- 2022年01月16日 15:27
北方領土「2島返還」から転換か 林外相「〝4島〟が日本の立場」と明言
2/2■ 歓迎すべき「4島返還」への回帰
「4島返還」をいっそうにじませた林発言は、日本の国益を考えれば、むしろ歓迎すべきだろう。
「2島返還」は主権放棄につながるからだ。
国後、択捉、歯舞、色丹の4島は、歴史的にみて一度も他国の領土になったことがない。
日本とロシアの初めての外交取り決め、1855年の日露通好条約でも、国境は「エトロフ島とウルップ島との間にあるべし」と明記されている。詳細に立ち入ることは避けるが、そのほかの文書、歴史的経緯からも、日本固有の領土であることは明らかだ。
しかし、旧ソ連は、太平洋戦争で日本が降伏した直後の昭和20年8月末から9月にかけて、混乱につけ込んで、武力をもって4島を不法占拠した。その後も居座り続け、日本の返還要求に応じず、今日までその状態が続いている。
シンガポール合意において安倍首相が、歯舞、色丹の2島返還という大幅譲歩をしたのは、先方のかたくなな態度を考慮、2島だけでも取り戻すことができるなら、とりあえず実現し、国後、択捉については、共同経済活動の特区として双方が実利を得る手段を講じるのが得策という判断だった。
1996年、安倍氏の地元、山口県・長門で行われたプーチン大統領との首脳会談で、安倍氏が漁業、医療、環境など8項目の共同経済活動を提案したのも、2島返還への布石だった。
■ シンガポール合意はもはや根拠失う
しかし、案の定というべきか、シンガポール合意での譲歩、共同経済活動という提案にもかかわらず、ロシア側はその後も返還に応じる意思をみじんもみせていない。
2021年は、北方領土で軍事演習を繰り返し、7月下旬には、ミシュスチン首相が択捉島訪問を強行。同時期、プーチン大統領は、北方領土について前年の憲法改正に盛り込まれた「領土割譲の禁止」条項を盾に、北方領土の返還が困難なことをあらためて明確にした。
この間、安倍首相は、シンガポール合意を見直すのか、維持するのか明確にしないまま2020年初秋に退陣。後任の菅義偉政権も、何らの決定をすることなく、約1年で総辞職してしまった。
こうした経緯を考えれば、シンガポール合意は、もはやその根拠を失ったと考えるべきだろう。
1月13日の記者会見で、林外相は、シンガポール合意が依然効力を持つのかについては言及を避けた。当事者である安倍元首相への配慮と、首脳間の合意を破棄したと受け取られることへの影響を考慮した判断があったのかも知れない。
■ 首相は施政方針演説で説明を
「4島返還」は戦後一貫して日本政府の悲願だった。主権を守ることは国の成り立ちの基本であるからだ。
実利を得るのが目的としても、わが国の固有の領土を手放すことは、その主権を放棄するに等しい愚行という非難は少なくない。「自国の主権を維持する」(日本国憲法前文)という国の責務にも反するという指摘もなされている。
「4島返還」の看板を下ろしてしまったら、尖閣、竹島問題にも極めて悪い影響を与えるだろう。
「2島返還」は〝官邸官僚〟の誤った進言を容れた安倍内閣の失政という厳しい指摘すら聞こえてくる
岸田政権が、「4島返還」に方針変更するにしても、「合意破棄」などと正面切って宣言する必要はあるまい。交渉の過程で事実上骨抜きにしてしまえばいいことだろう
通常国会が1月17日から始まる。岸田首相は就任後初めての施政方針演説を行う。「2島返還」を放棄し、「4島返還」という従来の日本の大原則に立ち返ることを国民、ロシアに鮮明にするには、またとない機会だろう。施政方針演説は召集日の17日に予定されている。
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