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法科大学院信奉者たちの言い分

先日、札幌弁護士会では、法曹養成制度に関する決議案(法科大学院から受験資格要件を撤廃するというもの)を巡って会員懇談会が開催されました。
 法科大学院信奉者たちの身勝手な主張に対して憤りを感じていましたが、私は、今回は一切、発言はしませんでした。
 昨日、司法改革推進本部ニュースが配布され、そこでは会場で出た意見の要旨が掲載されていましたので、法科大学院信奉者たちの意見についてコメントしたいと思います。

「法曹の質」を確保するために作れらたのが法科大学院。8年が経過して、質の高い法曹が育ってきている。資格要件から外すということは、法科大学院廃止の廃止につながり、北大、北海学園大学で行ってきた我々の努力を否定することになる。

 これまでの努力を否定することになる?
 私も微力ながら関わってきましたが、そこでの努力とは法科大学院制度を維持するためのものだったのでしょうか。
 むしろ、会場でも発言がありましたが、支援とは、そこで法曹を目指している学生に対するものではないでしょうか。

 札幌では法科大学院制度に対する賛否はともかく学生のために支援してきたわけで、今さらこのような発言はどうかと思います。
 制度として結果が出なかったのであれば早期に撤退する決断をすることも大切なことです。
 この「努力を否定することになる」って、あの侵略戦争を批判すると、特攻で死んでいった人を冒涜することになるという主張と似通って聞こえるのは気のせいでしょうか。

「「俺は、君のためにこそ死ににいく」 戦争賛美でない!?」

 法曹に無事になれた人も多額のお金と時間を使い、あるいは法曹資格を取れなかった人などなおさら制度の犠牲者とも言えるでしょう。制度を批判することは、そのような人たちの声の代弁でもあります。

 努力を否定」とは自分の視点でしか見てないということでもあります
 なお、受験資格要件撤廃によって法科大学院そのものが廃止になるかどうかは、我々の関知するところではありません。
 基本的には、文科省が推し進めた職業専門大学院の一環として法科大学院制度がありますから、残すかどうかは極めて政策的な問題です。

 「実際に入学希望者が減って潰れる!」という主張であれば本末転倒です。法科大学院制度を守るために法曹養成制度があるわけではないからです。

受験予備校の隆盛、受験期間が長くなって合格者の年齢が高くなってきたことなど、旧制度の弊害を是正しようとしたのが法科大学院制度。法曹養成制度をどうするのかという観点からこの問題を考えるべき。資格要件から外すと旧制度に戻ってしまうが、それでいいのか。」

 合格者の年齢が高くなってきた?
 ウソを言ってはいけませんよ。
 第3回法曹養成制度検討会議 資料1の中の資料9(17ページ)
 元はこちら

 司法試験合格者の平均年齢は、確かに500人時代は高くなっていましたが、その後、100人、200人と増員する中で平均年齢は下がっていました。これは合格滞留組が一掃されたことが理由です。
 27歳代にまで下がっていただけでなく、最も重要な点は、26歳未満の層が極めて厚くなっていたということです。それでも合格者若返りのために丙案(3回までの受験者を優遇)が導入されたのですが、日弁連は、その必要性なしとデータを示して反論していたではないですか。

 着実に若い層が合格していたのです。受験回数も1回、2回で合格していた人も珍しくはなくなっていました。
 法科大学院制度ができることによって、かえって拘束期間が長くなり、平均年齢も上がってしまったのです。
 このようなウソを未だに吹聴しているのは、無知だからでしょうか。

法曹養成の中核としての法科大学院制度の是非は、弁護士会という狭い枠のなかでの議論にとどめるべきではない。市民、マスコミを含めて外に開かれた議論をするべき。」

 「外に開かれた議論」をするということと、弁護士会がどのような意見を採択するかは全く次元の異なる問題でしょ。
 「外に開かれた議論」という命題を立てて、これに反対できないだろ、という論法なのですが、一般論としての「外に開かれた議論」という問題と弁護士会の意思決定の課程との関係では、全く関連性がありません。

