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中国の「新型コロナ」死亡者数隠蔽疑惑

防護服を着て新型コロナウイルスの流行と戦う医療スタッフ(2020年1月21日、中国湖北省武漢にて) 出典:Photo by TPG/Getty Images

澁谷司(アジア太平洋交流学会会長)

【まとめ】

・習近平政権は、「新型コロナ」に対し、「ゼロコロナ(コロナ封じ込め)」政策を実施。

・『フォーブス(Forbes)』に「北京は意図的に中国のコロナ死亡率を過小報告している」という論考が発表された。

・英誌『エコノミスト』の研究モデルによれば、中国の公式コロナ死亡率は実際の170分の1で、死亡者の本当の数は170万人程度ではないかと推測している。

今年(2022年)2月、中国は北京五輪を目前に控えている。そこで、習近平政権は、「新型コロナ」(以下、コロナ)に対し、「ゼロコロナ(コロナ封じ込め)」政策を実施した。

しかし、昨年12月23日、陝西省西安市(人口約1300万人)でコロナが広まり、「ロックダウン」が実施された。また、今年1月2日、河南省禹州市(人口約110万人)でも「ロックダウン」されている。なお、中国の「ロックダウン」は、当局の規制が厳しいため、食糧不足に陥る場合がある(例:雲南省瑞麗市)。また、その他の地域(浙江省、広東省等)でもコロナが蔓延している。

さて、年明け『フォーブス(Forbes』には、ジョージ・カルフーン(George Calhoun)の「北京は意図的に中国のコロナ死亡率を過小報告している」(2022年1月2日付)という刮目すべき論考が発表された。

実は、約1年近く前、『(RFA)ラジオ・フリー・アジア』に「湖北省高齢者手当申請が15万も激減武漢肺炎の新たな証拠隠蔽疑惑」(2021年2月15日付)という記事が掲載された。まず、それを紹介しよう。

「湖北省民政庁の資料によると、2020年第1四半期、全省で80歳以上(神農加山区は75歳以上)15万人の名前が、突然、“高齢者手当申請名簿”から消えた。だが、政府はその説明を拒否しただけでなく、メディアや民間人による葬儀統計データの収集も厳禁した」。

今なお、北京政府は国内でのコロナ死を4600人余りと公表している。けれども、一昨年の1月から3月の間、湖北省(省都は武漢市)だけで、約15万人(自然死や事故死・病気死を含む)も死亡した公算が大きい。

▲写真 新型コロナウイルス感染者用1,000床の野戦病院建設現場(2020年1月24日、湖北省武漢) 出典:Photo by Getty Images

次に、カルフーンの長い論文だが、重要な部分を抄訳してみよう。要旨は次の通りである。

第1に、「米国では82万5000人以上がコロナで死亡した。中国の公式のコロナ死亡者数は4636人とされている。だが、両国の死亡率の差は衝撃的である。中国政府は人口10万人当たりコロナ死亡率が0.321人だと発表した。米国のコロナ死亡率は人口10万人当たり248人なので、中国と比べ800倍近くも多い」。

第2に、「英誌『エコノミスト』の研究モデルによれば、中国の公式コロナ死亡率は実際の170分の1である。・・・『エコノミスト』は、中国におけるコロナ死亡者の本当の数は170万人程度ではないかと推測している。中国の累積死亡者数は少なくとも米国の2倍である可能性が高い」。

第3に、「2021年2月、『ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(British Medical Journal)』に、武漢市の死亡統計全体を分析した論文が掲載された。・・・その中には、北京の“過少申告”を示唆する部分がある。武漢市のコロナ感染致死率が、2019年の同時期だけ5.6%と高かった。これは、米国におけるコロナ感染致死率、約1.5%の約4倍近くとなる」。

だが、「コロナ発症から2年、湖北省以外、13億人の中国人のうち、コロナ死亡者はわずか2〜300人である。人口10万人当たりの死亡率は0.002と、米国の死亡率の12万4000の1だった」。

第4に、「日本(一人当たりのGDPが4万1000米ドル)と韓国(同3万2000米ドル)は、中国にとって・・・重要な貿易相手国である。他方、シンガポール(同6万米ドル)は・・・厳しく管理された都市国家である。・・・3ヶ国はいずれも欧州や北米に比べ、コロナ死亡率が10分の1から20分の1低く、コロナ抑制政策に成功している。しかし、中国は、この3ヶ国より更に30分の1から50分の1も低いコロナ死亡率である」。

「日本とシンガポールは島国であり、陸の国境がない。韓国は軍事的に閉鎖された国境が1つあるだけだ。これら3ヶ国は、中国(大陸国家であり、陸上国境を共有する多くの隣国を持つ)と異なり、海外からの交通を容易に規制できる。現在、中国には北朝鮮からの難民が何十万人もいる。ビルマからの難民は数万人にのぼる。あまた、ベトナムからの密入国や人身売買は・・・常態化している」。

「中国は近隣14ヶ国と陸で国境を接する。その総距離は1万3000マイル(2万800km)以上で世界1国境が長い。それらの国々は皆、中国の何百倍もの感染リスクを抱え、死の温床であることは明白である。中国はどのように流入するコロナを抑えているのだろうか」。

実際、「韓国のコロナ死亡率は人口10万人当たり10.8人で世界最低水準である。それにもかかわらず、中国のそれは韓国の34分の1だという」。

第5に、「ニュージーランドは海に囲まれているという自然の利点、及び、政府の賢明な政策の結果、10万人当たりの死亡率が1.03人に過ぎず、先進国中、最も低い死亡率となった」。ところが、「中国は、コロナ死亡率をニュージーランドと比べ、3分の1だという」。

以上のように、習政権は、コロナ死亡者数の隠蔽を謀っていると考えられよう。

では、なぜ北京は死亡者数を隠すのか。これは、社会主義体制の“宿痾”なのだろうか。それとも、「孫子の兵法」(敵側に“偽情報”を流す)を重んじる中国人故なのだろうか。

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