- 2022年01月21日 12:38
【読書感想】シンプル思考
2/2「Satozaki Channel」はプロ野球OBが運営するチャンネルのなかで異質だと言われます。かといって、奇をてらったことはなにひとつしていません。やりたい企画を遂行し、言いたいことを言う。これだけです。
ではなぜ、プロ野球OBのチャンネルでも異質な存在でいられるのか?
理由は簡単です。ほかは同じ企画が多いから。現役時代の昔話。ゲストも同じ人がいろんなチャンネルに出演していて、なおかつ話す内容も代わり映えしないため、視聴者の立場としては誰のチャンネルを観ればいいかわからない。
「じゃあ、里崎のように歯に衣着せぬ物言いをすればいいじゃないか」
僕は別に舌鋒鋭く話しているつもりはありませんが、多くのOBの方々はきっとそれができないんでしょう。なぜなら、将来的にプロ野球で指導者としてユニフォームを着たいから。各チームにとって悪いこと、あるいはネガティブに捉えられてしまうことが言えない。気持ちはわかりますけどね。
でも現実は、言いたいことを言って、やりたい仕事をしていても、現場に戻れる人は戻れます。巨人で一軍投手コーチをしている宮本和知さんやヘッドコーチの元木大介さんがなによりの好例じゃありませんか。
里崎さんは、「プロ野球の指導者になる気がない」ということを、自らの武器ととらえて、他のプロ野球OBが「こんなことを言ったら、関係者に嫌われるかな……」と恐れてできないことをやり続けているのです。
里崎さんの話を読んでいると、自分が持っているものが、より高く売れる場所、他者と差別化できる方法をつねに意識しているというのが伝わってくるのです。
「プロ野球選手のセカンドキャリアの最上位は監督やコーチになること」という先入観や「強いチームに入って、競争に勝ち抜いてレギュラーを目指すべき」という他者からみた「理想のアスリート像」へのこだわりを捨てることで、里崎さんは「自分の居場所」を確立しています。
この本で、里崎さんは「自分の目的をしっかり確認しておくこと」「それを実現するために要領良く振る舞うこと」を繰り返し語っておられます。
そして、こんなことも書かれているのです。
オリンピックで金メダルを獲得したアスリートには、勝てた要因についてこう述べている人が多いような気がします。
「世界一になるために、世界一の練習をしてきました」
僕はこの言葉に激しく同意します。苛酷な練習に耐えられるだけの体力や肉体を手に入れられるということは、すなわち多くの技術を習得できることでもあります。
先ほど書いた通り、僕自身も高校からウエートトレーニングを精力的にこなすことで打球の飛距離がアップし、プロへの扉を開くことができました。ロッテでも体力強化を最優先事項としたことで、結果的にバッティング技術も向上できました。守備に至っても、基本以前の構えから作り上げ、キャッチングなどの反復練習を繰り返すことでひとつずつ正しいスキルを習得していきました。
「努力の方向性が間違っていなかった」と前述しましたが、それをさらに言い換えれば「質の高い練習量をこなしてきた」と自負しています。
世間では考えなしに「量より質」と言う人がいます。実に耳障りです。
僕の経験上、この類いの理論を振りかざしている選手で、成功した人を見たことがありません。そういうことを平然と言う人は、楽をしたいだけか、結果を出せない自分に対する言い訳をしているだけなんだと思います。(中略)
素質があり、将来性がある選手を「ダイヤの原石」なんて表現したりしますが、年々、そういった選手が本物のダイヤになるケースが少なくなっているような気がします。
素質があり、技術も高いけれど、体力がない。これが彼らの特徴です。
「量より質」ではなくて、「質も量も」じゃないと、レベルが高いところで頭角を現すのは難しい、ということなのでしょう。
里崎さん自身も、さりげなくではありますが、自らがやってきた(合理的で)キツイ練習についてところどころで触れています。
「自分はプロ野球選手じゃない、それどころか、特別な『強み』なんて持っていない」という人のほうが、むしろ、「刺さる」内容だと思います。
里崎さんは一流選手ではあったけれど、「名球会入りするほどの成績」でもなく、「コーチから監督になるのが既定路線」というほどのチームのレジェンドでもなかった。
でも、そういう「やや中途半端な存在」だからこそ輝ける「居場所」を探し、見つけることができているのです。
「ただ、やるべきことをやる」
それを意識せずにはいられない本でした。
まあ、わかっていても、それができる人って、そんなにいないんですけどね。僕もできないまま半世紀生きてきたことを思い知らされました。







