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減り続ける選挙報道、2022年の参院選ではどう変わるべきか?

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大きな課題は政策評価や実績評価の少なさ

また、報道の質に関して、たかまつ氏は減点報道から加点報道にしていかないといけないと主張する。

「量に関して、ただ量が増えればいいかというとそうではなくて、質も上げていかないといけない。今の報道で量が増えても、選挙に行きたいと思うかは疑問。あと届いていない、というのもある。こういうことってなんでやってないのっていう意見がツイッターでバズったりしていますが、新聞報道はやっている場合も多い。

内容としては、普段からやることも大事。選挙の期間中にだけ報道するのではなくて、普段からそういうコーナーをもっと増やしていかないといけない。

あとは、政治家は敵ではない。もちろん権力を監視するというのも必要ですが、何でもかんでも問い詰めればいいのかというと、そうではなくて、私たちの代表者であって、政策を実現してくれる人でもあるので、減点報道から加点報道にしていかないといけない。

選挙期間中に、自分の候補者を選ぶときに、マニフェストを読み比べよう、街頭演説聞きに行こう、公開討論会を見たりしようと言っても、有権者からするとかなりハードルが高い。国会でその人がどういう活動をしていたのか、質問主意書を確認してどういう質問をしているのか、そういうのを自分で知るのは非現実的。本当にその候補者が、何をやってきたのか、もっと手軽に知る。それは大手マスコミが人数がたくさんいるし、できることだと思うので、何を言っているのかじゃなくて、何をやってきたのか、というのももっと見える化しないといけないんじゃないかなと思っています。

あとは争点を作るということ。今は政治部の記者がすごい多くて、政局についての質問が多かったりして、例えば教育政策の質問とかがあまり出てこない。もっと現場からの課題をぶつけていく。社会部の記者は普段からそうしたことをしていると思いますが、そうした人たちは政治家にアプローチする機会が少ない。そういうメディアの構造上の問題もありますが、もっと争点を作っていくようにする。普段社会問題については各局報道していると思いますが、そうした問題が政策で解決できることがある、制度で苦しんでいる人がいる、ということまでセットで伝えるというのを、もっとやっていく必要があると思います。」(たかまつ氏)

「そうした問題意識に対して私がやったのは、室橋さんにもインタビューしましたが、この数年間で頑張った議員さんって誰なんだろう、各政党どういう若者政策やってきたんだろう、というのを主要6政党で評価した。マイナスとプラスと頑張った議員さんを紹介した。そして実際に、頑張った議員さんに、なぜそれができたのかを深く取材して、YouTubeでアップしました。あとは、各政党の党首にあたるというのをやりました。他にも争点の評価や1分でわかる政党の選び方なども行いました。その中で、一番手応えを感じたのは、政党の党首のインタビューと室橋さんへのインタビューはかなり見て頂きました。

これってマスコミの超初心だと思っていて、やってきたことを振り返る、政治家に直接あたる。ただそうしたことをしているメディアが意外と少ない。だからそうしたものが読まれたんじゃないかと思っています。」(たかまつ氏)

2021年衆議院議員選挙特設サイト(笑下村塾)

衆院選、若者目線で選ぶなら…? 主要6政党を室橋祐貴さんが分析(withnews)

本来、有権者が知りたいのは、まさに各議員が具体的にどういうことをやってきたのか、掲げている公約は本当に実現可能なのか、実現したらどういう影響があるのかといった部分だと思うが、現状の日本においてそうした報道は非常に少ない。

今回、NHKや日本テレビを中心に、ネットと連携し、候補者アンケートを自分で見てもらう、という試みも行われた。

放送の枠が限られている以上、そうした情報量の多いコンテンツはネットに上げて、各自で見てもらうというのは有効な取り組みだと思う一方で、そこに載っているのは、アンケートや、公約の説明(テレビ東京は各党党首クラスにインタビューしていたが基本的にはキャスターとの一問一答)にとどまる。

