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「この行為は私の命が尽きるまで続く」検察庁の看板にペンキをかけて逮捕された男の主張

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裁判傍聴芸人の阿曽山大噴火です。今回傍聴したのは11月25日に東京地裁で行われた器物損壊の裁判。東京・霞ヶ関の中央合同庁舎6号館の前に設置されている「検察庁」と書かれた石の看板に黄色いペンキを掛けた男が逮捕されたと報じられた事件です。

2021年は霞ヶ関にある省庁の看板が汚される事件が多発して、看板汚損の当たり年でした。東京地裁・総務省・検察庁・法務省・弁護士会館。もしかしたら他もあるかも知れないけど、ニュースに取り上げられただけでもこれだけあるのです。

本件は、そのうちの2つをやったとして起訴された男性の裁判。ニュースでは実名は報じられなかったのでBLOGOSとしては珍しく匿名で書かせて頂きます。

まずは、初公判。人定質問のために被告人が証言台に立つと

被告人「あの〜裁判官のお名前は、コモリって読むんですかね? フルモリですか?」

名前や本籍を訊かれる立場の被告人がいきなりの逆質問です。すると

裁判官「私は古い玉と書いて、コダマです」

と裁判官が自己紹介する珍しいスタート。

被告人は裁判官の名前を読み間違えて覚えていたようです。この時は「裁判官の名前なんか気になるかね」と思っていたのですが…。

起訴されたのは2つ。1つ目は、今年9月7日の午後2時52分に千代田区霞ヶ関にある検察庁の名板に黄色い塗料を掛けて汚損した件。

2件目は、今年8月27日の午後2時50分に千代田区霞ヶ関にある弁護士会館の名板に黄色い塗料を吹き付けて汚損した件。

罪状認否で被告人は罪を認めていました。

検察官の冒頭陳述によると、被告人は現在69才。大学卒業して市役所に勤務して、その後会社員となり今は無職で年金生活をしているそう。犯罪歴としては前科4犯です。

2014年に地元の宮城県で社会福祉課の人に暴力を振るったとして公務執行妨害と傷害の罪で、罰金50万円の判決。しかし被告人はこの判決に納得がいかず司法全体に不信感を抱くようになったそうです。

2016年4月には最高裁判所の看板に赤いスプレーを吹き付けて、有罪判決。
2017年5月には検察庁の看板に赤い塗料を掛けて、有罪判決。
2019年4月には内閣府の看板に赤いスプレーを吹き付けて、実刑判決を受けているとのこと。

犯行当日の9月7日。被告人は宮城県から東京にやってきて、検察庁の看板にペンキを掛けて汚すやいなや警備員に犯行を名乗り出て逮捕されたというのが事件の流れです。

「この行為は私の命が尽きるまで続く」

Unsplash

取り調べに対して被告人は「今まで色々な施設に塗料を掛けてきたことは悪いと思っていません。2014年に自宅に入ってきた市役所職員のお腹を押しただけでなぜ公務執行妨害と傷害になるのか。法治国家なのにおかしな話で、私がペンキやラッカーで看板を汚せばアピールになる。いろんな新聞社や週刊新潮にネタを送ったが、全く載らなかった。この行為は私の命が尽きるまで続くと思います」と生涯をかけて看板を汚し続ける宣言をしているようです。なかなかの類を見ない供述調書ですけどね。

そして被告人質問。まずは弁護人から。

弁護人「今、体調はどうですか?」
被告人「腎臓が悪くてね……腎機能が最低レベル。体調は良くありません」
弁護人「犯行前は通院していたと。逮捕されてからは?」
被告人「今は…総合病院に通院させてもらっています」
弁護人「お医者さんは何て言っていました?」
被告人「末期状態だ…と」

息も途切れ途切れで苦しそうな感じ。なんとか喋っている姿を見ていると、この先ペンキで看板を汚す体力はもう無いのではと思うほど。

弁護人「取り調べで喋った事はちゃんと調書に書いてもらいましたか?」
被告人「…はい」
弁護人「それなのに署名してないのはなぜですか?」
被告人「署名した事でね、私の最悪のシナリオが始まった訳です。平成26年に住居侵入をしてきたのになぜに公務執行妨害と傷害になるのか! その時の弁護士が…調書にサインしたのが良くなかったとかなんとかって言っていてね」
弁護人「2014年の裁判結果に納得いってなくて、それで司法関係者に不審を抱いていると?」
被告人「そうです!」

余程の怒りや不満を抱えているのでしょう。2014年の裁判が冤罪なのか被告人の主張が荒唐無稽なのかは分かりませんが、当時の裁判の話になると元気に喋り出します。

弁護人「ペンキを掛けた後、すぐ警備員に名乗り出たのはなぜですか?」
被告人「掛け逃げとか逃げ得は…好きではありません。私は堂々と…逃げも隠れもしない。だから警備員には『申し訳ないですけど警察に連絡して下さい』と。できるだけ…穏便に済ませたかったのです」

掛け逃げという言葉があるのを初めて知りましたが、迷惑を掛けているという認識はあるようです。

弁護人「取り調べでは、やろうか止めようか葛藤があったと答えていますね?」
被告人「やはり…世間の注目、騒ぎになって秩序を乱すことになります。果たしてそれだけの価値があるのか? …それだけのアピールをする重要な事なのか? …と考えた訳です。やはり、…日本を正す為にはやるしかないのだ、と」
弁護人「自分がやった事が、やっていい事か悪い事なのかは分かっていますよね?」
被告人「一般的には…無い方が好ましいですね」
弁護人「他の方法で不満を解消しようとは考えなかったのですか?」
被告人「新聞社に送ったんですけど取り上げてくれませんでした。…それで私はブログを始めまして。『日本は本当に法治国家か?』というタイトルなんですけど、それはフルタマ裁判官にも読んで頂ければですね…」

何か司法に物申したいみたいです。残念ながら名前を確認したのにフルタマ裁判官とうっかりミス。

弁護人「確定した判決に不服があるなら、再審というのがあるんですけどやろうとは思わなかったんですか?」
被告人「考えましたよ。でも、裁判官、検察官、弁護人の馴れ合い…談合なんですね。ハッキリ言って、ならず者! なんで私がならず者の相手をしなきゃいけないんですか!!」
弁護人「でもラッカーやペンキを掛けて判決が変わりますか?」
被告人「ん〜…分かりませんよー」
弁護人「今後もペンキ掛けるんですか?」
被告人「これは法治国家として変わらなければいけないという…あなたたちの責務なんです!」

と、検察官と弁護人を指差す被告人。

弁護人「今後はどうやって不満を解消するんですか?」
被告人「ま、一番簡単なのはペンキですな〜。これは…永久に続けるという意味でもあります」
弁護人「他にないんですか?」
被告人「立派な裁判官、検察官、弁護人に自主的に修正して頂きたい」
弁護人「ご自身は何をするんですか?」
被告人「私? 私はペンキ掛けるだけですよ」
弁護人「他の方法ないですか?」
被告人「ん〜…ま、再審というやり方かな。なくも無いけど……必要ならやりましょうという気持ちです」

と弁護人が無理矢理、再審請求をすると言わせて質問終了。

被告人としては法曹関係者に変わって欲しいという想いがあったからわざわざ裁判官の名前を確認していたんですね。「裁判官」という漠然とした存在相手じゃなく「古玉裁判官」という個人に語りかけようとしている感じです。

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