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政府の「デジタル化」の危険性と必要性

■「個人のデジタル化」と「政府のデジタル化」

 昨年から、「デジタル化」という言葉が頻繁に聞かれるようになり、デジタル庁という新しい省庁が出来たことは周知の通りであり、とにかく「デジタル化」「デジタル化」と喧しい。

 「デジタル化」という言葉は、民間企業では、もうかれこれ20年以上も前から言われて推進されてきたことであり、今頃になってようやく「デジタル化」と言うのは、周回遅れ的な違和感さえ覚える。

 しかし、お金の認識と同様に、「個人や民間企業のデジタル化」と「政府のデジタル化」を同じ土俵の上で考えるのは危険であり、手放しでは喜べない側面を有している。

 個人的なことで言えば、自宅にある書類等はデジタル化すれば、空間的にも余裕が出来て合理的だと思う時がある。しかし、データというものは「消える」というリスクが常に存在する。

 今の世の中に絶対且つ永遠に消えないデータの記憶媒体というものは存在しないため、常にデータはバックアップを取得する必要がある。バックアップしたデータもなにかしらの原因で消えることもあるし、記憶媒体の経年劣化でデータが読めなくなることも多々ある。あるいは、データのフォーマット自体が変わるようなこともあるので、汎用性という意味でもデータの長期保存には常にリスクが付いて回ることになる。デジタルデータとは、見えないにも拘らず、コロコロと姿(フォーマット)を変えるという意味で“刹那的”なものだと言えるのかもしれない。

 そのため、結局は、デジタル化したデータを紙に出力してアナログ的に保存することが最も汎用的な保存方法となり、デジタルとアナログのダブル保管に行き着いてしまう。

■データは消えてしまえば終わり。紙は燃えてしまえば終わり。

 私自身も重要なデータは何重にもバックアップを取得しているが、同時に紙にもプリントアウトしてクリアファイルに保管している。デジタルデータというのは便利な代物ではあっても、絶対的な安心を得ることのできる代物ではないため、ツールとして利用するには便利だというくらいの認識で丁度良いのではないかと思う。

 例えば、ネット銀行などでは、紙の通帳が無い。もしネット銀行の各地のシステムが電磁パルス攻撃でも受けてバックアップデータごとダウンしてしまうと、最悪、貯金残高が判らなくなるというようなトラブルが発生しないとも限らない。しかし、紙の貯金通帳があると、なんとなく貯金は保障されるという安心感がある。

 ネット証券での株式売買記録なども、年間報告書だけは紙で保管しているという人は多い。

 データは消えてしまえば終わり。紙は燃えてしまえば終わり。どちらも一長一短があるので、結局は、デジタルとアナログの二刀流が最も安全ということになる。

 「デジタル化」「デジタル化」と言うが、個人や1企業の場合、データが消えたりしても、それは自己(事故)責任で済ますことができるが、政府の場合は、そういうわけにはいかない。

 「紙の書類は場所を取るので、全ての書類をデジタル化せよ」と言っても、そのデジタルデータが消えてしまった場合のことを考えて、紙媒体も保管しておくことが望ましい。データが消えても紙がある、紙が燃えてもデータがあるという運用がベターだ。

■デジタルとアナログの二刀流が望ましい

 例えば、戸籍データをデジタル化したとして、それが消えてしまうとか、盗まれてしまうようなことがあると、自己(事故)責任では済まされない。デジタルデータ化するということは、消失リスクだけでなく、盗難リスクも飛躍的に上がることになる。

 紙の資料であれば、保管場所に人間が入らなければ盗むことはできないが、デジタルデータだと保管場所に入ることなく、データが保存されているシステムのセキュリティさえ破れば、いとも容易く盗まれてしまう。データ回線の高速化によって、大量の重たいデータも一瞬で盗まれるという盗難リスクも背負い込まなければいけない。

 そう考えると、政府にとっては、デジタルデータで保管するよりもアナログ的に紙媒体で保管した方がリスクが低くて安全だとも言える。

 リスクヘッジのために、デジタルとアナログの二刀流が望ましいが、そうなると、結局、余計に非効率になる可能性も否定できない。

 政府が個人や民間企業のように利便性だけを追求すると思わぬしっぺ返しを喰らう危険性がある。デジタル化する以前に、セキュリティ対策を万全にすることを優先するべきだ。

 しかし、そもそもの話、政府がデジタル化を急ぐ必要があるのだろうか?という疑問は拭えない。

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