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「数百円なのに、おいしくて清潔」そんな食事が気楽にとれる先進国は日本だけという事実

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数百円でしっかり食事ができる環境は世界で珍しい

また、「最高級」のレストランに限らず、東京の食のレベルは世界で最も平均値が高いことも間違いないとこれまで世界各国に足を運んできた私は思いますし、海外出張の多いビジネスパーソンの多くは賛同してくれると思います。

数百円で食事ができる牛丼屋、ハンバーガーショップをはじめとしたファストフード店は、都内のどの駅前にも大抵あります。日高屋、幸楽苑、リンガーハット、サイゼリヤといったチェーン店やファミレスもたくさんあり、おおむね1000円以内でしっかりした食事をとることが可能です。鳥貴族など居酒屋も2000〜4000円程度である程度美味しい食事が食べられますし、コロナ前には新宿ゴールデン街に欧米人があれだけ集まっていたのも、安さと美味しさと雰囲気を併せ持っているお店が多いからでしょう。

回転ずし
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/tostphoto

ちなみに、東京でラーメンを食べると、おおむね800〜1000円程度です。「昔に比べるとずいぶん高くなった」と言う人も多いのですが、NYではラーメン1杯が1500〜2000円くらいするにもかかわらず、現地の人からは「コスパが悪い」という感想はあまり出ません。事実、NY、LA、パリの人にラーメンの話をしたら、「東京ではそんな金額で食べられるのか!」と驚かれます。欧米先進国の大都市に限って言えば、たった数百円でこのレベルの食事がとれる状況は、かなりレアなのです。

ポイントは「安くてもそこそこ質がいい」

ここで大事なのは、東京の食事は「安くてもそこそこ質がいい」ということです。

原田曜平『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)
原田曜平『寡欲都市TOKYO 若者の地方移住と新しい地方創生』(角川新書)

日本に住む我々はこれが当たり前だと思っていますが、世界の大都市では、そういうわけにいきません。北京やNYでも安い店はあります。しかしものすごくマズかったり、(特にアジアの屋台などは)味は美味しくともよくわからない危険な材料が入っていると言われていたり、不衛生だったり、店員の態度がひどかったりと、安いなりに低品質を覚悟しなければなりません。

しかし日本の場合、安いうえに店内は清潔です。店員はちゃんと教育されていて、味もそこそこ、高い水準をクリアしています。

日本人はたった数百円の食事の店に対してさえ、ちゃんとしたサービスを要求するので、店は律儀に応えていますが、これは諸外国ではちょっとありえない考え方です。ちゃんとしたサービスを受けたかったら高級店やホテルに行くべきであって、激安店でサービスの質を求めるのはお門違いも甚だしい。海外では「安かろう、悪かろう」を当たり前のこととして受け入れる人が大多数なのです。

世界各国の料理を安く気軽に楽しめる

食の選択肢の多さ、懐の深さも東京のすごいところです。和食ひとつ取っても、うどん、蕎麦からトンカツ、寿司、天ぷら、煮物、鍋料理、魚料理まで幅広く、選択肢に事欠きません。イタリアンやフレンチ、中華料理や韓国料理、各種エスニック料理といった世界各国の料理も、東京で食べられないものは少ないでしょう。

食だけが趣味の私は、これまで「食べログ」で3.7以上の得点をとっている東京圏のお店のほとんどに行きましたが、行きたいお店のリストは消化しきれません。世界各国のレベルの高い料理を安く楽しみ続けられるエリアは、世界において東京以外にはないでしょう。しかも、都内なら電車移動1時間以内くらいの範囲で、ほとんど食すことができます。

最高級は負けても「平均点」は圧勝

たとえ有名店でなくてもレベルが高く、先日、ナポリ出身のイタリア人男性に「パスタはイタリアで食べるより日本で食べるほうが美味しいですよね」と言ったら、「はい」と苦笑いしながらうなずいていました。

もちろん、イタリアの高級店に行けばパスタは絶品です。が、ぶらっと入った安い店で比較するなら日本のほうが圧倒的に美味しい。これはイタリアに行ったことがある日本人なら誰もが納得する話だと思います。日本で展開するイタリアンレストランのチェーン「カプリチョーザ」の「大定番! トマトとニンニクのスパゲティ」は、“あの価格帯にしては”かなりレベルが高いのです(ただし、イタリアのパスタとは別物とイタリア人に言われることもありますが)。

一人客でもバリエーションが豊富

さらに言うと、ひとりで食事をしやすいのも東京の特徴です。立ち食い蕎麦、カウンターのラーメン屋、回転寿司屋、立ち飲みなど、東京にはひとりで食事をすることを前提にした店がたくさんあります。最近では女性がひとりで入りやすい店も増えました。海外にもひとりで食事をできる店はありますが、バリエーションの多さは東京が一番でしょう。「ひとり焼き肉屋」や「ひとカラ(1人カラオケ)」などが象徴的です。

今、世界の先進国・先進エリアでは「晩婚化」「非婚化」が共通の社会問題となっており、つまり、世界中の若者たちの間で「おひとりさま」が増えています。こうした今の若者特有のニーズを世界で最も満たすことができるのも東京なのです。

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原田 曜平(はらだ・ようへい)

マーケティングアナリスト

1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーを経て、現在はマーケティングアナリスト。2003年、JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。主な著作に『ヤンキー経済 消費の主役・新保守層の正体』(幻冬舎新書)、『パリピ経済 パーティーピープルが経済を動かす』(新潮新書)、『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』(光文社新書)、『寡欲都市TOKYO』(角川新書)などがある。

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(マーケティングアナリスト 原田 曜平)

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