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「異論も含め、まとめ上げていくのが仕事」自民党高市早苗政調会長

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■ カーボンニュートラル政策について

安倍2023年度46%CO2減(対2913年度)という目標は非常に厳しい。現実対応として原発を活用しなければなかなか達成が難しいのではないか。党として、政府にどう伝えるのか。

高市:まず去年のCOP26アメリカ、フランス、イギリスなどが新たな原子力支援策とか新しい炉の研究開発支援を表明したのは非常に大きい。

デジタル化で電力消費は爆発的に増えていく再生可能エネルギーだけでは、低圧の家庭用であればともかく、高圧の産業用は賄えない。だからこそ原子力の活用は必要ということを私もずっと訴えてきた。

政府は原子力の活用を否定していなくて、「エネルギー基本計画」でも多くの原子力について必要な規模を継続的に活用するという表現が入っている。ただリプレイスや新増設の計画は今の段階ではないということのようだ。

だからまず第1歩は、安全がきちんと確認されたところの原子力発電所を再稼働させて、それで繋ぐ。

それからやはり「SMR(小型モジュール炉)」というのは非常に現実的な選択だ。日本企業も参加してアメリカでも研究開発が進められているので、2029年商用化、実用化目標と聞いていたが、もう少し早くなるだろう。2030年代は「核融合」の時代だと考えられるので、私は国家プロジェクトとして、SMRや核融合に力を入れていくべきだと思う。

しかし、SMRはどうしても原子力発電所の小型版という感じだから、避難計画などいろいろな課題がある。私はSMRは地下立地が現実的だと思う。発電設備そのものは高いものではないし、小型だからデータセンターや工業団地があるような地域の地下に立地したら避難計画とかそういった課題がクリアできると思う。

核融合は、特にウランとプラトニウムを使わないという意味で安心感を皆さんに持っていただける技術なので、国が相当力を入れていかねばならないと思う。政府もSMRについてかなり前向きな発信が最近なされたので、私は大変期待をしている。世界的な流れはやはり原子力の活用だろう。これは気候温暖化対策として非常に有効だ。

■ 自動車産業政策について

安倍:トヨタは、EV一本やりではなく、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、燃料電池車、全方位でやるんだということだが、他国の企業ではEV一本に絞っており、動きもとても早い。こういうような流れの中で日本の自動車産業は競争力を保っていけるのか。この点はどう考えているか。

高市:基本的に政府与党としては、まずEVをしっかり後押しするという方向だ。EVのコアになるのは蓄電池なので、令和3年度の補正予算で大規模製造拠点を立地するということで1000億円を盛り込み、それから蓄電池の性能向上のために約1500億円、研究開発支援を行っている。基本的に政府としてはまずはEVに投資するということだ。

あとはEV車はガソリン車に比べてすごく高いので、購入支援ということで、今までの2倍、最大80万円の援助も盛り込まれた。それから高速道路とか集合住宅に充電器を設置しなければならず、これも政府として頑張っていくことになったので、まずは本気でEVを普及させるという方針が固まっている。

 ただ、EVがこのままずっと増えていくと、問題になるのはリチウムの需要がだいたい42倍、コバルトの需要が21倍必要だということなので、そうすると資源獲得競争というのが激化していく。当面の戦略としては、EVに加えて合成燃料や水素の活用という選択肢をしっかり残していかなければならない

これも予算の中で、合成燃料を2040年までの商用化を目指して技術開発をする、水素は2030年までに供給コストを今の6分の1にするということで2兆円の基金が設けられて、これを活用していくこと、複数の選択肢を持ってやっていくということだ。

合成燃料や水素技術は、うまくいけばアジアに展開出来るので、私が言っていた成長戦略にもなっていくかなと思う。


写真)ⒸJapan In-depth編集部

■ 中国の人権問題について

安倍:人権問題を巡る中国との距離感について、政府がはっきり表明していないという印象を受けるが、党としてどういうふうに政府に言っていくか。

高市自民党の衆議選の政権公約」に、『ウイグル、チベット、モンゴル民族、香港などこの人権等を巡る諸問題について、主張すべきは主張し責任ある行動を強く求める』と明記してある。だからこの公約は守らなくてはならない。(人権侵害行為を非難する国会決議案の)臨時国会への提出を断念しなければいけなかったのは、悔しいやら残念やらで本当に辛かった。が、気持ちを切り替えて、今年の通常国会に提出することに向けて頑張っていく。

それとやはり国権の最高機関である国会が最終決議するということは非常に意義が大きいし、インパクトがある。これは国会決議で臨まなければいけない。ただ国会決議というのは残念ながら政調マターではなく、国会対策委員会マターなので、国会対策委員長の上司は幹事長であり、幹事長の判断、了解がなかったら決してできない

今回の臨時国会では、「内容はいいんだよ、タイミングの問題なんだよ」と茂木幹事長がおっしゃっていた。恐らくあの頃はまだ政府は、北京五輪の外交的ボイコットを表明していなかったので、そうおっしゃっていたのかなと思うが、今は「政府高官を送らない」ということになったので、タイミングの問題はなくなったと考えている。通常国会では出せるように幹事長に改めてお願いしてみるつもりだ。

■ 安全保障について

安倍敵基地攻撃能力やミサイル防衛について、党としてはどのような姿勢なのか。

高市:令和4年度の予算案には「レールガン」の研究開発予算が盛り込まれており、これは歓迎している。他にも電磁波を使った無力化に向けた対策も盛り込まれておりこれも非常に良いことだと思う。

自民党の政権公約には、『相手領域内で弾道ミサイル等を阻止する能力を保持する』という書き方をした。敵基地攻撃と書くと、こちらから先制攻撃でミサイルを打ち込むようなイメージを持たれるが、これはあくまでも相手領域内でミサイルなどを阻止する能力だ。イコール無力化で、要は相手の指揮統制機能を早く無力化した方が勝ちだと私は思っている。

残念ながら今の日本の情報収集能力では一発目は確実に着弾する。対空防衛で防ぐことはできない。特に極超音速兵器になると、今のところ100%防衛はできない。

なので、既に一発目を撃たれた後の話、日米共同で情報収集ができた場合に、その兆候があった時にいかに早く相手を無力化するかだが、基本的に「衛星妨害」はやるべきだと思う。あとはやはり「ジャミング」、電磁波技術を使って相手の通信や電波の利用を無力化する。この辺りに力を入れていきたいと思っている。

そのためには日本の宇宙開発の民生技術をいかに活用できるか、スピンオン(注:Spin-on 民生技術の軍事転用)できるかというところにかかってくる。ロボットアームでの細かい試料の採取など、日本の民間宇宙技術というのは非常に優れたものがあるので、敵性衛星を無力化することを考えると、そういった民生技術を何とか活用できるようにしていかなければならない。

ただ、今、なかなか民間技術のスピンオンについては慎重な考え方が多いので、ここをどう説得していくかは考えていかなくてはならない。

【取材を終えて】

インタビューは昨年総裁選前の8月以来だったが、高市氏の主張は全くブレていなかった。政調会長就任後、新聞記事には、岸田氏vs高市氏などと党と官邸の対立を煽るようなものも散見されるが、高市氏は意気軒昂で、仕事への意欲は満々といった感じを受けた。

基本的に党と内閣の緊張関係はあってしかるべきだし、党として組織決定したなら内閣に物申していくのは当然のこと。安全保障、成長戦略、人権政策、党としての意見をどんどんまとめ上げ、情報発信していくことが高市氏に求められる。それがその先に繋がっていくだろう。参院選はその一里塚に過ぎない。

(インタビューは2022年1月7日に実施)

(了)

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