。実際、私自身も年に一度、乳がん検診を受けている。
治療のおかげで「真冬でも半袖」状態が解消
最初に処方された低用量ピル(マーベロン)は体質に合わず、むくみなどの症状があったが、ヤーズという種類に変えてから副作用は皆無。そして、飲み始めて2週間、症状のうちで一番つらかったホットフラッシュが消えた。それまではいつ症状が出るかわからなかったので、真冬でもジャケットの下は半袖しか着ることができず、風邪ばかり引いていた。「これからは長袖も着られる」。そんな些細なことが妙に嬉しかっ た。
ホットフラッシュの症状が消えるとともに、ジェットコースターのようにアップダウンが激しかったメンタルも一気に穏やかになった。心に住んでいた猛獣もいつの間にか消え、感情のコントロールも容易になった。それによって人と対立したり、言い合ったりすることもなくなり、人間関係がスムーズに。「消滅した」と思っていたキャリアも、徐々に元通りに、いや、それ以上に回復していった。
当時の私を知る人たちは口をそろえてこう言う。「悪霊にでもとりつかれているかのようだった」と。それほどまでに更年期は、人を変えてしまうのだ。今でこそ笑いのネタになっているが、あのまま放置していたら、ここに存在しているかどうかもわからない。これは決しておおげさではなく、経験したからこそわかる「まぎれもない事実」である。
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Chinnapong
「一時的な体調不良」「放っておけば治る」は誤り
更年期は症状がひどくなれば私生活はおろか、私のように仕事を切られるなど、仕事にも悪影響を及ぼす。前出のNHKの調査データによると、更年期によって離職した女性は46万人に上ると推定される。
離職の主たる理由は「仕事を続ける自信がなくなったから」「症状が重かったから・働ける体調ではなかったから」「職場や会社に迷惑がかかると思ったから」などさまざま。今や更年期は、自民党の「女性の生涯の健康に関する小委員会」においても議論される社会全体で向き合うべき問題なのだ。今後は生理休暇のような更年期休暇や、更年期症状で休職した際の収入保証など、職場や国の支援が求められていくと考えられる。
自身の経験を通して思うのは、「更年期は女性ホルモンの減少による一時的な体調不良」ではないということ。ましてや「放っておけば治る」ものでもない。
今までにない不調を少しでも感じたら、更年期を疑ってほしい。そして、躊躇することなく、婦人科を受診してほしい。今、私が平穏な暮らしをしていられるのは、婦人科を受診し、適切な更年期治療をしたから。そう、つらい更年期を乗り越えるには、婦人科医の力が欠かせないのだ。
治療は「更年期」が終わった後も続く
ちなみに55歳になった今も治療は継続中で、定期的に吉野医師のクリニックに通院中だ。更年期の定義とされる「閉経を挟んだ10年間」を過ぎたら治療は終わりと思いたいところだが、残念なことに閉経後は「老年期」というステージが待っている。
60歳を超えると女性ホルモンはほぼゼロとなり、骨粗しょう症、動脈硬化、尿失禁や性交痛といった泌尿生殖器症状が起こりやすくなる。それらを予防するため、50歳を過ぎてからは低用量ピルに代わり、ウェルナーラ配合錠でホルモンの補充療法(HRT治療)を行っている。現在のところ副作用は一切なく、体調も万全。中性脂肪は若干高いが、他の数値は標準値以内だ。公私ともに順調で、老年期というより、「幸年期」といったほうがしっくりくる。心に猛獣が住んでいた頃が嘘のようだ。
最新のデータによると、日本人女性の平均寿命は87.74歳(厚生労働省「令和2年簡易生命表」)。その中で更年期が占めるのは、「人生のトロ」ともいえる時期にあたる。ガマンして、やりすごすには、あまりにも長い10年間。「一生分でもティースプーン1杯程度」と言われる女性ホルモンに、人生を左右されるのはあまりにももったいない。
更年期や老年期を「幸年期」にするためにも、自分のカラダとメンタルのちょっとした変化を見逃さないでほしい。
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葉石 かおり(はいし・かおり)
酒ジャーナリスト・エッセイスト
1966年、東京都生まれ。日本大学文理学部独文学科卒業。全国の清酒蔵、本格焼酎・泡盛蔵を巡り、各メディアにコラム、コメントを寄せる。「酒と料理のペアリング」を核にした講演、セミナー活動、酒肴のレシピ提案を行う。2015年、一般社団法人ジャパン・サケ・アソシエーションを柴田屋ホールディングスとともに設立し、国内外で日本酒の伝道師・SAKE EXPERTの育成を行う。著書に『酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP)、『日本酒のおいしさのヒミツがよくわかる本』(シンコーミュージック)、『死んでも女性ホルモン減らさない!』(KADOKAWA)など多数。
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(酒ジャーナリスト・エッセイスト 葉石 かおり)
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