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瞬間最高視聴率40%割れの紅白歌合戦 前田会長の組織改革がトドメとなるか?


視聴率――。多くの視聴者は「いい番組を放送して欲しい」との思いが強いだろうが、テレビ局は「どんなにいい番組を作っても数字がとれなければ…」と言うのがホンネ。理屈はどうであれ、数字で示される「視聴率」が視聴者の求める「ニーズ」であることは疑いもない事実だ。

もちろん、その一方では「たかだか数%の増減で一喜一憂するのはバカバカしい」と言う意見もある。確かに、1〜2%程度の違いで番組を評価するのは無理があるのかもしれない。だが、昨年の大晦日に放送された「第72回NHK紅白歌合戦」の下落ぶりは、そんな半端なものではなかった。

視聴率35%割れの衝撃

ビデオリサーチの発表によると関東地区の世帯視聴率は第1部(19時30分〜20時55分)が31.5%(個人視聴率=23.4%)で、第2部(21時〜23時45分)は34.3%(同=24.8%)だった。この数字は過去のワースト記録だった2019年の37.3%を、さらに3.0ポイント下回り、35%までも割り込んでしまった。「国民的音楽番組」を自負する『紅白』にとって衝撃的な凋落となったのだ。

「受信料問題が取り沙汰されるNHKにとって『紅白』は、その存在をアピールする最大の看板番組。たかが音楽番組、されど音楽番組だったのです。それが一気に崩れ始めたとなったら、今後さらに受信料制度への批判が高まりかねません。『紅白』と言うのはNHKにとってのアキレス腱でもあるのです」(民放の制作幹部)。

NHK関係者は「昨年は40.3%で、40%台を回復したことに局内も沸いたのですが…」と言うが、今回の数字は唖然茫然だったに違いない。

「昨年から6ポイントも下げるなんて想像もしていませんでした。現場には多少なり危機感のようなものはありましたが、それでも40%をボーダーラインにしていました。特に今回は裏番組だったダウンタウンの『絶対に笑ってはいけない』シリーズ(日テレ)が休止されたので、それなりの期待があったことは事実です。それに局内には『紅白』の潜在視聴率は低くても38%前後はあると思われていましたからね。それがまさか35%までも割り込んでしまうなんて…」。

事実、日テレが『紅白』の裏番組として放送した『笑って年越したい!笑う大晦日』はナインティナインや千鳥といった人気芸人を大量投入して放送したものの、前年の17.6%を10ポイント以上ダウンする7.2%に後退する結果となった。その一方で、テレビ朝日が放送した『ザワつく!大晦日 一茂良純ちさ子&徹子&羽鳥玉川&新庄BIGBOSSの会』は前年を3.3%上回る12.1%、テレビ東京『年忘れにっぽんの歌』も事前収録だったにもかかわらず0.9ポイントを上げる8.3%となった。

「例年に比べると目玉となる裏番組がなかったため、NHKはもちろん、メディア関係者も楽観していた部分はあったはずです。実際、裏番組の視聴率も伸びきれていませんでしたしね。そういった意味ではダウンタウンの力が改めて証明された格好となりましたが、裏返すと『紅白』にとっては追い風だったのです。それが前年比で6ポイントも落としていては、もはや『紅白』への期待感がなくなったと見られるかもしれません」(NHKウオッチャー)。

紅白が視聴率を下げた理由

もっとも、NHKはもちろんだが、業界内にはいまだに「なぜここまで下がった?」と驚きを隠せない意見も多いことは事実だ。スポーツニッポンは視聴率下落について「理由は3つ」と3日付のWebニュースで取り上げていた。

1つは、「チャンネルを合わせてもらおうと言う努力を怠った」とし、その理由としてリハーサル取材に制限をかけていたことを指摘。その上でNHK関係者の反省として「情報をシャットアウトしすぎた。視聴者が期待するようなメディアの発信が例年に比べ極端に少なくなってしまった」との声を掲載していた。つまり、番組のPR不足だったと言うのである。

2つ目は、出場者、番組の演出などを若者向けに舵を切った結果、高齢者の「紅白離れ」に拍車がかかったとしている。実際、50年連続出場の五木ひろしを外したことは大きなニュースになった。NHKも慌てたのか「カバーすべく細川たかしとさだまさしを投入した」と言うが「話題作りとして訴えられなかった」と指摘している。

そして3つ目として、「この人が出るなら見たい」と思わせるようなトップアーティストを引き出せなかったとしている。

若者向けの番組作りとして一定の評価を得て、視聴者からは好評だったと言うが、その反面「民放の音楽番組に出ないようなトップアーティストを出せなかったことで視聴率の上乗せが出来ず、さらにPR不足と高齢者離れが視聴率を下げる結果となった」と結んでいた。

