- 2022年01月06日 15:38 (配信日時 01月06日 12:15)
「日本の自転車事故は先進国最悪」堂々と歩道を走る"危険自転車"がいっこうに減らないワケ
2/2遵法精神は豊かなはずなのに自転車だけはデタラメ
いちばん腹が立つのは、自分自身が子どもを連れて歩いているときだ。幼い子どもの手を引いて(またはベビーカーを押して)安心して歩道を通りたいと思う。これは子育て中の誰にとっても普通の願いだと思うが、それを攪乱するのが、まさに自転車、なかでもスマホ自転車なわけだ。
彼らは歩道上の子どももお年寄りも何も見ていない。見ているのは手元の画面だけ。画面に何が映っているのかは知らないが、その楽しみのツケを、歩道上の弱者に押しつけているのである。
こんな状態が正常なはずがない。ところが、正常じゃない状態がもう何十年も続いている。
ことはスマホに限らない。昭和45年から構図は同じだ。
車道では「チャリ邪魔」、歩道では「ドケドケ歩行者」。当の自転車は無法。なんなんだこの状態は。
一般的に言って、世界一遵法精神が豊かなこの日本という国にあって、自転車交通だけが、デタラメ。それが日本の現状なのだ。
先進国でも途上国でも自転車は歩道を走らない
大前提を言おう。ヨーロッパの自転車先進諸国(オランダやデンマーク)にしても、中国にしても、アメリカにしても、先進国・途上国を問わず、日本以外のほぼすべての国で実践されているのは「自転車は“非歩道”」ということだ。
自転車は「歩道ではないところ」を走る。
ここが出発点なのである。

歩行者エリアでは自転車に乗ってはいけない。ドイツ・ミュンスター市の例(出所=疋田智『自転車生活の愉しみ』)
その非歩道の最も理想的な姿が「自転車専用道」だろう。筆者もオランダやドイツで走ったことがあるが、安全かつスピーディでじつに快適だった。
だが、この日本においてそれを考えてみよう。専用道? 自転車レーン? 実現すればいい話なんだが、それを縦横無尽に敷くために、たとえばオランダという国は半世紀以上をかけてきた。半世紀地道に自転車走行スペースを整備してきて、今があるのだ。
それはインフラだけでなく、ドライバーや自転車乗りの教育についてもそうだ。
ためしにアムステルダムを走ってみるといい。元来、オランダ人ってのは世界的に見ても「何でもあり」「自由すぎる社会!」を謳歌しているわけだが、そういう国にあって、逆走する自転車はゼロ、歩道を走る自転車もゼロ、横断歩道に歩行者が待ってたら自転車もクルマも止まる、自転車レーン上にクルマは決して駐車しない(←これはいいなぁ)と、これらのことが徹底されている。
ところが、我が日本はどうか。
自転車というものが歩道を当たり前に走るようになってしまって、もう半世紀が過ぎてしまった。一方の車道を見ると、相変わらずクルマが我が物顔で疾走している。自転車がいるとクラクションを鳴らす。幅寄せする。自転車に抜かれないようにと左端ギリギリで信号待ちする。横断歩道でも止まらない。数少ない自転車レーンはほぼ100%駐車場状態。まるでどこかの野蛮な途上国のようだ。
自転車レーンには違法駐車車両、歩道には子供たち、あなたが自転車ならどこを通りますか? - 画像=筆者提供
それなのにテレビなどが「自転車が迷惑!」「自転車が危ない!」と何の検証もなく無責任に報じて、他者への憎悪を煽っている。それが2021年の日本だ。
日本が背負う「自転車事故多発国」という不名誉
そして、その日本こそが、先進各国の中で自転車事故比率が最悪レベルで高い国なのである。
自転車は歩道が安心で安全? まったく違う。まるで逆。自転車=歩道にしてしまったほぼ唯一の国、日本の自転車事故こそが、先進国の中ではトップクラスに多いのだ。
一見ドイツなども多いように見えるが、エコ意識の高いドイツ人たちは自転車に乗る距離が長く、頻繁なのである。それでいてこの数値。
日本では「自転車乗用中」の交通事故死者が16%を占める(令和3年版交通安全白書より)
ところが、多くの日本人は、心の奥底でなんとなく「自転車は歩行者に毛の生えたモノだろ、だから、歩道だよ」と思っている。自転車側も「歩道の方が安心だ」「車道は恐い」と思っている。半世紀という時間はかくも重い。人々の意識も、そして残念なことにインフラも「自転車は歩道だろ~」ということでできてしまった。
日本の自転車事故率が非常に高いのはすでに述べたとおりだが、その温床として、プアなインフラがあるのは間違いない。だが自転車専用道? 自転車レーン? そうしたインフラを作るのに、今後また何十年待たねばならないのか。
とりあえず我々の目の前にある「非歩道」は車道なのである。では、安全に車道を走るにはどうすればいいか。
自転車側が交通ルールを守ること。逆走をせず、信号を守り、標識を守る。この当たり前のことがまず大前提だ。そのためには、自転車に乗る者すべてに教育をしなくてはならない。子供も大人もだ。
フードデリバリーの従事者に自転車の走行ルールを指導する疋田さん(一番右) - 画像提供=筆者・警視庁
自転車乗りだけでなくドライバーも教育する
同時に進めるべきものがドライバーの教育だろう。
特に「車道はシェアすべきもの」という当たり前のことを知らしめていただきたいと思う。車道はクルマのためだけにあるものではなく「交通弱者“以外”の者全部」のためにあるのだ。
逆に歩道こそが「交通弱者だけのためのもの」いわばサンクチュアリであって、それ以外のものはすべからくして非歩道に出なくてはならない。法律上もそうだ。「それ以外のもの」とは、古来、馬車であり、大八車であり、リアカーであり、トロリーバスなどであった。現在ならば軽車両(自転車も含む)であり、バスとトラックとクルマだ。
車道はクルマだけのものではないのである。
クルマ側がそのことを知るだけで、日本の道路はずいぶん安全なものになる。
インフラは整備されてしかるべきだろう。計画とロードマップをもって着々と設えていって欲しいと思う。
だが、そんなことより何より、道路を使う人々の意識の問題だ。
自転車はとりあえず左側通行と信号を守れ。スマホをいじるな。
クルマはクルマで危険があるなら減速せよ、横断歩道で停車すべし。自転車レーンに駐車するんじゃない。よくみると、車内で弁当なんか食べていたりする。そんな場合か。
彼らのその怠惰(駐車場見つけるのがかったるい)とケチ(駐車場代払うのやだ)のせいで、今日も車道の自転車乗りが危険な目に遭わされているのだ。
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疋田 智(ひきた・さとし)
自転車ツーキニスト
1966年生まれ。東京大学工学系大学院(都市工学)修了、学習院大学、東京都市大学、東京サイクルデザイン専門学校等非常勤講師。毎日12kmの通勤に自転車を使う「自転車ツーキニスト」として、環境、健康に良く、経済的な自転車を社会に真に活かす施策を論じる。NPO法人自転車活用推進研究会理事。著書に『ものぐさ自転車の悦楽』(マガジンハウス)、『自転車の安全鉄則』(朝日新聞出版)など多数。
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(自転車ツーキニスト 疋田 智)
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