- 2022年01月22日 14:50 (配信日時 01月22日 11:15)
「女子高生が悲鳴をあげて大喜び」ゴミ拾い中のディズニーキャストがやっている"神対応"の中身
2/2「何をしているんですか?」という質問の意味
晴れてキャストデビューを果たして2日目のことだった。オンステージでスイーピング(※3)をしていると、女子高校生とおぼしき2人組のゲストが私に近寄ってきた。「何をしているんですか?」「?」
掃除をしていることは見たらわかるだろうと思ったが、質問の意図がわからないまま、とりあえずこう答えた。
「ゴミを集めているんですよ。ポップコーンなんかがあちこちに落ちていますからね」
※写真はイメージです - iStock.com/Alex Potemkin
それを聞いた彼女たちは怪訝(けげん)そうに顔を見合わせると、そのまま無言で立ち去っていった。それからしばらくして、今度は小学生の女の子を連れたお母さんから尋ねられた。
「何を集めているんですか?」
「ええ、ポップコーンなどが落ちていますから……」
「……あぁ、そうなんですか。すみません」
なぜだか今度は親子でがっかりされてしまったようだった。さすがにこれは変だと思い、休憩時間に同僚キャストの谷口さんに尋ねてみた。
「今日、スイーピング中にゲストから何度か『何をしているんですか?』と聞かれたのですが、あれはなんでしょうか?」
勤続10年のベテランキャストだった谷口さんは笑いながら答えてくれた。
「その質問、よくゲストから聞かれることがあるんですよ。一番オーソドックスな返答としては『夢のカケラを集めています!』ですかね。で、笠原さんはなんて答えたんですか?」「……」
キャストへのこのような質問は観光バスのバスガイドが始めて、それがいつの間にか広まったとの説があるようだが、真偽のほどは定かではない。その翌日、早くも私にリベンジのチャンスが訪れた。今度は中学生と思われる3人組の女の子グループだった。ひとりがおずおずと近づいてくると、「あの、すみません。今、何をしているんですか?」「ええ、夢のカケラを集めています」
彼女の表情がパッと明るくなったかと思うと、「ありがとうございます」と頭を下げて去っていった。私も彼女たちの思い出作りに協力できたかと思うと、嬉しくなった。
(※3)ダストパン(チリトリ)とトイブルーム(ホウキ)を使って行なう掃き掃除。
「なんだ、またその答えか」
修学旅行の時期や、春休み・夏休みで地方から来園するゲストが多い時期などは1日に何回もこの質問を受けることがある。
先述の中学生グループのようなリアクションが一般的だが、なかには「キャアアァァ!」という悲鳴をあげて喜びを表現する人がいたり、「すごーい!」と拍手をしながら欣喜雀躍(きんきじゃくやく)する人がいたりする。過剰に周囲の注目を集めることになり、たいへん恥ずかしい。
リアクションが激しいのは若い女性グループの場合が多く、それらしきゲストが近づいてきたとき、質問されるのを回避するために進行方向を変えてやりすごしたことが少なからずあった。とはいえ、ゲストの反応が薄いと寂しい。「そうですか」とだけ言って立ち去られたりすると、忙しいときにわざわざなんで聞いてきたんだよ、などと思ってしまう。
なかには、オーソドックスな返答をすると、「なんだ、またその答えか」とか、「集めてどうするんですか?」などとツッコミを入れてくるゲストもたまにいる。
女子高生から「愛ってなんですか?」と聞かれ…
同僚のキャストにはオリジナルな返答を得意とする人もいた。
谷口さんは「ピーターパン空の旅」の前で聞かれたときには「ピーターパンが振りまいた落ち葉を集めています」というように場所や時期などによって臨機応変に回答を変えるのだという。
笠原一郎『ディズニーキャストざわざわ日記』(三五館シンシャ)
このようにキャストによって答えが変わったりすることも広く知られるようになったため、手あたり次第カストーディアルキャストに聞きまくるゲストもいる。私はといえば、谷口さんのような返答はやはり恥ずかしく、もっともオーソドックスなものに少しだけアレンジを加えて、「幸せのカケラを集めています」をもっぱら使っていた。
ゲストからの受けはまずまずだったように思う。あるとき、「イッツ・ア・スモールワールド」の前でスイーピングしていると、ワイワイ言いながら数名の女子高校生が近寄ってきた。いつもの質問が来るなと「幸せのカケラ」を準備していたら、そのうちのひとりから突然、「愛ってなんですか?」と聞かれた。一瞬焦ったが、とっさに「愛とは決して後悔しないこと」と答えた。
彼女は「深い!」とだけ言い残して去っていった。そもそも質問の意図はなんだったのか、いまだによくわからない。
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笠原 一郎(かさはら・いちろう)
元ディズニーキャスト
1953年生まれ。山口県山口市出身。一橋大学卒業後、キリンビール入社。マーケティング部、福井支店長などを経て、57歳で早期退職。東京ディズニーランドに準社員として入社。65歳で定年するまで約8年間にわたりカストーディアルキャスト(清掃スタッフ)として勤務。
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(元ディズニーキャスト 笠原 一郎)
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