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理想形にまた一歩近づいた箱根路。

今年も正月のイベントとして粛々と行われた第98回箱根駅伝。


Number(ナンバー)1042号[雑誌]
文藝春秋
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応援自粛要請がかかっていたにもかかわらず、沿道で声を挙げて応援する人たちが目立った、とか、青山学院大学があまりに強すぎて、途中から2位以下の争いにしか目が向かなくなってしまった、とか、例年のごとくいちゃもんを付けようと思えばいくらでも付けられるし、自分自身、往路は寝坊して起きた時にはもう4区、復路は一応最初から見ていたものの、途中からは完全に”ながら視聴”と、決して熱心なファンとは言えないような接し方しかしていない。

ただ、そんな限られた接し方の中でも、道中の攻防に目を奪われるシーンは度々あったし、昨年に続いて、それぞれの「チーム」が策を尽くしてしのぎを削り合う場になった、という点では、また一歩理想的な大会に近づいたんじゃないかな、と感じたところは多かった。

シューズが進化した影響も多少はあるのかもしれないが、上位を狙うチームは軒並み10000㎡28分台の選手を揃え、かつては珍しくなかった30分台の選手がエントリーされているのを見る機会もほとんどなくなった。

以前なら28分台の持ちタイムの選手が復路にエントリーされていたら、間違いなく”主役級”の活躍を期待され、実際それに応えた選手も多かったのだが、今や、どの区間にもそのレベルの選手たちは配置されていて実力が拮抗している。だから、実績のある選手でも調子を落とせばエントリーから外されるし、故障を抱えたまま走れば、持ちタイム27分台の選手でも区間2ケタ順位に突き落とされることになる。

以前に比べると傑出したスター選手が目立たない分、何を切り口に楽しむか、という見る側のセンスが試されているのは確かだが、往路に関しては、かつての花形だった1区、2区の出来不出来にかかわらず、どこからでも逆転劇を演じられる可能性がある、また復路に関しても、実力拮抗で最後まで高いレベルでシード権争いが繰り広げられる、その結果として、各校の監督が立てた作戦、選手配置の妙がよりクローズアップされることになる、という点で、コンテンツとしてはこれまでになく成熟してきたなぁ、というのが率直な印象である。

もちろん、今年の大会に関して言えば、「古豪たちの復活」により興味を惹かれたところもある。

特に、1980年代後半からずっと見続けてきた者としては、かつての地元・順天堂大学の復活劇はこれ以上ないくらい嬉しいことだった。

復路に入るなり、牧瀬圭斗主将の区間賞の力走で3位に浮上、さらに並走した駒沢大の選手たちに、持ちタイムでは後れを取っていたにもかかわらず、執念の走りで食らいつき、逆転した7区(西澤侑真選手)、8区(津田将希選手、区間賞)の走りは、後世まで語り継いで良いくらいだろう。

そして、より驚かせてくれたのが名門・中央大学

昨年は「スーパー1年生」と期待されながら区間15位に終わっていた吉居大和選手が1区で区間新という絶好のスタートを切り、その後も区間順位の浮き沈みはありつつも、大ブレーキとは無縁で往路を6位で終える。

復路では、一時7位まで後退し、今年も際どいシード争いか・・・という雰囲気になったものの、その後8区、9区で再び巻き返しトップ3をキープ。

最後の10区でも途中までは井上大輝主将が駒沢大と激しく競り合い、21年ぶりのトップ3も夢ではない、と思わせてくれるような展開だった*1

順天堂大学は長門俊介監督、中央大学は藤原正和監督、と00年代を沸かせたOBがチームを率いている、というのも粋だなぁ、と思うし、終わってみれば、時代の先頭に立つ青山学院大学を筆頭に、躍進著しい東京国際大・創価大、00年代に一世を風靡した駒沢大、東洋大といったチームに混じって、順天堂大、中央大、という名前が再び戻ってきたことで、「第100回」に向けた期待感*2もより高まってくるような気がする。

「名門復活」とはいっても、早稲田大学はシード落ちになってしまったし、日体大も早々と繰り上げスタートの体たらく。日大なんて出場すらしてないじゃないか・・・等々、どのチームに思い入れがあるかによってまた見方は変わってくるのかもしれないが、「アナウンサーが淡々と実況するだけで最初から最後まで盛り上がる」そんな大会の完成形がまもなく見られると信じて、次の正月まで(長い・・・)楽しみに待つことにしたい。

*1:最後は力尽きて6位に後退したものの、堂々のシード権奪回である。

*2:中大の藤原監督が、「記念すべき第100回(2年後)に優勝を狙う」と宣言していた、という話も印象的だった。

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