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「事前運動」規制をめぐる問題と、公明党石井幹事長の「応援メッセージ」

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選挙運動を行えるのは、告示日から投票日の前日までである。告示前に選挙運動を行うことは、「事前運動」として公選法で禁止されており、違反すれば「1年以下の禁錮又は30万円以下の罰金」に処せられる(129条、239条1項1号)。選挙運動が選挙期間内に限定され、その期間外の選挙運動が禁止されるのは、候補者間で選挙運動における対等・公平な条件を確保するための重要なルールである。

しかし、公職選挙の立候補者の多くは、告示前に「立候補表明」を行い、それ以降、選挙における自らへの支持を高めるため様々な活動を行う。このような活動も、実質的には、選挙での当選をめざして行うものだが、それが、「政治活動」に過ぎないのか、「選挙運動」に当たるのか、その線引きは微妙だ。

選挙運動とは、判例上、

特定の公職の選挙につき、特定の立候補者又は立候補予定者のため投票を得又は得させる目的をもつて、直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為をすることをいう

とされている。

「直接又は間接に必要かつ有利な周旋、勧誘その他諸般の行為」には、選挙に関連するほとんどの行為が該当する。判例の見解を前提にすれば、「特定の公職の選挙」について「特定の候補者の当選」を目的として行う行為は、大半が「選挙運動」に該当し、告示前に行えば、事前運動の禁止規定に抵触することになる。例えば、特定の公職選への立候補の意志を明確に表明する記者会見も、「選挙運動」に当たることが否定できず、告示前に行えば形式上は「事前運動」に該当することになるが、実際に出馬会見が事前運動に問われた例は聞かない。

一般的には、事前運動の違反だけで、警察に摘発される例はほとんどなく、他陣営や有権者からの通報等によって選挙管理委員会や警察から警告を受けるのがせいぜいだ。

「選挙運動」としての性格の濃淡は、「特定の公職選挙における特定の候補の当選を得る目的」の明確さ、当選を得る目的の直接性の程度によるといえる。実際には、候補者や陣営側の状況や考え方によって、どのレベルまでの行為を告示前に行うのかが判断されることになる。かかる意味において、事前運動の規制をどこまで意識し、厳格な姿勢で臨むのかに、候補者自身やその支援者・支援組織の良識や品格が表われると言える。

名護市長選挙に関するオンライン応援メッセージ

1月16日告示、23日投開票の沖縄県名護市長選挙に向け、立候補を表明している現職市長の渡具知武豊氏と、対立候補の岸本洋平氏との争いも、告示が近づくにつれ、激しさを増している。

渡具知氏は、オミクロン株感染急拡大を受けて、1月12日午後6時半からの「とぐち武豊総決起大会」をオンラインに変更し、YouTubeで配信した。その冒頭で、公明党の石井啓一幹事長、自民党の茂木敏充幹事長が、渡具知氏応援メッセージを寄せている。

一方、対立候補の岸本氏の方も、同日、ツイッターで、玉城デニー沖縄県知事の応援メッセージをアップしている。

この3者の応援メッセージを比較すると、「事前運動」に対する姿勢が端的に表れていることがわかる。以下が、その応援メッセージだ。

【石井幹事長の渡具知氏応援メッセージ(以下「石井メッセージ」)】

名護市民の皆様、沖縄県民の皆様、こんばんは。公明党幹事長の石井啓一でございます。現在、沖縄県ではオミクロン株による感染拡大で蔓延防止と重点措置が適用されていますが、公明党といたしましても、感染収束に向けて全力で支援をして参ります。

さて、このたびの名護市長選挙は全国注目の大変重要な選挙となっております。名護市は渡具知市長のリーダーシップによりこの4年間で大きく変わりました。

(中略・・・渡具知市長の1期目の実績の評価)

これら渡具知武豊市長の実績の前には相手候補も批判をすることができず、「子供政策など私も継続します」としかないのであります。

その相手候補は、例えば財源について、「行政改革で無駄を省き、予算を捻出します」とか、「子供基金を創設します」など抽象的なことしか言えず、まったく説得力がありません。

これでは4年前まで基地反対のほかに政策が無かった革新市政に逆戻りです。市民生活はほったらかされ、活気のない名護に後戻りさせてはなりません。さらなる名護の発展と市民生活の向上のためには、実績抜群の渡具知武豊の手腕が不可欠です。

