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  • 2021年12月27日 14:30 (配信日時 12月27日 06:01)

〝トランプ後遺症〟が続いた2021年と米中間選挙への22年 2021年回顧と2022年展望(米国政治) - 斎藤 彰 (ジャーナリスト、元読売新聞アメリカ総局長)

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 バイデン政権にとって2021年は、〝トランプ後遺症〟との悪戦苦闘の1年だった。だが、いまだそこから抜け出せないまま、来る年11月には試練の中間選挙が待ち受ける。「Happy New Year!」どころか、極めて厳しい新年となりそうだ。

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 〝トランプ後遺症〟とは、1月20日にスタートしたバイデン政権が、いまだに大衆層に人気の根強い偏狭なトランプ主義の抵抗にあい、思い通りに政策運営ができない状況をさす。「Post Trump Syndrome」(PTS)とも呼ぶべき症候群にほかならない。

 21年はまさに、バイデン大統領にとってこの「PTS」に振り回されてきた1年だった。

 具体的症状を挙げれば、

①今日もなお、トランプ氏本人が在野にありながら、前回選挙での敗北を根に持ち、ネットメディア通じ、現政権の打ち出す政策や構想を事あるごとに批判し続けている。

②最近の世論調査でも、全米共和党支持者のうち、70%近くがトランプ氏の主張に同調、次期大統領選挙への同氏再出馬を支持し、バイデン氏の存在を脅かしている。

③米議会とくに下院において、共和党議員の7割が、バイデン大統領を当選させた20年大統領選挙を否認、去る1月6日、連邦議会乱入・占拠事件で死傷者100数十人を出す惨事を招いた過激なトランプ支持グループの狂気じみた犯行を「正当」と認めている。

④ケブン・マッカーシー下院院内総務を筆頭とするこれら多数の共和党議員のほとんどが、バイデン政権がとりまとめた社会福祉充実、景気浮揚策などに終始反対し続けている――などがある。

コロナ対策でも立ちはだかるトランプ支持者

 さらにバイデン政権にとって悩ましいのは、いぜん全米国民にとって最大関心事となっているコロナ禍対策だ。

 これまで感染者総数5000万人、死者80万人以上という世界最悪事態を招いていたアメリカも、一時は小康に向かうかに見えたが、今また新種のオミクロン株の出現で第5波の深刻な蔓延が懸念され始めている。

 1日当たり感染者数も全米で約20万人と再び増え始めており、とくに中西部諸州では重症者収容施設の病床不足が深刻化してきた。

 このため政府としては、これまでのような爆発的再拡大に至る前の対応策として、新治療薬の早期開発と普及、ワクチンの第3回追加接種、重症者受け入れ施設の拡充などのほか、一般市民に対するマスク着用、外出自粛、ソーシャルディスタンス確保などの徹底を急ぐ方針だ。

 ところが、こうした呼びかけには、トランプ支持者たちが立ちはだかっている。

 その1例として最近、大きな話題となったのが、南部オクラホマ州軍のトーマス・マンチーノ司令官の行動だった。同司令官は去る11月17日、オースティン国防長官が州兵を含む全軍兵士向けに発令したワクチン接種命令を無視、トランプ支持者であるケビン・スティット共和党州知事の意を受け「ワクチン接種の必要なし」との独自司令を州兵向けに伝達した。その理由として、「州兵は州法規定により州知事の指示を最優先する義務があるから」と説明した。

 このほか、トランプ支持者の多い同じ南部の他州でも、大統領行政命令によるワクチン接種やマスク着用義務付けに対する造反の動きが目立っており、「個人の自由か公共の安寧か」をめぐる法廷闘争では、連邦政府敗訴のケースもいくつか報じられている。

「内なる敵」にも振り回され続ける

 バイデン氏の前にはもうひとつ、高いハードルが立ちはだかる。同じ民主党ながら、ホワイトハウスの諸政策にことあるごとに難クセをつけ続ける〝獅子身中(しししんちゅう)の虫〟ジョー・マンチン上院議員(ウェストバージニア州)の存在だ。

 マンチン氏については、すでに当ウェブサイト・コラム『Washington Files』(「バイデンが最も恐れる“内なる敵”ジョー・マンチン」)でも詳述したが、政権発足当初から上院での法案審議のたびごとに、その動向が全米マスコミで脚光を集めてきた。

 上院では現在、民主、共和両党ともに50議席と勢力が拮抗、与党議員が1人だけ抜けても、法案成立が困難になるきわどい状況下に置かれている。このため、重要法案審議の際には、バイデン大統領個人も幾度となく、マンチン氏と電話のみならず直接対談、自宅へのディナー招待などを通じ、キャスティング・ボートを握る同氏の支持取り付けに追われる状況が続いた。

 結局、政権発足1年目になんとか成立にこぎつけたインフラ投資関連法も、財政赤字拡大を懸念するマンチン議員との取引の結果、当初の3兆㌦から1兆2000億㌦程度にまでバッサリ削減となり、結果的に社会的インパクトの欠けるものとなった。

 さらに、気候変動対策、児童・社会福祉充実計画などを盛り込んだ3兆5000㌦規模の歳出法案は、同議員の要求により議会審議で1兆8500億㌦まで削られたあげく、11月末までにようやく下院を通過した。だが、上院では再び、同議員がなお内容に注文をつけたため、成立のめどが立たないまま、審議は新年持越しの事態となっている。

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