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巧みな金融庁包囲網で新生銀行TOBを成立させたSBI

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9月に突然SBIが新生銀行に仕掛けたTOBは、新生銀行の防衛策取り下げによりSBIの買収提案を受け入れることで決着をみました。

そしてこの約3か月間の攻防において、最終的に勝負のキャスティングボートを握っていたのは、監督官庁でかつ新生銀行の大株主でもある政府=金融庁でした。新生銀行TOBを巡るSBIと金融庁の綱引きを探ってみます。

新生銀行にTOB受け入れの引導を渡した金融庁

写真AC

新生銀行はSBIからのTOBに対して最終的に臨時株主総会で、大量買付者以外の株主に新株を配布することでSBIの保有率を下げるという防衛策ポイズンピル導入の賛否を株主に問う、という流れでSBIの支配下入りを回避する考えでした。

当初はSBI優勢と伝えられながらも、11月に入って米議決権行使助言会社グラスルイスとISSが相次いで新生銀行の防衛策賛成を推奨するという動きがあり、予断を許さない展開となりました。

結果的に賛否態度を明らかにしていなかった約2割の議決権を持つ大株主の政府=金融庁の態度如何でTOBの成否が決まるという展開になり、臨時株主総会前ギリギリのタイミングで政府は新生銀行に賛同しない意向を示唆。

新生銀行は株主総会で過半の賛成を得ることは難しいと判断するに至り、SBIのTOBを受け入れざるを得ない流れになったのでした。すなわち最終的にこの政府の姿勢が、新生銀行にTOB受け入れの引導を渡す形となったわけなのです。

金融庁と抜かりない「縁戚関係」を築いてきたSBI

ではなぜ、米議決権行使助言会社2社が賛成を推奨している中で、政府は新生銀行の防衛策に否定的な態度を示したのでしょうか。

表向きの理由は、態度示唆の際に実際の名義上の株主である預金保険機構の三井秀範理事長からあれこれ語られているところですが、政府、特に金融庁の本音はSBIに逃げられたくないということと、同時にSBIからはまんまと首根っこをつかまれていた、という事情があるのだと捉えています。

BLOGOS編集部

「逃げられたくない」と申し上げたのは、SBIは現在「地銀連合構想」をぶち上げ、経営状況が厳しい「限界地銀」の救済役を買って出てくれているわけであり、SBIにここで逃げられてしまっては他に「限界地銀」の経営安定化に向けた具体的な策のない金融庁は、途方に暮れるしかなくなってしまうという事情があるからです。

しかも今回のTOBでSBIは、新生銀行を「地銀連合構想」の中核銀行に仕立てるという考えを表明しており、TOBの成立は「限界地銀」救済にとって前進要因があると捉えてもいたはずなのです。

一方のSBIはといえば、「地銀連合構想」をぶち上げた段階から商売気たっぷりの姿勢でかつやり口も用意周到でした。

2019年に島根銀行への資本注入を皮切りに「限界地銀」救済の動きに出たSBIですが、同時期に問題が噴出し、金融庁が支援を望んでいたスルガ銀行救済には「株価の高い地銀は対象外」として見向きもせず、あくまで資本注入は稼ぐだけ稼いだ後の「売り抜き」を視野に入れているかの如き姿勢をあらわにしていました。

さらに特筆すべきは、金融庁や財務省のOBを積極的に引き入れて、監督官庁との折衝をスムーズに運ぶ下地を着々と作っていたことです。

女性記者に対するセクハラで実質更迭された福田淳一元財務次官をSBIHD社外取締役に迎え入れたことは、金融庁幹部の母体である財務省に貸しを作ることになりますし、直接の関係官庁である金融庁からは元総務企画局審議官の乙部辰良氏をSBIインシュアランスグループ会長兼社長に、同じく元総務企画局審議官長谷川靖氏をSBIの地方創生ビジネスを担う地方創生パートナーズ執行役員事務局長に迎え入れるなど、抜かりなく「縁戚関係」を築いてきたのです。

痛いところを突かれた金融庁は「反対」を示唆

そんな中で、今回とどめを刺したといえるのが、五味廣文元金融庁長官をTOB成立後の新生銀行会長としてお膳立てしたことでしょう。以前から先を見通していたSBIは、五味氏を2017年にSBIHD社外取締役として迎え入れ、着々と準備を進めていたようです。その用意周到さは特筆に値します。

さらに、SBIは自分たちが新生銀行の経営権を握ったなら、同銀行が約20年前の金融危機時に注入され大手銀行で唯一未だに完済できずにいる公的資金3500億円を完済させる、と息巻きました。公的資金は税金でありこれを国庫金に戻させるというのですから、金融庁にとっては逆らえない痛いところを突かれる形にもなったと同時に、金融庁に新生銀行へのTOBを認めさせる大義名分を与えることにもなったのです。

BLOGOS編集部

SBIが、ここまで入念に外堀を埋めにかかったのには理由があります。SBIが本TOBを仕掛ける前の今春、実質同一先である子会社SBIソーシャルレンディング(SBISL)が投資先に不正リスクを察知しながら投資家から集めていた巨額の資金を収益優先姿勢で投資していたという事件があり、金融庁から業務停止命令を受けていたのです。

第三者委員会の報告書からも明らかな融資モラルの欠如、投資家保護意識の低下が指摘されており、およそ大手金融機関を経営するようなガバナンス状況にないといえる状況が明らかになっていました。
金融庁、SBI子会社に業務停止命令 1カ月、虚偽表示で勧誘:時事ドットコム (jiji.com)

しかしSBISLは、不正先への投資金約380億円全額を投資家へ返還し密かに会社を廃業することで、問題は大事にされることなく蓋をされてしまったのです。

それどころか、新生銀行に対するTOBを前にして、銀行法で定められた銀行に対して20%以上の株の買い付けをする際の事前の許可についても、SBIはいとも簡単に金融庁の了解を取り付けているのです。

常識的には、融資モラルの欠如、投資家保護意識の低下で業務停止命令を受けた企業がその直後に銀行経営に乗り出そうとすることを、監督官庁が認めるなどあり得ないと思うのです。「縁戚関係」による情実ではないのか、と言われても仕方のない対応であったと思います。

結局、こういったSBI主導の入念に練り込まれた流れが、政府(預金保険機構)=金融庁の新生銀行のTOB防御策に対する最終判断にまで持ち込まれることになります。

防衛策賛否の最終判断が政府=金融庁に委ねられた段階で今度は、SBI北尾吉孝社長が、防衛策可決なら、政府は公的資金が返ってこなくていいという判断になると、脅しともとれる認識を示し金融庁を追い込みました。

金融庁にはこの時点で「棄権」という選択肢もあったはずなのですが、結局脅しに屈したのかまたもや情実判断であったのか、メディアを通じて「反対」を示唆したことで、SBIの野望は現実のものとなったわけなのです。

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