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国連予算と人権巡る大国の綱引き

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▲写真 2021年9月22日、国連総会のサミットで講演を行うリンダ・トーマス-グリーンフィールド米国国連大使。 出典:Photo by Alex Wong/Getty Images

2022年度予算審議では、軍事クーデターで政権が変わったミャンマーの問題は大きくは取り上げられなかったが、シリアの人権調査メカニズムの予算では、ロシアが再度強行に反対した。

中国の場合、今度は国連の特別政務派遣団(Special Political Missions)に配置されている人権担当官ポスト予算に対し反対の意向を示した。特別政務派遣団は、国連PKO予算とは別に通常予算が主な財源となっているため、そこに組み込まれている人権担当官ポストも通常予算の対象となる。

グテレス事務総長は、国連の紛争予防や調停、平和構築活動での人権活動を重視しており、2022年度予算では、人権理事会の決定に基づいて人権に関する16の暫定ポストを正規のポストに格上げする提案をした。最終的に2022度通常予算は総会で承認されたものの、ロシアや中国などは人権関係の予算には留保を表明している。

ロシアも中国も国内での権威主義傾向を強めており、ロシアは2021年末に長年スターリン時代の人権侵害を調査し告発して評価を得ていたロシアで最も古い人権NGOのメモリアル・インターナショナルの閉鎖を命じた。スターリンの個人崇拝は後継者のフルシチョフによって弾劾されたが、ロシアの再台頭を狙い、憲法を改正して長期政権を狙うプーチン大統領は反体制派の民主勢力を圧迫してきており、人権活動を極端に制限して自らの個人支配をさらに強固にしようとしていることがその背景にある。

中国の場合には、習近平国家主席が自らの独裁体制と個人崇拝を確立させるべく国内の思想統制や人権抑圧を強めており、それは一国二制度を認めていた香港での民主化勢力の弾圧や新疆ウイグル族への人権抑圧につながっている。これら一連の動きに対し、特に米国が中国の人権政策を強く非難し、制裁措置を発出してきていることに対する中国の強い反発がある。

このようなロシアと中国の人権に対する態度が国連の通常予算審議でも表面化していることは、人権を保護、推進していこうとする欧米とこれを抑圧していこうとする中露の対立が国連というマルチ外交の場でも衝突しているだけではなく、国際政治の構造的変化を反映して、国際関係がより不確実性を増している一つの具体的現れだと言える。

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