記事

コロナ禍の中で全社的なテレワーク化に見事成功した企業は、何が一番違ったのか

2/2

トップが本気度を示せば、企業風土は変えられる

これらの大胆な改革を実行できたのには、代表取締役社長・時田隆仁氏(19年社長就任)の存在が大きい。IT企業からDX企業への転身を掲げ、新しい働き方をはじめ、組織・人材マネジメントの変革を推進。20年には幹部社員の報酬体系を職能ベースではなく、職責ベースとするジョブ型人事制度を導入。今後、一般社員へ適用を広げ、従業員のキャリアパスを拡大し、企業成長の原動力にするという。

時田社長の改革を支える前出の執行役員常務・平松さんは、「僕自身、完全テレワーク化という前例のない変革を進めるにあたり、急激な変化を起こすことに迷いもあったのですが、時田がひと言、『ひよるな』と。『理想のためなら、背中を押す』と言ってくれたのです。

その言葉に勇気をもらい、会社全体で働き方を変えていくことに。トップが意思決定を素早く行い、具体的なアクションを示せば、社員は会社側の本気度を感じ取り、自分たちでよくしていこうと動き始めるものです。逆に、本気度をきちんと示せなければ、忖度(そんたく)が始まってしまいます」と話す。

CHRO室マネージャー 猪田昌平さん「テレワークが当たり前になると、どうすれば成果を出せるか自分で考え始めるものです。自主・自律のきっかけに!」
CHRO室マネージャー 猪田昌平さん「テレワークが当たり前になると、どうすれば成果を出せるか自分で考え始めるものです。自主・自律のきっかけに!」

働き方改革をはじめ、完全テレワーク化に向け、平松さんを支え、現場の調整を行ってきたCHRO室マネージャーの猪田昌平さんは、「現在、国内従業員8万人のうち、8割に当たる6万人がテレワークを実施。通勤定期を廃止し、出社するときは実費精算。在宅勤務補助費として月5000円を支給しています。最初こそ、緊急事態宣言による義務からスタートしたテレワークですが、社員からの評判がとてもいいんです。社員同士のコミュニケーション不足は感じていますが、ガチガチにルールを定めて運用しているわけではないので、緊急事態宣言時はともかく、そうでないときは出社したい人は出社すればいい。

社内をフリーアドレス化しているので、部署を超えたコミュニケーションが取れるようになりましたし、普段テレワークで顔を合わせないぶん、出社したときに雑談する機会が増えたり、今までと違う形のコミュニケーションが生まれています。評価制度についても、成果を評価するという意味では、テレワークでも出社でも変わりはありません」と、テレワーク化における社内の様子を教えてくれた。

育休復帰後、フルタイムでもゆとりあるWLBに大満足

完全テレワーク化から1年以上経過した富士通。キャリア事業本部の3人に、テレワーク導入前後の働き方を聞いてみた。まずは、20年7月に育休復帰した梶山有紀代さん。

(右)キャリア事業本部 梶山搉紀代さん「育休から復帰後、時短しなくてもOK。夫婦2人ともテレワークで育児もシェアしやすくなった」(左)キャリア事業本部 小池 遼さん「本来は働いた時間ではなく、成果で評価されるべき。テレワークが理想でしょう」
(右)キャリア事業本部 梶山有紀代さん「育休から復帰後、時短しなくてもOK。夫婦2人ともテレワークで育児もシェアしやすくなった」(左)キャリア事業本部 小池 遼さん「本来は働いた時間ではなく、成果で評価されるべき。テレワークが理想でしょう」

「以前からテレワーク制度はありましたが、使おうと思ったことはありません。妊娠中はつわりもひどく、出社がツラいことも度々ありましたが、テレワーク利用の申請をし、データ持ち出しの準備をして……と、それだけで時間が掛かり、急にテレワークに切り替えたいといっても間に合わないんです。ほかの部署では、テレワークを使いたくても上司が渋るということを聞いたことも。でも、コロナ禍となり、全社一斉テレワークに。

私は時短ではなく、フルタイムで復帰しました。復帰したときからテレワークです。最初は、テレワークという働き方の経験もないし、やっていけるか不安でしたが、実際にはじめると、ワーク・ライフ・バランス(WLB)が取りやすく助かっています。夫はコロナ禍前からテレワークなので、夫と協力しながら家事と育児を行っています。ただ、私は出社して仕事をするのが好きなので、コロナ禍が収束したら週に1度は出社したいですね」

