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「事前運動」規制をめぐる問題と、公明党石井幹事長の「応援メッセージ」

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石井メッセージの評価

一方、石井メッセージで「公明党も渡具知武豊勝利のために全力で取り組んで参ります。共々に最後の最後まで戦い切って、二期目の勝利を勝ち取りましょう。」と述べているのは、まさに、「今回の市長選挙における勝利」をめざすことへの直接の言及であり、まさに特定の選挙での当選を得させる目的による発言だ。

しかも、その「市長選挙における勝利」に関して、「相手候補」の政策が抽象的でまったく説得力がないとか、相手候補が当選した場合に、「4年前まで基地反対のほかに政策が無かった革新市政に逆戻り」「市民生活はほったらかされ、活気のない名護に後戻り」などと、渡具知氏の対立候補の批判を繰り返し述べている。この部分は、渡具知氏と相手候補との一騎打ちの予想の下に、相手候補に投票しないように呼び掛ける趣旨とも解し得るものであり、市長選での投票行動にも関連する発言だといえる。

そして、「現実の選挙は大変厳しい状況にあります。」と選挙情勢の話に転じ、「相手陣営はオール沖縄が全県から支援体制を敷き、総力戦で戦いに臨んでいると聞いております。」と述べて、相手候補側の「支援体制」に言及した上、今回の市長選挙での渡具知陣営の「戦い方」について述べている。

4年前の市長選での渡具知氏の「大逆転勝利」が、「最後の最後まで渡具知陣営が市内全域をくまなく回り、一票一票を丁寧に積み上げてきた」という「戦い方」によるものだとし、「一票に執念を燃やし頑張って参りましょう」「共々に最後の最後まで戦い切って、二期目の勝利を勝ち取りましょう。頑張りましょう。」と言って、今回の選挙でも、「市内全域で渡具知氏への投票を呼びかけて、一票一票を丁寧に積み上げる」という方法で選挙運動を行っていくよう要請している。

そして、そういう方法で「戦い切って」「頑張りましょう」と言って、今回の選挙での渡具知氏の当選をめざすことを強く求めるメッセージで締めくくっている。

石井メッセージは、今回の市長選という「特定の選挙」での、渡具知氏という「立候補表明者」について具体的に選挙運動を呼びかけるものであり、「事前運動」であることを否定しようがない内容だと言うべきである。

玉城メッセージの評価

玉城メッセージは、今回の市長選挙における岸本氏の位置づけについて「名護市長選挙に立候補の用意を進めている岸本洋平さん」と述べている。あえて「立候補の用意を進めている」として、立候補の予定や表明についての直接的な言及を避けている。

そして、辺野古新基地建設についての「反対の意思を表明している」という岸本氏の基本的な姿勢を評価し、現在の「新型コロナウイルスの感染の再拡大」が「米軍基地由来」であること、それが、「日米地位協定の不備」によるものであることを指摘し、県民の「努力」「我慢」だけでは感染が防止できないことを厳しく批判している。

そのような事態について、「米軍基地が沖縄県経済の発展の最大の阻害要因となっている」「これ以上の過重な基地負担は認めることはできません」と述べて、10代20代の若者達が参加した「未来への豊かな街づくり」として、「岸本洋平さんが準備を進めている未来に向けた大きな未来都市構想」への参加を呼びかけるメッセージで締めくくっている。

市長選挙への立候補を表明している岸本氏への応援メッセージでありながら、岸本氏を「選挙に向けて準備している人物」と位置付けた上、選挙での投票や選挙運動には直接言及せず、岸本氏がめざす「構想」への「参加」を呼びかけるものだ。「選挙運動」としての性格を最大限に排除したもので、告示直前のメッセージとして適切なものといえよう。

3者のメッセージの評価とその背景

上記のとおり、玉城メッセージは、告示直前の時期の立候補予定者への応援メッセージに当たって、公選法上「事前運動」に該当しないよう十分な検討が行われたものと思われ、極めて適切なものである。

茂木メッセージは、全く問題がないとまではいえないが、概ね穏当で無難な内容であり、「事前運動」との批判を招かないよう十分に配慮されたものである。

一方、石井メッセージは、告示前に公党幹事長が公然と発するメッセージとしてあり得ない「露骨な選挙運動の要請」であり、「事前運動」としての公選法上の違法性は明白である。

3つの応援メッセージは、現職市長の渡具知氏側の支持政党の自民党、公明党の幹事長、対立候補の岸本氏側の有力支援者である玉城知事が、いずれも、今回の名護市長選挙を極めて重要な選挙と位置づけ、選挙情勢については「大接戦」と認識した上で送った告示直前の応援メッセージだが、その内容が三者三様であることには、それなりの背景があると考えられる。

まず、玉城知事であるが、今回の応援メッセージが公選法の事前運動の規制を十分に意識した適切なものになっていることの背景に、2018年の名護市長選挙や自らの沖縄知事選挙で、「違法な事前運動」で厳しい批判を受けた経験があるものと思われる。玉城知事は現職知事として、今回の名護市長選挙で公選法上の違法性を指摘されることがないよう、慎重な検討を行った上で岸本氏の応援に臨んでいるのであろう。

