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【読書感想】神・文章術 圧倒的な世界観で多くの人を魅了する

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「書き捨て」の話に戻ろう。1日3分でいい。チラシの裏でいい。気になるもの、悩んでいるものについて、手を使って鉛筆やペンで書くことを続けてみてほしい。書いたものを見て「こりゃダメだ」と捨てるのではなく、はじめから捨てるつもりで書く。これが極意。

 嘘みたいに思われるかもしれないけれど、素直な気持ちで読んでもらいたい。

 僕は、悩みを書き捨てるようになってから、まず、無駄に悩まなくなった。

 僕らは、無駄な悩みにとらわれていて、悩むべきホンモノの悩みに向き合えていない。僕は、書き捨てることで、無駄な悩みから解放され、向き合う価値のあるホンモノの悩みについて考えられる状況を確認し、楽に生きられるようになった。「書くこと」でなぜ無駄な悩みが消えるのか、方法とメカニズムについてはあとの章でお話ししたい。

「はじめに」で、「書くものをつくれば、書くのはたやすい」と述べた。書き捨てるだけで、書くものを自分のなかにつくり上げられる。

 対象について書き捨てることは、自分の言葉に変換するということである。言葉に変換する際には、その対象をどう見るか、という世界観が求められる。世界観を持って世の中を観察することによって、「書くもの」が蓄えられていく。つまり、書き捨てによって世界観が構築されるとともに、「書くもの」が蓄積されていくのだ。


 確かに「言葉にする」ことによって、自分が置かれている状況を少し俯瞰して考えられるところはあると思います。

 その一方で、炎上系YouTuberなどをみていると、この人たちにとっては「自分自身がネタ作りのためのキャラクターになってしまっているのだろうな。それもひとつの生き方なんだろうけど……」と、考え込んでしまうところもあるのです。

 ネットで「自分を他者にアピールすること」が重視される社会になった面白さと同時に「写真を撮ること優先で、熱いうちにラーメンを食べられくなくなってしまう人生」が、本当にその人を幸せにしているのか、と疑問にもなります。

(撮影用とは別に注文すればいいんですけどね、ラーメンだけの話であれば)

 僕自身も、そうやって、「自分のつらい状況もネタにできる」時代に生まれてきてよかった、とは思っています。
 
 フミコフミオさんや僕のように、20年前、テキストサイトやブログ創生期にはじめた人たちは、幸運だったのかもしれません。

 ちょっとしたことで炎上するリスクも今ほどは大きくなくて、日記サイトやブログで「ネットでも紙での書き捨て同様のノーリアクションの時代」を過ごし、ある程度スキルが上がり、厳しい反応にも慣れた状態で「ブログ全盛期からSNSの時代」を迎えられたというタイミングの良さもあったのだと思います。

 もともと文章を書くのが好きな人たちがテキストサイトをやっていた、というのはあるのだとしても、やっている人はずっと続けているし、最近になってブームに乗って、あるいはお金を稼ごうとしてはじめた人は長続きしていない、とも感じるのです。

 2000年前後に「ネットで書くこと」をはじめた世代は、高度成長期に給料が右肩上がりだった時代の日本人の「やればできる」「未来は明るい」みたいな感覚を、ブログに持つことができたのかもしれません。
 今は「新しいブログを開拓して読もう」という人は少ないですよね。

 TwitterもInstagramもTikTokもYouTubeもあるし。

 スマートフォンでも、『はてなブログ』のアプリはあるものの、TwitterやInstagramのアプリほどは普及しておらず、「検索して読む」というひと手間は、けっこう敷居が高いのではなかろうか。

 個性とは自然に熟成されて、発現されるものだと思っている人は多いみたいだ。はっきり言っておく。個性は探しに行かない限り見つからない。個の力で生きている人は、例外なく、自分で個性を見つけて、それを研鑽してきた人だ。

 個性を見つけるいちばんの近道は、「自分を発掘する」という意識を持って書くこと。文章を書いているときに、「自分はこんなことを考えているのか」と驚いた経験はないだろうか。書き続けることで、そういった驚きの発見をする機会も増えてくる。その驚きのどこかに個性はある。


 僕も20年くらいネットで書き続けているのですが、率直なところ、「世の中には、文章を書くこと、書き続けることに向いているというか、書かずにはいられない人間がいて、それはもう、才能というよりは呪いのようなものではないか、と今は考えているのです。この時間をもっと有効に使えたのではないか、と思うし、他人に薦められるほど僕にとってはプラスになっているという自信もありません。

 「ああ、フミコフミオさんって、森博嗣先生みたいなことを書く人だなあ」と思いながら僕は読みました。

 すごく正直に「フミコさんが見た世界」が描かれているし、具体例を並べて「わかったような気にさせる」のではなくて、普遍的・抽象的な「本質」「概念」を語ることに徹している。

 読んでいると、つい、「それはあなただからできる(できた)ことなのでは……」と言いたくなってしまうのです。

 この本に書かれていることも、「もともと、ある程度書く能力がある人」「読むこと、書くことが好きな人」向けではないかと思います。

 「とりあえず書けるんだけど、なんかブレイクスルーできない」という人は、ぜひ、読んでみてください。

 あと、「自分は何のために生きているんだろう」という人生の袋小路に入り込んでしまった人にも。

fujipon.hatenablog.com
fujipon.hatenadiary.com

小田嶋隆のコラム道
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