 弁護士会の外にいる人たちがどのようなことを考えているのかという意味でのリサーチであれば、それはそれで結構なことですが、弁護士会が議決してはダメだという結論には結びつきません。
 この程度の違いが何故、わからないのか! ということではなく、発言者は、むしろ、わかっていながら発言しているものです。
 要は、外と話せ、決議はするなという趣旨のものですから、明らかなすり替えのための発言なのです。

個人的には法科大学院は廃止すべきと考えている。しかし会内でいろんな意見があるなかで、総会決議をあげるのは反対である。さらに議論を行うべき。」

 これってすごいです。要は、決議案に反対ということなのですが、いろんな意見があったとしても、一定の結論を出すのが何故、ダメなのかという点がまるで意味不明です。
 会内が二分しているとか、議論が足りないとか、形式論だけで持って行こうとするもので、正面から反対できないから、このような形式的なところで何とか潰そうとするもので、やはり姑息というべきでしょう。

 この問題は寄って立つ思想が異なるのですから、意見として一本化することはありませんし、二分されるのは当然の前提です

 日々、情勢は変化しているし、法科大学院制度についていえば日々、状況は悪化しているということ、さらには、現在、法曹養成検討会議で一定の結論が出されようとしているときに、何故、弁護士会が決議を上げてはいけないのか、ならば一体、いつ決議を上げるのかが問われます。
 そのような発言をするならば、自分がこれまでどれだけ対話に向けて努力をしてきた、でも意見集約には問題がある、だから今の時点ではないというのであれば、まだ理解できるのですが、それもしないでいて、二分しているというのは無責任極まりないといえます。

資格要件を外せば法科大学院には学生が来なくなる。自分が法科大学院で受けた教育は今でも役に立っている。法科大学院が果たしてきた役割を否定すべきでない。」

 これじゃ法科大学院制度を守るための受験資格付与ですね。
 教育が役に立っている? この程度の抽象的な話で制度を論じてはいけません。
 あるいは、司法修習の中で実施されてもダメで、法科大学院でなければダメなのかという点も答えるべきでしょう。

 仮に百歩譲って良い面があるとしても弊害について、どうすべきなのかという点を言わなければ、単なる感想レベルの意見に過ぎず、何の価値もありません。

法曹人口と法曹養成制度は関連があることは間違いない。しかし、法曹人口を減らした場合の法曹養成制度はどうあるべきかという哲学・制度設計が提示されていない。旧制度のように、受験予備校、最高裁の管理のもとにある研修所教育を復活させるのか。法曹養成に時間とお金がかかるのは、昔も今も変わらない。現在、法曹養成検討会義では、法律を変えて統廃合を進めようという議論をしている。まだ改善の余地はある。」

 哲学が示されていない?
 法科大学院制度は明らかな失敗だったんだから、少なくとも旧制度の方がましとも言えるんです。
 旧制度の問題は、それ自体、改革のための運動をしていくべきことであって、法科大学院制度が不可欠の前提ではありません。

 しかも、法科大学院制度が「理想」を実現できていて、それを壊され「哲学」のない司法修習になるんだと言わんばかりのこのご意見は、とんでもないすり替えの議論だということです。
 法科大学院制度は「理想」すらも実現できていないんですよ。実現できていないものと比較する論法は、すり替えの議論の常套手段です。
 そんな素晴らしいのであれば、ここまで問題視されることはないということを考えるべきでしょう。

資格要件を外せば法曹志望者は増えるのか疑問である。」

 もちろん、資格取得後の弁護士の経済的状況の悪化が改善されなければ志望者が増えることはないでしょうね。
 だから外すことに反対?
 しかし、外さなかったら、もっと減るでしょう。
 カネも時間もかかる法科大学院があるというだけで敬遠されているという現実も考えた方がよいです。

 それともオレは、こんだけカネも時間も使ったんだから、今さら法科大学院に行かなくていいなんて許さん! ということなのでしょうか。

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