- 2022年01月07日 14:29 (配信日時 01月06日 15:15)
「買うから上がる、上がるから買う」不動産バブルに踊る韓国経済を待ち受ける大失速リスク
2/2経済統計が示す以上に雇用・所得環境は厳しい
韓国では所得減少に直面する人が増えている。住宅価格が上昇する中で住む場所を確保するために、借り入れに頼らざるを得ない家計は増えている。
まず、所得の減少を確認する。韓国銀行によると、2021年7~9月期の国民総所得(GNI、その国の居住者が国内外で得た所得の総額)は前期比0.7%減だった(実質ベース、速報値)。その背景の一つには、韓国企業が海外から受け取る配当金の減少がある。それに加えて、文政権の経済政策の影響も大きいはずだ。文政権は、最低賃金引き上げなど労働組合に有利に働く経済政策を実施した。その結果、雇用の受け皿である中小企業の経営体力は低下して若年層を中心に雇用が失われた。
さらに、2021年7月以降は感染再拡大の深刻化によって動線が寸断され、飲食、宿泊、交通などサービス業の収益環境が悪化した。11月からは感染再拡大が収まらない中で移動制限が緩和され、雇用・所得環境への下押し圧力は一段と強まっている。経済統計が示す以上に、韓国の雇用・所得環境は厳しい状況にあると考えられる。
借り入れに頼る個人や自営業者は今後も増える
その結果として、住む場所を確保するために、さらには日々の生活や中小企業の運転資金のために、借り入れに頼らざるを得ない人が増えた。国際決済銀行(BIS)のデータによると2020年9月末に韓国家計部門の債務残高は国内総生産(GDP)の規模を上回り、2021年6月末時点ではGDP比105.8%に上昇した。
今後、韓国の雇用・所得環境の不安定感は高まり、所得減に直面する家計は増えるだろう。その主な要因として、コロナ禍によるサプライチェーンの混乱、世界的なインフレリスクの高まり、さらには不動産市況の悪化などによる中国経済の減速の鮮明化などがある。
12月24日に韓国銀行が公表した『2022年の金融政策(Monetary Policy for 2022)』によると、家計債務の増加ペースは過去のトレンドを上回っている。今後、借り入れに頼らざるを得ない個人や自営業者は増え、家計の債務問題は深刻化するだろう。家計の債務残高の増加を食い止めるために、韓国銀行は追加利上げを行わざるを得なくなっている。
※写真はイメージです - iStock.com/fotoVoyager
不動産価格が未来永劫上昇することはあり得ないが…
韓国では物価上昇のリスクも高まっている。その大きな要因は、世界の供給網=サプライチェーンの寸断だ。足許、デルタ株やオミクロン株による感染再拡大によってサプライチェーンの寸断が深刻化している。その結果、自動車などに使われる半導体などモノの不足の深刻化に加え、船員やコンテナ、タンカーの不足など物流コストも上昇している。当面、世界のサプライチェーンは混乱し、半導体や穀物、エネルギー資源、レアメタルなどの不足が続くだろう。異常気象もサプライチェーンの寸断を深刻化させている。
それによって、韓国の卸売物価は一段と上昇し、消費者物価も上昇する展開が想定される。物価上昇リスクに対抗するために、韓国銀行はこれまで以上にタカ派姿勢を鮮明に示し、複数回の追加利上げを実施するだろう。
また、不動産価格の上昇と家計債務残高の増加は、韓国の金融システムにとって無視できないリスクだ。資産価格が未来永劫上昇し続けることはない。どこかのタイミングで韓国の不動産価格は調整し、その後は家計の不良債権問題が深刻化する恐れがある。
経済成長率の低下懸念は高まっている
足許、韓国銀行は、当面の景気は半導体などの輸出に支えられて緩やかに回復すると予想している、その一方で、韓国銀行は将来的に家計の不良債権が増加する可能性が高まっていると警戒を強め始めた。つまり、韓国銀行は経済が安定しているうちに可能な限り追加の利上げを実施して、金融システムの脆弱性が追加的に高まる展開を阻止しなければならない。追加の利上げは、金融システムが不安定化した場合の対応余地を確保するためにも必要だ。
このように考えると、韓国の金利は上昇する可能性が高い。その展開が鮮明となれば、元利金の支払いが難しくなり、デフォルトに陥る家計は増え、個人の消費は減少するだろう。その一方で、韓国にとって最大の輸出先である中国経済が失速するリスクも高まっており、外需の下振れ懸念も高まっている。徐々に韓国経済全体で成長率の低下懸念が高まるだろう。
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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
法政大学大学院 教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。
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(法政大学大学院 教授 真壁 昭夫)
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