だが果たして、それが視聴率急落の大きな要因だったのか? 放送に詳しい専門家は、

「例年に比べてPR不足だったことは否めません。昨今の『紅白』は出場者の発表後、五月雨式に特別枠の出場者を発表するなど、常に話題を提供してきましたが、今回はそれが激減しました。おそらくコロナ禍という事情もあって出演交渉がうまくいかなかったのでしょう。現場制作スタッフのレベル低下もあるのかもしれませんが…。

ただ、若者向けへの方向転換で高齢者が離れたと言う説は素人でも思いつくもので、視聴率不振の最大の要因はヒット曲がなかったことなのです。昨今の音楽番組の傾向として、トークのコーナーが終わって歌が始まると視聴率が下がることが指摘されています。つまり、視聴者はアーティストのトークは聞きたいけど、歌には関心がない。それなのに、出場歌手の選考にYouTubeやTikTokの再生回数を重視し、制作担当者はネットで流行っている曲がヒット曲だと勘違いしてしまっているのです」。

と言い切る。『紅白』には根本的な問題があると言うわけだが、あるNHK関係者は、

「今回の『紅白』は持続可能性を考えさせられる『紅白』になってしまいました」。

とも。

紅白に必要なのは「永遠のマンネリ」

「NHKは『紅白改革』と言って、時代に即した『紅白』を掲げていますが、『紅白』に改革なんて必要ないと思いますよ。つまり永遠のマンネリでいいのではないでしょうか。

民放の年末の音楽番組が専門店だとしたら、NHKの『紅白』は百貨店、総合デパートであることをウリにすべきなのです。今回の『紅白』は、テーマを『カラフル』として、全体的にSDGsを全面に出していましたが、なぜか欺瞞的でしたね。

そもそもその年にヒット曲がなかったら、懐メロと批判されようと、演歌からフォーク、ロック、ニューミュージック…各ジャンルを代表するアーティストを選び、一つのステージで老若男女誰もが口ずさめるような曲を口パクではなく生歌でフェアに歌わせることなのです。

セットの転換や演出上の事情もあるのかもしれませんが、今回のようにスタジオをNHK放送センターと国際フォーラムの2カ所に分けたり、事前収録の映像や中継を入れたりするばかりか、出場歌手によっては2曲を歌わせ、演歌の歌唱は短めにするだとか、『歌合戦』としてのコンセプトを逸脱していると思いますけどね。昨今は本物志向を求めるムードが視聴者の間で高まりつつあります。一部の世代に迎合するのではなく、『紅白』は、その年の最後に本物のアーティストが歌を競う場であるべきなのです」(芸能関係者)

ちなみに、今回の『紅白』の瞬間最高視聴率は、番組終盤にMISIAがコメントする場面で39.3%だった。続いては白組のトリを務めた福山雅治で36.6%。注目の松平健による「マツケンサンバⅡ」は33.2%で第1部の最高となった。

結果的に瞬間最高視聴率も40%に届かなかったが、業界内では「BS4KやNHKプラス、録画などで見ている人も多いのでは」とも言われている。『紅白』の実施本部長だったNHKエンターテインメント番組部長の杉山賢治氏も「地上波のみならず多彩な接し方で『紅白』を楽しんでいただいた」と一定の評価をしていたが、果たして本当にそうだったのか?

確かにテレビの視聴者は年々減少傾向にあり、若い世代ではテレビを持たない人も多いが、

「年末年始は帰省も多く、大晦日だけは家族でテレビを見ていた若者も多かったはずですが、今回はどうだったのでしょうか? 昨年の『紅白』は賑やかさがあるだけで年末感は感じませんでしたね」(放送記者)。

組織改革とコストカットで紅白終焉か

Getty Images

では今後の『紅白』はどうなっていくのか?

「今、NHKでは組織改革と制作費などのコスト見直しが、みずほ銀行出身の前田晃伸会長の号令で行われています。その改革で局員が戦々恐々としているのが組織改革です。昨年末に局員を集めて説明会も行われたようですが、何でも管理職を一般職員に降格させると言います。役職者のポストも減らすことで給料を削減しようと言うことなのでしょう。その場合、例えばチーフプロデューサーはディレクターなってしまうとか…。いずれにしても人事に手をつけると局員のモチベーション低下にもつながりかねない。

もちろん制作費は確実に減らされますし、働き方改革などの影響も併せて番組制作力の低下につながっていくはずです。持続可能性で言うなら『紅白』は確実に凋落の一途を辿っていくと思いますよ」(前出のNHKウオッチャー)

瞬間最高視聴率でも40%を割った『紅白』だが、「これも時代の流れ」とばかりに前田会長の組織改革によって終焉を迎えるのかもしれない。

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