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「ボロ家が欲しい」若者たち 不動産投資に変化のきざし

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大学受験に二度失敗し、将来を考えて図書館で本を読みまくり、20歳で不動産投資家になることを決めた加藤さん。大工修業をしながら22歳で物件を購入、2年間自分で住みながら手を入れて、24歳で完成した2階を賃貸に出したーー。
派遣社員だった女性は24歳のときにコツコツ貯めた貯金をもとに不動産投資を始めた。派遣切りに遭うなど紆余曲折があったが節約を続け、DIYで地道に資産を増やし、12年後には収益物件3棟の大家さんになったーー。

2021年8月と11月、不動産投資物件ポータル「健美家」で、こんな若い投資家の物語を紹介する記事がヒットした。

この2人に共通するのは若い人が少ない元手で不動産を購入、自分で手を動かして改装しながら資産を作っていったという点である。

かつての不動産投資は、経済的に多少余裕のできた層が不動産を購入し、管理を誰かに丸投げするものだったことから考えると、手法その他も含め、あきらかに変わってきているのである。何が、どう変わってきたのだろうか。

「戸建て」購入に目を向ける20代、30代

住宅として貸すことを目的とする不動産投資では区分所有のマンション、一棟もののアパート・マンション、戸建てとさまざまな建物が対象になるが「2014年くらいから戸建てを買う流れが目に付くようになってきた」と健美家の倉内敬一氏は語る。

さらにその傾向はこの1年で強まったという。健美家が毎年4月と10月に行う「不動産投資に関する意識調査」で、最も探されている物件種別は「一棟もののアパート」だ。これは調査を始めた時点から変わっていない。ところが直近の2021年10月調査では、「実際に何を買ったか」という問いに対して戸建てがトップに躍り出たのである。

不動産投資に関する意識調査(第16回)(不動産投資物件ポータル「健美家」)

「例えば300万円など安く戸建てを買って手を入れて貸すというようなやり方は、2005年~2010年頃に北海道で出始めており、地方都市では決して新しいものではありませんでした。

一方、ここ数年で空き家問題が話題になり、空き家を安く買って自分で改装して賃貸するという手法が広く知られるようになりました。

写真AC

さらに、首都圏では戸建てを除く他の物件価格が上昇、非常に利回りが低く十分な収益を確保しにくいという状況があり徐々に一都三県でもこうした手法が広がってきたというのが今の状況です」と倉内氏は指摘する。

地方であれば場所によっては50万円、100万円で買えることもありローンを組まずにキャッシュで買える価格帯の物件も。300万円で買えれば家賃5万円でも20%で回せるなど、首都圏では想像できないほど高利回りだ。さらに地方ではマンション、アパートよりも戸建ての数が多いため借り手の心理的なハードルも低い。そのため、若い、資金の少ない人でも手軽に戸建て物件への投資に手を出せるのだ。

結婚前から不動産投資を始める人も…その背景は

10数年前の不動産投資は、30代の親が子どもを持ち将来を考え始めた結果として、あるいはある程度の年齢になって体を壊したことで老後への不安を抱いた結果として余剰資金を元手に始めるものだった。しかし、最近は20代後半の結婚前から始める人も増えている。経済成長が期待できない時代、自由に生きるためには手堅い何かが必要と感じている人が多いのだろう。

何千万円もの資金が必要だった時代に比べると「誰にでも買えるようになり、今は不動産の民主化の時代」と倉内氏は語る。「キャッシュで買える額ならそれほどリスクはなく、仲間と集まってDIYするのはゲーム感覚で楽しい。投資家が集まる懇親会で聞くと『とりあえず買ってみました』という人もいます」。

地方都市ではかつてより、格段に不動産投資に手が出しやすくなっているが、残念ながら首都圏の場合は50万円、100万円などと安価に買えることはほとんどない。だが、冒頭の2人はそれぞれ650万円、1020万円で初めての物件を購入しており、探し方によって物件はあるもののそれをきちんと収益を生む物件にできるかは別問題だ。

「常識的」なアドバイスが役に立たないこともある時代

どうしたら収益を生む物件を持つ不動産投資家になれるのだろうかーー。成功する不動産投資家には、ある共通点があるようだ。

「みんなと同じものを作ったら家賃を高く設定できない。周りと同じことをしようというのが前の世代だったとしたら、今の20代、30代には自分のセンスを信じる、周りに合わせようとしない人が出てきている」

そう語るのは20代~30代前半の不動産投資家、スタートアップなどとの付き合いが多い株式会社オリエンタル・サンの山田武男氏だ。

「言い換えれば、20代~30代前半で不動産投資、起業に踏み切って成功させている人は他人の言うことを聞いてもうまくいかない、自分しか信じないと考える人が多いのではないか」(山田氏)。

現に加藤氏は、ジブリ好きからジブリ映画に出てくるような部屋を目指した不動産を買ったことを竣工するまでずっと誰にも言わなかったという。

加藤氏が手がけたトトノン山手外観(写真中央)。手前の細い道しか接道しておらず、再建築は不可

「YouTubeを見て施工のやり方を学んだとか、給湯器やユニットバスなどの設備類をヤフオク!、メルカリで調達したとか、黒い内装にオレンジの建具、水色のトイレなど個性的なカラーリングその他、常識的な不動産会社に相談したら何と言われるか、分かっていたからでしょう。実際、できあがって不動産会社に見せたら不評。『こんな部屋で借り手がつくのか』と言われたそうです」(山田氏)。

左上から右回りに黒にオレンジの建具がこれまでにない雰囲気のキッチン、個性的な照明器具がアクセントの入口、カーテンなどもオレンジで統一された室内、トイレははっとするような水色

ところがプロの「常識的な予測」は見事に外れる。募集開始以降問い合わせがすぐに15件あった。内見が4件あり、そのうち一目惚れしたという女性が入居するまでの期間は1カ月ほど。あっという間に決まったと言ってよい。

「ジブリ風の家が100軒、200軒あったら決まらないかもしれませんが、それほどの数でなければ問題ありません。むしろ小規模であればあるほどやりたいことをやったほうがニーズの多様化した時代には選ばれる。加藤さんの手がけた物件も、最寄り駅までに坂道があるなど不利な点があるものの『他にない個性があったから決まった』という好例でしょう」(山田氏)。

この話に山田氏は東京五輪の自転車競技・女子ロードレースで優勝したアンナ・キーセンフォーファー(オーストリア)が重なるという。トレーナーの付いていないアマチュアがチームで風を避けながら走るというロードレースのセオリーを無視して、でもぶっちぎりで金メダルを獲得という話だ。彼女もまた、自分のことは自分が一番分かっており、すべてを自分で管理した。「常識的じゃないからダメ」などと彼女のやり方に口を挟む人がいなかったからこそ、自分にベストなやり方で実力を発揮し金メダルを獲得できたのだろう。

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