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わが子は3人中2人が発達障害。学び育つなかで見つけたコツ

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 「子育てするうえで大事なのは、親自身も人間としての幸福感を持つこと」と語るのは、千葉県在住の熊谷亜希子さん。親子がともに豊かになれる教育を求め、たどり着いたのが家庭を拠点にした「ホームエデュケーション」だった。今回はホームエデュケーションを実践するなかで得た気づきや子育てのヒントについてお話をうかがった(写真は熊谷亜希子さんとお子さん)。

* * *

――ホームエデュケーションを始められたきっかけを教えてください。

 一番のきっかけは、第3子の出産です。それまでは第1子を幼稚園まで送り迎えをしていたのですが、第2子と赤ちゃんの面倒を見ながら送り迎えをするのがキツくなってしまって。しだいに、「それならいっそのこと、おうちをベースに子育てがしたい」と考えるようになりました。そのうえで私がホームエデュケーションなどのオルタナティブ教育に興味を持つようになった原体験は、2つあります。

 1つ目は、20代のころの体験です。私は第1子を出産するまで採用コンサルタントとして働いていたのですが、自分が受けてきた教育と現実の社会に大きなギャップを感じていました。というのも、いろいろな業種・業界の人事の方や社長と話をする機会があったのですが、どの方も「勉強できる人間じゃなくて、仕事ができる人間がほしいんだよね」と口をそろえておっしゃるんです。私は学歴主義のもとで育てられてきたけど、これからの時代に必要なのは、偏差値や学歴を追う教育ではない、とそのとき強く感じました。

2つ目は、30歳のときのモンテッソーリ教育(※)との出会いでした。モンテッソーリ教育は、「子どもには自分で自分を教育する、育てる力がある」という「自己教育力」の考えを根底にすえた教育法です。大人が一方的に知識を注ぎ込むやり方ではなく、子どもの環境を整えてあげることで、その子の生まれ持った可能性を伸ばす方針に、「すごくいいなぁ」と感銘を受けたんですね。

 実際に子育てをしていくなかで、わが子たちにどんな大人になってほしいかと考えたときに、「お金を稼ぐことを目的とした生き方ではなく、ひとりの人間として幸福を感じられる心を持ってほしいな」と思ったんです。そうした思いもあって、自分の教育研究も兼ねて、トライしてみようと、2011年からホームエデュケーションを始めました。また、同じ時期には「共育ステーション 地球の家」という小さなオルタナティブスクールの設立準備も始め、すこしずつ活動の輪を広げていきました。

学びのかたち、人それぞれ

――どのようにホームエデュケーションを実践されていますか?

 第1子は年に数回オルタナティブな学び場を体験しながら、公立中学校へ通っています。他方で第2子と第3子は発達の凸凹があるため、それぞれのペースで支援学級へ通いながら、ホームエデュケーションをする日々です。

 自宅では、モンテッソーリ教育の考えを参考にしながらすごしています。日常生活のなかで自立する力を学ぶことが、モンテッソーリ教育の大きな柱の1つなんですね。なので子どもたちには「仕事」として家事を割り振っていて、午前中は仕事と勉強、午後は自由時間にしています。

 このようにひとくちにホームエデュケーションといっても三者三様です。子どもたちそれぞれ、得意・不得意やすごし方もちがいますし、子どもの意志や個性に合ったかたちで学んでいってくれればと思っているので、できるだけその子に寄り添った方法を模索してきました。

 今でこそ、それぞれに合った方法を見つけましたが、最初のころはたいへんでした。たとえば、「朝早くに起きて勉強しようね」と決めていたのですが、まったくうまくいかなくて(笑)。目覚ましをかけるなど、なんとか起こそうと工夫したんですけど、それでも全然ダメだったんです。

 一体どうすればと悩んだこともありましたが、いろんな教育の本を読むうちに、発達に凸凹があると睡眠リズムが不規則な場合もあることがわかったんですね。子どもの努力不足なのではなく、計画自体がよくなかったのだと、そこで気づいたんです。今のやり方にたどり着くまでに、何度もスケジュールを組み直し、試行錯誤を重ねました。

熊谷さんが実践されたスケジュール

――熊谷さんご自身が教育に関心があったとはいえ、ホームエデュケーションを選ぶことに迷いはなかったんですか? 

 第1子のときは、迷いはなかったです。むしろ気持ちが揺らいだのは、第2子のときでした。学校との狭間で、子育てのしかたに悩んだ時期があったんです。

 第2子が、小学校の就学時健康診断へ行ったときのことです。それまでも第2子にはすごく凸凹があるのを感じていましたし、何より母子分離が難しい子でした。そのため、事前に学校に連絡して母親同伴のもと健診を行なったんです。

 しかし、最後の検査はどうしても子ども1人で受けなければいけませんでした。本人はかたくなに拒んだのですが、検査員に無理やり引き離され、教室へ連れて行かれてしまったんです。この経験が第2子にとってはトラウマとなり、それ以来「学校は怖いところ」というイメージがついてしまいました。

 ほどなくして発達障害の診断がつき、人一倍敏感な子(HSC)であることもわかったので、支援学級に入学しました。でも、本人の不安はつのる一方。「学校はイヤだ」と玄関で毎日大泣きの状態でした。しばらくのあいだは私も1日中付き添って登校を続けましたが、みるみるうちに本人の顔は能面のように無表情になり、全身がこわばるようになったんです。

 このころは学校からの善意の登校促しもあって、私自身としても、プレッシャーを感じていました。わが子との向き合い方も手探りの状態だったので、「はたしてこのままホームエデュケーションをしてよいのだろうか。プロの先生にお任せしたほうがよいのかもしれない」と悩みました。

 でも、あるときわが子の表情を見ていて、気づいたんです。あれだけ学校でつらそうだったのに、自分が安心できる場所ですごしているとニコニコとよい表情で笑っていることに。その姿を見たときにハっとして。「あぁ、私は教育のプロじゃないけど、この子のプロになればいい」と、腹をくくれたんです。その後は学校の先生にもお伝えして、ホームエデュケーションを続けながら子どもと深く関わることを決意しました。

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