そこからさらに一歩踏み込んで、各政党/各候補者の実績や、公約の評価を行っているケースは非常に少ない。

ただこれは政治的中立性の問題に加え、きちんと各党に目を配り、ある程度公平な立場で評価できる人は非常に少ないというのも課題としては存在する。

「(政策の検証は)正直言うと、非常に難しい。これまでの政権の評価を誰がどのようにやるのかが肝になるわけですが、それをやるとクレームがきかねない。第二次安倍政権の前までは専門家、経済学者や憲法学者が出ていたんですが、それが出なくなってしまった。」(水島氏)

「また政治部の人たちは、誰と誰がどのような関係にあって、どういう発言をしているのかといった裏情報が大好き。男性のおじさん達が政治を握ってきたし、それを取材してきた記者もおじさん達に同調しながら、政局話が大好きで、それが報道の中心になってきた。日本のメディアは元々政策報道が弱かったのが、第二次安倍政権以降、ちょっと触れると抗議を受ける、色んな圧力を受けるという構造が顕著になってしまったがゆえに、メディアがかなり自粛してしまっている。」(水島氏)

「政策評価が難しい理由として、評価できる人が少ないというのはあると思います。今回、室橋さんの他に、若者政策を主要6政党で比較できそうな人がいるか考えた時に、全然名前が上がってこなかった。政府が何をしているかウォッチしている人はいっぱいいると思いますが、その間に他の5政党なり少数政党がどういう動きをしたかを、全体観を持って語れる人がいるかというと厳しい。

あとは勇気がない。責任を持つ勇気がない。マスコミの中にもまともな人はいっぱいいますが、その人達は選挙報道は早く終わってほしいと思っている。選挙報道はどうせできないと諦めに近いモードに入っている。そんなリスクではないのに、過剰にリスクだと思ってしまっているというのはあると思います。」(たかまつ氏)

社会課題解決型のポジティブ・ジャーナリズム

減点報道から加点報道への移行という意味で、注目したいのが、社会課題の解決につながるような報道のあり方だ。

その象徴だったのが、今年「貧困ジャーナリズム大賞」も受賞した、「生理の貧困」を取り扱ったNHKの取材チームである。

今年2月に「#みんなの生理」のアンケート調査を取り上げると、一気に世の中の注目を集め、その後も海外の動向など様々な観点から報道し、政治的な動向も合わさって、わずか半年程度で政府の「女性版骨太の方針」(「女性活躍・男女共同参画の重点方針2021」)や、各自治体で予算がつけられ、各学校等で生理用品が配られ始めている。

NHK「生理の貧困」取材チームが「貧困ジャーナリズム大賞」を受賞

こうした社会問題から始まる報道は、ファクトに基づいているためクレームも来にくい、政治的中立性にあまり左右されない、という意味で、今後の可能性としては大きいのではないだろうか。

「若い人達への共感も非常にあった報道だったと思います。なぜNHKという巨大な組織で後押しするような報道ができたのかというと、女性を中心に問題意識を持った人達でチームを作って、これは女性の問題というよりも、社会の問題なんだ、という打ち出し方をして、生理の貧困があることでどんな損失があるのか、あるいは諸外国では生理の貧困に対してどんなことをしているのか、調べ上げて、男性キャスターにも感想を言ってもらったりした。放送だけじゃなくて、それをSNSやウェブ記事でも伝えるなど、かなりマルチな展開をした。それは一つの新しい報道の形として注目されるものだと思っています。

生理の貧困て大事なんですよ、と言われたら、自民党も立憲民主党もそれはダメとは言わない。ただ背景としては、報道の現場や現場に指示を出すメディアの組織における女性が圧倒的に少ない。メディア企業における女性の割合を上げる、半分ぐらいは女性がいるようにしていかないと、なかなかメインストリームになっていかないというように感じています。」(水島氏)

例えば、現状は1時間の枠で様々なテーマを取り扱い、薄く広く報道しているが、特定のトピックに絞り、政治家と専門家・当事者を交えて、解決策を深掘りしていく、というのは面白い取り組みのように思える。

関連記事:今後若者の投票率は右肩上がりになるのではないかという希望と懸念(室橋祐貴)

※Yahoo!ニュースからの転載

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