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「温家宝・中国首相の汚職」

中国共産党の習近平総書記は、党幹部の汚職摘発を本格化するらしい。
2月23日の日経新聞によると、疑惑の党幹部4000人の中国脱出を禁止し、内部調査を開始するという。

「隗(かい)より始めよ」との言葉がある。隗とは「かしら」、「頭領」のことで、汚職摘発調査は共産党トップから始めなければ中国人民は納得しないであろう。この3月まで中国の隗であった温家宝首相の疑惑について、習近平総書記は厳しい調査を行えるのか。けだし見物(みもの)である。

温厚な雰囲気で、各地の災害現場には真っ先に駆け付けて激励する温家宝首相は「温オジサン」と言われ、国民からも親しまれてきた。

この温家宝ですら汚職まみれであったことが判明した。

我が国の新聞は簡単に報道しただけで終わってしまったが、10月25日付のニューヨーク・タイムズ(電子版)は、David Barbozaの長文の調査報道を掲載した。

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この件に関する報道を比較してみると、如何に日本のメディアの質が劣化しているかがよくわかる。岡崎研究所の鈴木邦子主任研究員がニューヨーク・タイムズの概要を紹介しているので、引用させて頂いた。

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昨年の演説で、温家宝は、自分は貧しい家庭で幼少期を過ごしたと述べたが、今や温家宝の90歳の母親は、貧しいどころか、大富豪となった。既に5年前、中国の大手金融企業に1億2千万ドル投資している。

温家宝の母親がどのように蓄財したか等の詳細は明らかではないが、それが起きたのが、温家宝が1998年に副首相に、そして5年後には首相に就任してからだと言うことだ。その間、温家宝の一族、妻、息子、娘、弟、義弟は、皆、大富豪となった。少なくとも、27億ドルの資産がある。

中国首脳一族のべンチャー企業の場合は、チャイナ・モバイルなどの国有企業やアジアの大財閥から支援を受けることが多い。温家宝一族は、銀行、宝石商、リゾート、電気通信、インフラ事業等の株保有を増やして行った。時には、海外の株を取得することもあった。また、北京五輪の「鳥の巣」の建設に係った企業や保険大手「平安保険」の株も含まれる。

中国企業は、温家宝の許可がないと株式市場に上場できない。また、温首相は、エネルギーや電気通信等の戦略分野への投資に関しても多大な影響力を有している。70歳の温首相が、政策や規制の決定過程でどのような役割を担っているかは分からないが、首相一族が、彼の決定から何らかの利益を得ようとしていたことは有る。

例えば、2003年のSARS発生後、温家宝が、医療廃棄物処理の規制強化を打ち出した際、温氏の弟の企業が、その事業に係る政府契約を3千万ドルで受注した。

中国指導部は、自分達の蓄財を必死に隠そうとする。6月にブルームバーグが、中国の次期主席になる予定の習近平副主席の親族が数億ドルの蓄財をしたと報じた際、中国政府は、ブルームバーグのサイトを中国国内で見られないようにブロックした。

温首相を20年以上も知る中国政府の関係者は、匿名で答えた。「中国の指導部は、皆、一族の汚職問題を抱えている。おそらく、今回は、温首相の敵陣が、意図的にリークしたのだろう。」

今回、ニューヨーク・タイムズ紙は、中国政府に、調査結果を提出し、コメントを求めたが、外交部は回答を拒否し、温家宝の一族も回答しなかった。

温家宝の妻は、宝石取引の権威であり、自立したビジネス・ウーマンであって、後に民営化された国営ダイアモンド会社の経営に携わってきた。彼女は、一族が、保険、技術及び不動産会社等に投資して、少額の株を10憶ドルの価値に高めるのを手助けした。

温家宝の息子は、自分が始めた技術系の会社を香港の大富豪に1千万ドルで売却し、中国で最大手の一つとなる民間証券会社を設立した。パートナーには、シンガポール政府も入っている。

温家宝の弟には、2億ドルの資産がある。それには排水処理やリサイクル事業が含まれる。

温家宝は、人気のある改革派とされ、国営メディアでは、「人民の首相」とか「温じいさん」とかあだ名が付けられ、自然災害等の危機の際に一般の人々の前に現れるので、親しまれている。温首相が、一族の蓄財をどれだけ知っていたかは定かではないが、2010年の文書によれば、当時、温首相は一族のビジネスを知っていたが、それについて喜んではいなかったそうだ。

温家宝の妻がお金持ちであることは、中国のエリート界では、周知のことだ。ただ、彼女の宝石ビジネスが飛躍的成功を収めたのは、夫が中国の指導部の一員となってからだ。

彼女は、中国の宝石ビジネスの中心的存在だ。特に、宝石取引の工業基準を設定したのは彼女である。中国市場にダイアモンドを輸出したいカルティエやデビアスの幹部も、この中国の「ダイアモンド女王」を訪れる。

温家宝夫人が運営する国営企業は、彼女の親戚や元同僚が経営するダイアモンド会社に投資した。また、1993年には、北京ダイアモンドという宝石の大手小売業の設立に携わったが、翌年には、夫人の弟と元同僚二人が、北京ダイアモンドの株80%を取得した。そして、北京ダイアモンドが、また別のダイアモンド会社に出資したが、その会社は、夫人の義弟、すなわち温首相の実弟が経営する。

