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「国民の声」はネットでわかる? SNS上で見ている"世間"を疑うチカラの必要性

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「迷惑行為はやめましょう!」

赤い文字で大きくそう書かれたポスターには、若い男女が大声で話したり、ドア付近に座ったりするイラストが描かれている。

2時間かけて実家から大学に通っていた女子大生の私は、痴漢にあったり変な人に絡まれたりしないように両足を閉じて小さく身を狭めながら、電車の中のポスターを見るたびため息をついていた。

どうして、こういったイラストはいつも、若者が悪者になっているんだろう。

Getty Images

勿論、こういった決めつけはポスターに限ったことじゃない。世の中には、"当たり前"の顔をした決めつけが溢れている。イラストの中で女性が着ている服はいつもピンクだとか、ドラマに出てくる怖いおじさんは何故か関西弁、とか。

決めつけが目に入り続けると、それは新たな決めつけを生む。私たちは知らないうちに、目に映るものに、考えを操作されているのだ。

ソーシャルメディアには、"世間の声"が反映されている?

2000年代前半からソーシャルメディアに触れている人間からすると、最近は本当に多くの人がインターネット上でカジュアルに発信するようになったと思う。そしてそれに伴って、ソーシャルメディアはまるで"世間"のように扱われるようになってきている。

例えば、今世の中で流行っているトレンドとして、「SNSでバズった」投稿が扱われる。世間の声として、SNS上の声がテレビで紹介される。最近は、ソーシャル上での批判を受けて、芸能人がテレビに出られなくなったり、政治家が辞職したりする。

"ソーシャルメディアを開けば、世間の声が聞こえる。"

そんな風にメディアで扱われていたり、世の中が動いたりすると違和感を覚える。私たちが見ているソーシャルメディアのタイムラインこそが、本当の"世間"なのだろうか?

総務省情報通信政策研究所が2021年8月に発表した「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、例えばTwitterの利用者は全世代の42.3%で、10代は67.6%、20代は79.8%、30代は48.4%だ。その中でもアクティブに使っているであろう層はさらに限られるだろう。"世間"のように見えているソーシャルメディアは思ったよりも狭い。

そしてさらに、私たちは趣味嗜好に合わせてタイムラインをカスタマイズしているのだから、プレーンな世の中の見え方とは大きく変わった景色が見えるはずだ。

最近よく聞くのが、選挙が行われる際に「周りのみんな全員選挙に行ってるようにSNSでは見えたのに、実際そんなに投票率があがっていなかった」ということだ。

私たちは気づけば、ソーシャルメディアのタイムラインを"世間"だと思ってしまうし、メディアでは取り上げられない真実がそこにあると思ってしまう。

しかし実際は、Twitterで"発信"し、さらに拡散されるような言葉で雄弁に語ることができる人というのはかなり限られている。私たちが見ている景色は、私たちが見たい景色でしかないのだ。

ソーシャルメディアは、見たいものを見られる場所。そして見せたいものを見せられる場所。

さらに、ソーシャルメディアのタイムラインが"世間"だと思われ、世の中への影響力が高くなればなるほど怖くなることがある。理由は、ソーシャルメディアほど、見せるものを操作しやすいものは無いと思うからだ。

例えば興味関心を調整して、限られた人物だけに特定の思想に誘い込むような広告を見せることは今や難しくない。そしてその脅威が大きく話題になったのが、米国大統領選挙だ。特定の思想の支持を促すようなインターネット広告が広く流通し、人々の思想に影響した可能性があるとされ、広告が流通していたソーシャルメディアは批判を集めた。

インターネット広告のターゲッティング精度は高く、ビジネスにおいては、大きく売上に貢献する素晴らしい武器である。しかし、それが政治に利用されると、暴力的な影響力を得る。興味のある人に、興味のありそうな形で、特定の考えを促すような広告を表示させることができるからだ。そして、一度でもその広告に触れて"興味がある"と認識されると、永遠にその広告が表示されるようになり、抜け出せなくなる。

Getty Images

さらに身近な例を言えば、新型コロナウイルスに対しての考え方に関しても、自分の思想にあった記事を読むだろうし、自分の納得がいく理論を語っている人の声を拾うだろうし、拾った声を叫んでいる人もまた、自分と似通った意見を持った人の声をRTなどで拡散していく。そうして、自分の周りを自分と似通った人で固めて「みんながああ言っている」と思い込むことができるのだ。

インターネットは、私たちが見せたいものを見せてくれる。クリックしたモノを学習して、どんどん興味に沿った物を見せてくれる。私たちは、インターネットを通して、見たいものを見ているということを忘れてはいけない。

そしてさらに言えば、その理論を活用して、"興味に沿ったもの"として、私たちに特定の景色を見せようとする人たちもいるということも忘れてはならない。

「ネットで世間の声を聞け」「インターネットにもっと思いを反映させよう」

そんな声を聞くたびに、「こんなにハックしやすいものを"世間"にしていいのだろうか」と怖くなる。私がどうしても世の中の思想を変えたくて、潤沢な資金があったなら、長い期間をかけて、タイムラインをハックしていくことを考えるだろうからだ。

私たちは、ソーシャルメディアのある世界に生きて10年以上経つけれども、まだまだ大量の情報を適切に思考しながら完璧に処理できるほど賢くない。

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