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力強さ欠く日本政治 有志で新たな「保守」党を

(リベラルタイム 2022年2月号掲載)
日本財団理事長 尾形武寿


昨年秋の衆議院議員選挙は事前の予想と大きく異なる結果となった。苦戦が予想された自民党は公示前の議席を下回ったものの絶対安定過半数の261議席を確保し、衆院選を「政権選択選挙」と位置付けた立憲民主党は110議席から96議席に後退した。代わりに日本維新の会が11議席から41議席に躍進し第三党に躍り出た。メディアの分析は事前の世論調査、当日の出口調査とも近年の国政選挙に比べ確度を欠き、調査方法の検証を始めた社もあると聞く。

専門家から様々な分析がなされているが、素人の立場で見ると、若い有権者の間に政治意識の変化というか、新たなうねりが出てきた、というのが率直な感想だ。長期化する新型コロナウイルス禍を通じ、政治と日常的に向き合う機会が増えた結果と思う。付随して世代間の違い、分断がこれまで以上に鮮明になった。

出口調査結果を基にした通信社の配信記事は10代、20代、30代の有権者の投票先はいずれも自民党が30%台後半でトップ、逆に60代と70歳以上は立憲民主党が一位だったと記している。同じデータを基にした大手紙の推計では、40歳未満の有権者の投票結果をそのまま衆院の全465議席に当てはめると、自民党は295.5議席と300の大台に迫り、逆に60歳以上の結果を基にすると、単独過半数割れの223議席にとどまり、分断が一層鮮明になっている。

近年、若者の保守化傾向が多くの観点から指摘されている。よく分からないが、急速に進む少子高齢化と四半世紀以上続く経済の低迷が影響していると思う。1990年代半ばまで世界のトップクラスだった日本の賃金は、その後停滞し、物価上昇分などを差し引いた実質賃金は97年を100とすると2016年には90を割り込み、経済協力開発機構(OECD)によると、現在の年間平均賃金は韓国より下位にある。改善気配はなく、賃金の低い非正規労働者の増加も目立っている。

一方で国と地方を合わせた「国の借金」は1200兆円とGDP(国内総生産)の二倍に達し、危険水域を超えた。近年、子供・若者対策を手厚くする傾向にあるが、結局、最終的なツケは将来を担う若者に回らざるを得ない。日本財団が一九年に米国や中国、インドなど9カ国の17~19歳各1000人を対象に行なった調査で、自国の将来について「よくなる」と答えた日本の若者は9.6%と突出した最下位だった。この数字にも若者の無力感が如実に示されている。

先の総選挙では複数の野党が「消費税5%引き下げ」などを公約に掲げた。巨額の国の借金は与野党が聞こえの良い“バラマキ”を競い合った結果である。減税を提案する以上、不足する財源をどうするのか、納得ある説明が要る。減税を実施するには「出」を減らすか、ほかの財源を発掘するしかない。多くの世論調査で5%引き下げより、現行の10%維持を「よし」とする声が上回った。それだけ多くの国民が財政悪化を深刻に受け止めているということであろう。

内政に限らず、我国を取り巻く外交・安全保障環境も、台湾有事が取り沙汰されるなど緊迫の度を増している。平和憲法下で安全保障より経済的な豊かさを追い求めたこれまでの政治は最早、国際社会に通用しない。総選挙後、維新が打ち出した「文書通信交通滞在費」の見直しに一斉に追随した各党の姿を見ると、改めてわが国の政治のひ弱さを痛感する。

いま、政治に求められているのは力強さである。個人としては、自民、維新、国民民主党、立民あたりの若手有志が新たな「保守」党を結成し、保守陣営内部での政策論議を活発化するのが望ましいと考えるが、選択肢は他にもあろう。その意味でも国会議員諸兄が、政治の再生に向け覚悟と決意を新たにされるよう望んで止まない。

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