19年に第1子が生まれ、男性取得者の少ない富士通では珍しく1カ月半の育休を取得した小池遼さんは、「育休から復帰したのはコロナ禍以前のこと。事務所に出社する通常勤務の状態だったため、子どもと触れあう時間が少なくなり、なついてくれなくなったんです。でも、テレワークとなり、仕事の合間に子どもの顔を見られるようになると、元通りなついてくれるようになりました。最近、子どもが保育園に通い始め、妻は仕事に復帰。妻もテレワークをしているので、平日昼間に夫婦でランチに行くことも。

普通なら、子どもが大きくなるまで2人で出掛ける時間なんてつくれませんよね。第1回目の緊急事態宣言が解除されるころ、他社から『何日から出社……』という声が聞こえ始めていたので、うちもそのうちと思っていた直後に、完全テレワーク化の発表。最初こそ驚きましたが、もう以前の勤務形態には戻れません」と、テレワークの働きやすさを強く語った。

テレワークで成果を出せるかは導入する企業の姿勢次第

梶山さん、小池さんの上司である金子敏之さんは、マネージャーの立場からテレワークという働き方をどう見ているのだろうか。

キャリア事業本部 マネージャー 金子敏之さん「マネジメントは臨機応変に対応。家庭内の家事の分担も変化し、毎晩の夕食づくりは僕が担当しています」
キャリア事業本部 マネージャー 金子敏之さん「マネジメントは臨機応変に対応。家庭内の家事の分担も変化し、毎晩の夕食づくりは僕が担当しています」

「私のチームはテレワークをうまく導入できているほうですが、そういうチームばかりではありません。業務内容によっても違うし、チーム内でもテレワークのほうが効率がいいと感じる人がいたり、出社したい人がいたりとさまざま。完全テレワークといっても、必ずテレワークしなければならないわけではありません。働き方、働く場所を自由に選べるというだけ。テレワークをベースに、皆が気持ちよく働けるように試行錯誤しながら、行きつ戻りつできればいいのではないでしょうか。

私の場合、マネージャーの仕事はテレワークだからといって何も変わりません。ただ、OJTに関しては課題が満載です。仕事を教えるだけでなく、新人とどうコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていくかは大きな課題だと感じています。そうはいっても、働く場所を選べるおかげで、例えば、チームの仲間とお芝居見物するために、皆で会場近くのサテライトオフィスで開演時刻まで仕事を行い、時間になったら仕事を切り上げ、観劇するなんてことも。コミュニケーションが取りづらくなったとは一概に言えません」

取材した金子さんのチームは、テレワーク導入成功の一事例にすぎない。テレワークになったからといって、いいことばかりではなく必ずしも仕事の成果が上がるわけではない。しかし、育児や介護に携わる従業員、ライフステージの変化に影響を受けやすい女性にとって、テレワークで働きやすい環境づくりができるのは確かなこと。気になる業績も、たった1年で測れるものではないが、売上収益こそ前年同期比0.1%減の8019億円だが、営業利益は同51.5%増の337億円と業績は好調。テレワーク化の是非が問題ではなく、テレワークを導入する企業側の姿勢が問われるべきではないだろうか。今一度考えてみてほしい。

テレワークを支えるサテライトオフィス

(ライター 江藤 誌惠 撮影=小禄 慎一郎)

あわせて読みたい

「富士通」の記事一覧へ

トピックス

  1. 一覧を見る

ランキング

  1. 1

    BLOGOSサービス終了のお知らせ

    BLOGOS編集部

    03月31日 16:00

  2. 2

    なぜ日本からは韓国の姿が理解しにくいのか 識者が語る日韓関係の行方

    島村優

    03月31日 15:41

  3. 3

    「いまの正義」だけが語られるネット社会とウェブ言論の未来

    御田寺圭

    03月31日 10:09

  4. 4

    カーオーディオの文化史 〜ドライブミュージックを支えた、技術の結晶たち〜

    速水健朗

    03月30日 16:30

  5. 5

    BLOGOS執筆を通じて垣間見たリーマンショック後10年の企業経営

    大関暁夫

    03月31日 08:27

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。