しかし、現実の選挙は大変厳しい状況にあります。相手陣営はオール沖縄が全県から支援体制を敷き、総力戦で戦いに臨んでいると聞いております。

4年前に渡具知武豊市長が大逆転で勝利を果たすことができたのは、最後の最後まで渡具知陣営が市内全域をくまなく回り、一票一票を丁寧に積み上げてきたからであります。

今回もコロナ感染防止対策を徹底をしながら、一票に執念を燃やし頑張って参りましょう。公明党も渡具知武豊勝利のために全力で取り組んで参ります。共々に最後の最後まで戦い切って、二期目の勝利を勝ち取りましょう。頑張りましょう。

【茂木幹事長の渡具知氏応援メッセージ(以下「茂木メッセージ」)】

オンライン総決起大会にご参加の皆さん、こんばんは。自民党幹事長の茂木敏充です。いよいよ4日後、1月16日から名護市長選挙が始まります。本来であれば、私もこの総決起大会の会場に駆け付ける予定でしたが、新型コロナの影響でオンライン開催となりましたので、私も画面越しにエールを送ります。

(中略・・・渡具知氏の1期目の実績の評価)

市議会議員を5期、市長を4年務め、誰よりも名護を熟知している渡具知武豊さんには、引き続き市長として新しい振興計画の策定と実行に協力してもらいたいと期待しています。

昨年10月の衆議院総選挙も大接戦でしたが、島尻あい子さんが名護市で1,500票リードし、沖縄3区での勝利に繋げることができました。

今回の名護市長選は、更に接戦、デッドヒートになると思います。しかし、皆さんの力があれば、最後はこの市長選に勝利し、名護市に再び賑わいを取り戻すことができると確信しています。

お集りの皆さんに、渡具知武豊さんへの一層のご支援とご協力をお願いし、私の激励のメッセージといたします。どうぞよろしくお願いします。

【玉城知事の岸本氏応援メッセージ(以下「玉城メッセージ」)】

ハイサイグスーヨー。沖縄県知事の玉城デニーです。みなさん、こんにちは。

名護市長選挙に立候補の用意を進めている岸本洋平さんは、市民の7割が反対する辺野古新基地建設についても市民の思いに寄り添い、反対の意思をはっきりと示しています。

今回の新型コロナウイルスの感染の再拡大については、米軍基地由来と言わざるを得ません。これまで沖縄県が指摘をし続けていた、日米地位協定の不備であることは明らかとなっています。県民がどれだけ努力をし、我慢してきても、このような形で社会が止まることは断じて許されることではありません。

米軍基地が沖縄県経済の発展の最大の阻害要因となっていることも、改めて示されたものと思います。これ以上の過重な基地負担は認めることはできません。

ぜひ10代20代の皆さんも参加した未来への豊かな街づくり、岸本建男元市長の遺志と稲嶺進前市長の名護への思いをしっかりと受け継ぐのは岸本洋平さんです。

ぜひ来る市長選挙には、岸本洋平さんが準備を進めている未来に向けた大きな未来都市構想に皆さんも参加してください。

平和で豊かな名護市づくりに、あなたの参加をお待ちしています。

茂木メッセージの評価

石井メッセージは「このたびの名護市長選挙は全国注目の大変重要な選挙となっております。」、茂木メッセージは、「いよいよ4日後、1月16日から名護市長選挙が始まります」と述べており、いずれも、1月16日告示、23日投票の名護市長選挙という特定の公職選挙に関するメッセージであることは明らかだが、その特定の選挙において、特定の立候補表明者の当選を直接の目的としているものかどうかには、大きな差がある。

茂木メッセージは、「誰よりも名護を熟知している渡具知武豊さんには、引き続き市長として新しい振興計画の策定と実行に協力してもらいたい」と述べて、現職市長である渡具知氏による市政の継続の必要性を訴えている。

そして、昨年秋の衆院選挙小選挙区での名護市の投票結果で、自民党候補が野党候補を1500票上回っていたことを理由に、「最後はこの市長選に勝利」することで、「名護市に再び賑わいを取り戻すことができると確信している」と述べて、「渡具知市政継続」となる選挙結果を「予想」している。最後に、「渡具知武豊さんへの一層のご支援とご協力をお願いし」と述べて、「一般的な協力」の呼びかけで終わっている。

茂木メッセージは、全体として、「今回の市長選での渡具知氏の応援」を呼びかけるものではあるが、基本的には「渡具知市政の継続」の重要性を訴え、今回の選挙後も渡具知市政が継続することを「確信」していると述べるだけで、選挙での投票や、投票に向けての活動に直接言及することは避けている。そういう意味で、「選挙運動」的性格はかなり希薄化されていると評価できる。

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