茂木幹事長の応援メッセージについては、もともとの茂木氏の法的センス、公選法に対する問題認識もあるだろうが、選挙情勢への危機感の一方でかなり慎重な対応を行っている背景に、広島での河井夫妻の多額買収事件で自民党が厳しい批判を受けたこと、自らの自民党幹事長就任が、前任者の甘利明氏が「政治とカネ」問題の説明責任を問われ衆院選小選挙区で落選したことが契機となっていることなどから、特定の選挙に関する発言においても慎重な姿勢をとっているのではないだろうか。

公明党石井幹事長の「違法な事前運動メッセージ」の背景と今後への影響

では、公明党幹事長の石井氏が、今回の名護市長選挙で、違法な事前運動となる応援メッセージを送ってまで渡具知氏を応援しようとすることの背景に、何があるのだろうか。

前回の2018年名護市長選で、現地での公明党の沖縄方面本部長として選挙活動の中心となっていたのが、コロナ感染拡大の下での銀座クラブ通いの不祥事で議員辞職した遠山清彦元衆院議員だった。その遠山氏は、昨年末、日本政策金融公庫をめぐる無登録の融資紹介問題で在宅起訴され公明党を除名されたばかりだ。

もともと公明党沖縄県本部は、党中央とは違って、辺野古基地建設には反対の立場だった。前回名護市長選では公明党は渡具知氏を支援し、県外から大量の学会員を動員し人海戦術をとって渡具知氏の勝利の立役者となったが、内心“苦渋の選択”を迫られた学会員も多かったと言われている。前回市長選での渡具知陣営の「辺野古争点外し」は、公明党支持者の反発を和らげるための苦肉の策だったと言われているが、埋立て海域での軟弱地盤問題など、辺野古基地建設強行への批判が一層強まる中で、今回の市長選も「辺野古争点外し」で臨むことへの反発が強まるのも当然だ(【名護市長選での辺野古移設問題への「民意」、横浜市IR誘致問題と共通する構図】)。

このようなことに加え、今回の市長選では、米軍基地由来のオミクロン株感染爆発により、県外からの学会員の動員は困難な状況となり、石井幹事長自らも現地に入れないことへの焦りが、露骨な「違法事前運動メッセージ」につながったのではなかろうか。

しかし、今回の渡具知氏応援メッセージにも表れている石井幹事長の、違法行為も厭わない「前のめり」の姿勢が、公明党にとってプラスになるとは思えない。

昨秋の衆院選神奈川13区で自民党甘利幹事長が小選挙区で落選した原因の一つとなったのが、「政治とカネ」の問題で説明責任を果たさない甘利氏に対する、創価学会婦人部の反発が公明党票の離反を招いたことだったと言われている。今回も、党本部の幹事長が、渡具知氏の応援メッセージで違法な事前運動の批判を受けたりすることが、支援する渡具知氏にとって有利に働くとは思えない。

「露骨な事前運動」というと、記憶に新しいのは、昨年夏の横浜市長選挙で山中竹春氏を擁立した立憲民主党が行った告示前の街頭活動だ。山中氏は、出馬会見を行った6月30日の翌日から、連日、横浜市内で、衆議院議員や立候補予定者らとともに、「8月22日 横浜市長選挙」と明示し、ノボリや横断幕を使った街頭活動を繰り返し、SNSなどで、街頭活動の写真がアップされ「露骨な事前運動」と批判されていた。山中氏は、当選後、選挙期間は告示から投票日までの14日間であるのにもかかわらず、「54日間の選挙運動を戦い抜いた」などと発言しており、そもそも「事前運動の禁止」を理解してなかったようにも思える。

横浜市長選は、当時の菅首相が全面支援した小此木氏が、コロナ感染急拡大の猛烈な逆風を受けたことから、野党統一候補の山中氏の圧勝に終わったが、当選後に山中氏のパワハラ、不当圧力、経歴詐称等の問題が噴出し、立憲民主党の「製造物責任」を問う声が高まる中で衆院選を迎え、横浜市内の小選挙区のほとんどで落選するという、衆院選での立憲民主党敗北を象徴する選挙結果となった。

名護市長選で公明党に問われていること

公明党が推薦している渡具知市長については、旧消防庁舎跡地売却に関して、親族関連企業への不透明な経過での市有地売却について、説明責任が問われる疑惑が表面化している(【注目の“2つの市長選” 藤井前美濃加茂市長、渡具知現名護市長が問われる「究極の信任」】)。

公明党公式HPのコラム「北斗七星」に、

公明党の党名は、公明正大、清潔な政治を標榜したもの。この名の下に腐敗政治と闘い、大衆のための政治実現に走り抜いてきた。この名に込められた精神が公明党と支持者との心を結ぶ原点だ。

と書かれているように、「公明正大」は公明党の基本姿勢のはずだ。

名護市長選挙において、違法な事前運動になることも厭わぬ姿勢や、説明責任を軽視する姿勢は、「公明正大」を標榜する公明党にはそぐわないように思える。公明党としての名護市長選挙への対応を、今一度、見直してみるべきではなかろうか。

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