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経済力競争軸の“米中”新時代に突入「2022年を占う!」国際政治

バーチャル会議を行うバイデン米大統領と習近平中国国家主席(2021年11月15日) 出典:Photo by Alex Wong/Getty Images

嶌信彦(ジャーナリスト)

【まとめ】

・習近平国家主席、昨年の共産党結党100周年の演説以来、“強国路線”を強調してきた。

・政敵を追放し、軍事力を増強、自らの権力を強化して習氏は毛沢東主席以来の比類なき“一強体制”を築いた。

・2020年からは明らかに経済力競争を軸とした“米中”の新時代に入った。

2022年の世界の動きを見る上で、最も気になる国は中国だろう。習近平総書記は、昨年7月の中国共産党結党100周年の演説以来、再三にわたり高圧的態度で中国を誇示し、中国の“強国路線”を強調してきた。

「我々をいじめ服従させ、奴隷にしようとする外国勢力を中国人民は決して許さない。妄想した者は14億人の中国人民が血と肉で築いてきた鋼の長城にぶつかり血を流すことになる」「教師づらした偉そうな説教は受け入れぬ」「中華人民共和国の建国、改革開放を経て世界第2位の経済大国に発展してきたのは共産党が存在したからだ。共産党がなければ新中国もなく中華民族の偉大な復興もない」「(米国から専制主義と指摘されることに対し)中国共産党の指導は、中国の特色ある社会主義が最大の優位点だ。共産党がなければ新中国もなく、中華民族の偉大な復興もなかっただろう。」と述べている。

また歴代指導部が目指していた「小康社会(ややゆとりのある社会)」の全面的実現を宣言し、その次の目標を建国から100年となる2049年ごろまでに「社会主義現代化強国」を完成させると定めている。このためこれまで2期10年とされていた総書記の任期には触れず、2期以降も習近平氏が、“国家主席”として指導にあたることを示唆したものと受け止められている。台湾統一問題についても、揺るぎない歴史的任務だとし、2035年を目標に経済力や科学技術、国防などについて各種目標を掲げ、習氏が2035年まで権力を握り続けることを明らかにしている。

さらに新華社通信は7月8日に歴代指導者のうち毛沢東と鄧小平、習近平の3氏にのみふれる解説を公表し、習近平氏が今後の党の“核心”的存在であると位置づけ、江沢民や胡錦涛・前総書記、鄧小平氏らは高度成長を導いた過渡期の指導者たちとひとくくりにして位置づけた。中国革命史上で“第三の歴史決議”を採択した習近平氏が現在の党の核心的存在であり“新時代”を切り開いた国家主席である、と内外に明示しているのである。

習近平氏は、1953年6月に北京で生まれ現在68歳。様々な資料などによると父の習仲勲が八大元老の一人であったため文化革命中は反動学生として紅衛兵に批判され、監獄にも入れられたことがある。1969年から7年間にわたり陝西省延安に下放(追放)されるがその間に共産党に入党、模範的な学生として推薦入学で名門清華大学化学工学部に入学。79年に優秀な成績で卒業すると政府入りし、82年から河北省、福建省、浙江省、上海市などで2007年までに様々の役職に就いている。

アメリカでホームステイした経験もあり、浙江省の党書記時代の2006年には米国のポールソン財務長官(当時)と会談を行なっている。2007年に上海市の党書記となり、その後、党の最高指導部である政治局常務委員に出世し、胡錦涛政権下で国家副主席や、軍事委員会の主席にも選ばれて国家主席への道へ到達した。

国家主席になると、反腐敗・汚職追放運動に力を注ぎ、政敵だった周永康、薄熙来、孫政才、令計画らの規律・法律違反を調査・処理して次々に逮捕し監獄に入れた。また党幹部を養成する中央学校教授の蔡霞氏や起業家の任志強氏も習氏を批判したため追放された。さらに軍事力の増強に力を入れ、自らの権力を強化した。

こうして習近平氏は毛沢東主席以来の比類なき“一強体制”を築いたのである。習氏は若い頃から頭の良い穏やかな性格の人物とされていたが、党内の権力闘争でみせた容赦ない政敵つぶしをみると、内には激しい権力闘争に動じない胆力を持った人物とみる方が正しいかもしれない。習近平夫人は有名な歌手だった美人で、子供は長女が一人おりハーバード大学に留学したことがあるという。

習近平氏の思想は“強権”“強国”路線で一貫しており、汚職追放のキャンペーンで約26万人の政敵、高級官僚、幹部らを追放した手法をみると、決して穏やかに見える表面とは異なる激しい闘争心を持った人物といえよう。

アメリカのバイデン新大統領が、トランプ前大統領のディール(取引)を主眼とした外交方針を特徴としたのに対し、バイデン大統領は「アメリカは帰ってきた」と就任第一声で叫び、欧米の伝統的な自由、人権、民主主義的価値観を重視する外交方針を掲げ「戦争はしない」と明言した。この発言を弱さと受け止め、79歳という年齢を考えると、バイデン大統領に強烈なリーダーシップがあると捉える人は決して多くない。

これに対し、“小康社会”の実現の後、「共同富裕(共に豊かになる)」のスローガンを掲げ、軍事力の強化を図り「強軍」と「強国」を旗印に、日本を抜いて世界第二位の経済大国を実現させた習近平総書記の迫力には並々ならないものを感じさせる。伝統の集団指導体制を無視し、習近平「一極体制」を築いて「習思想は21世紀の新しいマルクス主義である。中国には中国の民主主義があり、社会主義現代化強国の全面的な実現という新たな100年の奮闘目標に邁進している」と声高に叫ぶ。「台湾問題を解決し祖国の完全な統一を実現することが中国共産党の変わらぬ歴史的任務である」と3期目の総書記(国家主席)を目指しているのだ。

時代は核戦力競争を中心とした米国とソ連邦の20世紀の冷戦時代が終結し、2020年からは明らかに経済力競争を軸とした“米中”の新時代に入ってきたとみることが出来よう。ただアメリカには「もう戦争はしたくない」という厭戦気分とバイデン大統領の高齢化に伴うアメリカの気力弱体化があり、中国にも少子高齢化と高齢社会への突入という人口問題の弱点をかかえつつある。どちらがそれぞれの弱点を早く克服するかが今後の大きな焦点となるだろう。

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