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「世界中の善意がアフリカの産業を殺している」古着リサイクルに秘められた不都合な真実

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不要になってリサイクルに出された洋服はどこへいくのか。日本からは毎年24万トンの古着が輸出され、その多くは最終的にアフリカにたどりつく。フリーランスで国際協力に携わる原貫太氏は「私が活動するウガンダでは、国外から輸入された古着が山積みで安売りされている。大量に届く古着がアフリカの経済的自立を阻む原因になっている」という――。

※本稿は、原貫太『あなたとSDGsをつなぐ「世界を正しく見る」習慣』(KADOKAWA)の一部を再編集したものです。

クローゼット内の衣類
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/stephenkirsh

「リサイクル」で回収された古着はどこにいくのか

タンスの中にずっと眠っていた服。サイズが合わなくなった子ども服。穴が開き、糸がほつれてしまった服。そんな古着を自治体の回収事業に出した経験のある方は多いでしょう。最近は大手アパレルメーカーの中にも、消費者が着なくなった古着を店頭で回収する企業が出てきました。

けれど、リサイクルという名目で回収された私たちの古着は、その後どこに行っているのでしょうか?

実は先進国で集められた大量の古着は、その多くが国外に輸出されているのです。国連の統計によれば、2016年にはアメリカから75万トン、ドイツから50万トン、イギリスから35万トン、そして日本からは24万トンの古着が海外に送られています。

男性用半袖Tシャツ1枚当たりの重さが約200グラム。つまり単純計算でも1年間にTシャツ約12億枚分、一人当たりなら約10着分の古着が日本から海外に輸出されているということです。

転売や寄付で毎年大量の古着がアフリカへたどり着く

「海外」とはいっても、他の先進国ではすでに古着が余っています。ファストファッションが浸透し、大量生産・大量消費が当たり前だからです。そのため、先進国で回収された古着は途上国、そしてその多くは最終的にアフリカへ辿り着くのです。

このような古着の輸出は先進国では一大産業になっていますが、転売という形だけではありません。「寄付」という名目で、アフリカに送られている場合もあります。

アメリカやヨーロッパ、さらには日本でも、自治体や企業、チャリティ団体が古着を回収し、アフリカの貧しい人たちに寄付をする。そんな活動を耳にしたことがある方もいるのではないでしょうか。

古着の「最終処分場」となるアフリカの実態

先進国の人たちは不要になった古着を処分できて、アフリカの人たちは安価、もしくはタダで古着を手に入れることができる。互いに助かっているのだから、ウィンウィンじゃないか。そのように感じるかもしれません。

もちろん古着の輸出が現地にメリットをもたらすこともあります。例えば難民キャンプなど物資が圧倒的に足りていない地域であれば、先進国から輸入された古着を手に入れることができれば、一時的には助かる人も多いはずです。

しかし、「アフリカでは服が足りていないのだから、先進国から古着を送ってあげれば現地の人たちが助かる」というのは、必ずしも正解とは呼べないようです。

ケニアやウガンダ、タンザニアなどが構成している東アフリカ共同体では、古着や靴の輸入額は1億5100万ドル以上(2015年、日本円に換算すると約170憶円)、ケニアだけでも毎年約10万トンの古着が輸入されています。

技術面で進んでいる先進国側でさえも、大量に余っている古着を処理しきれていないわけですから、ゴミ処分場などの施設が不十分なアフリカの国々で、大量の古着を処理することは到底できません。

実際に私が活動するウガンダでも、街中の至る所で先進国から輸入されたと思われる古着が山積みになって売られていますし、処理しきれない大量の古着が現地の環境問題に繫がっているという話も耳にします。他にも、西アフリカのガーナでは毎週1500万着の古着が輸入されていますが、近年はファストファッションなど低品質な古着が占める割合が増えており、売れなかったものは最終的に埋立地へ流れ着いています。ガーナに輸入されている衣服の約4割が埋め立て処分されていると考えられているのです。

失敗に終わったアフリカの輸入禁止の試み

このような状況を受けて、アフリカの国々の中には、自国の繊維産業を保護するためにも、先進国からの古着輸入を禁止しようとする国も出てきました。東アフリカ共同体は2016年、地域内の衣料品産業や繊維産業を保護・成長させるために、国外から輸入される古着の関税を段階的に引き上げ、2019年までに古着の輸入を禁止することで合意していました。

これに対して「自由貿易協定に反する」と猛反発したのが、古着輸出大国のアメリカです。

アメリカにとっては、自国で行き場を失った古着の「最終処分場」を失うわけにはいきません。アメリカの古着業界団体は「アメリカ人が捨てた衣服は海外で販売されなければ、アメリカ国内の埋め立て地に行きつき、環境破壊を引き起こすことになる」と警鐘を鳴らしました。

また、一つの産業と化している古着の輸出ができなくなれば、アメリカ国内で多くの失業者が出る可能性があります。同団体は、衣類の仕分けや梱包など、4万人のアメリカ人の雇用が危険にさらされると訴えました。

先進国にとって輸出先の存在はありがたい

その結果、アメリカは東アフリカ共同体に対して、関税を免除することでアメリカへの輸出を支援し、アフリカの経済成長に繋げる「アフリカ成長機会法」を停止することを示唆。つまりは超大国アメリカに貿易制裁のプレッシャーをかけられる形で、アフリカの国々による古着の輸入禁止の試みは失敗に終わりました。

アフリカの人たちの「先進国依存から脱却したい」という思いは頓挫し、今なおアフリカは古着の「最終処分場」にさせられたままなのです。

先進国にとって、アフリカが古着の輸出先になってくれるのは、とてもありがたいことです。本来は自国で処理するべきコストを削減できるうえに、古着の輸出自体が一つの産業となり、貿易収支や雇用を増やすことができるのですから。

ましてや「アフリカの貧しい人たちを助けよう」といったチャリティの名目で古着を回収すれば、その企業や団体のイメージアップにも繫がるかもしれません。

しかし、アフリカをはじめとした途上国は、先進国から送られてくる大量の古着によって地元の産業が破壊される問題に悩まされてきました。

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