更に、シノ・ダイアモンドというベンチャー企業が、夫人がトップを務める国営企業からの金融支援を受けて設立され、夫人のもう一人の弟が運営する国営企業と提携している。1999年、シノ・ダイアモンドは、ロシア及び南アフリカからダイアモンドを輸入することが合意され、上海証券市場に、5千万ドルで上場した。夫人の一族には、約800万ドルの純益となった。

1990年代後半には、温家宝一族のダイアモンド会社の株が売られ、より収益をあげるとされた不動産や金融に再投資された。

中国では、党指導部の子弟たちは、特別な地位、「小君主」にある。アイビー・リーグの大学で学位を取得し、VIP待遇を受け、株式を優遇価格で取得できる。そして、彼らは、国家が管理し、規制の多い中国市場で、やりたい事が出来る人達でもある。そして、最近では、温家宝の息子、40歳のウィンストン温ほど、目立つ者も少ない。

チャイナ・モバイルのような大手国営企業の設立には、彼が携わった。最近では、ウィンストン温は、ハリウッドと金融取引の話をしている。また、中国にエリート育成の全寮制の学校を設立したいとして、コネチカット州の校長を雇い、1憶5千万ドルを投じて私立の学校を北京郊外に設立しようとしている。

ウィンストン温及び彼の妻は、技術産業や電力会社等の株を保有し、北京の中心部にある首相公邸に住んでいる。

ウィンストン温は、米国でMBAを取得して帰国してから5年間に、3つの技術系の企業を設立したが、そのうち2つは、香港の実業家に売却した。彼が最初に手掛けたベンチャーは、インターネット・プロバイダーだが、2000年に2百万ドルの資金を投じて設立された。資金源は、一族や母親の元同僚、ダイアモンド貿易、そして香港の実業家等から集められた。そして、最初の顧客は、国営企業や温首相の一族が多くの株を保有する平安保険だった。

2005年、彼は、もっと大胆なことをした。証券会社を1憶ドルで設立したが、資金は、ソフトバンク・グループやシンガポール政府の投資ファンドから集めた。そして、バイオ・テクノロジー、ソーラー、風力等に投資を行ない、操業以来、4憶3千万ドルの配当を出している。そして今、この企業ニュー・ホライゾンは、25億ドル以上の資産を有す。

2010年、ニュー・ホライゾンは、上場2カ月前の薬品会社の株を9%取得した。香港証券取引所は、直前の株取得は違反になるので、株を返却するように指示した。ニュー・ホライゾンは、それでも、まだ4千650万ドルの売り上げ利益がある。ウィンストン温がニュー・ホライゾンでの日々の事業活動から手を引くことが公表されるや否や、彼は、中国衛星通信会社の社長になった。

温家宝一族の周りには、何人か億万長者がいる。彼らの支援があり、数百万ドルのベンチャーが可能になる。ベンチャー企業を設立しては、それが投資マシーンになる、というのが、一族の手法である。2002年、ある企業が、6千5百万ドルで購入した平安保険の3%の株は、5年後には、37億ドルになった。

この企業の香港の支社は、中国政府と合弁会社を設立し、空港に隣接した広大な土地を購入した。その後、この会社は、プロジェクトに係る株の53%を、シンガポールの会社に、4憶ドルで売却している。

企業の株主は、殆どが温家宝の一族か、夫人の元同僚である。

温家宝一族にとって、もう一人、富豪パートナーがいる。彼は、香港の複合企業、新世界開発を保有し、その価値は、150憶ドルにも及ぶ。そして、温首相の親戚の後ろ盾で、ダイアモンドの合弁会社に投資をし、更に、シノ・ライフ、ナショナル・トラスト、平安等の一連の企業に再投資を行なった。これらの投資は、現在、少なくとも50憶ドルの価値になった。また、宝石店も繁盛し、年間42億ドルの利益を上げている。

2007年、温家宝首相は、汚職撲滅の新たな措置を取ることを求めた。特に、共産党幹部の一族が保有する資産の公開も訴えた。

27億ドルの資産の80%は、温首相の母親、弟、義弟二人、義妹、義理の娘、そして嫁の両親が保有するので、共産党の定めた公開対象には入らない。

しかし、温首相一族の財産が暴露されたことは、温首相の政治的立場を弱めるだろう。

来月、第18回党大会で、共産党幹部が新世代に交替するが、その選定過程は、薄煕来事件で、既に傷付けられている。

温家宝は、来年3月で首相を引退するが、その後も、強い政治力を温存することは可能だろう。しかし、一族の蓄財が、彼の就任中に起きたことが明るみに出た以上、その立場は弱まることになろう。

本年3月、温家宝首相は、テレビで次のように述べた。「私には、人々、そして歴史と向かい合う勇気がある。私がしたことを評価してくれる人もいれば、私を非難する人もいるだろう。究極には、歴史が判断してくれるだろう。」

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上記の長文記事は、11月8日から開催される第18回共産党大会を前に掲載された。温家宝首相は引退する身ではあるが、今後、中国社会で生きて行くには、あまり嬉しい記事ではない。早速、共産党幹部は、本記事が中国国内で読まれないように、電子版記事をブロックした。

欧米、日本等の民主主義国では、記事の内容よりも、この記事が読めないように、中国政府が、インターネットをブロックしたことを問題視した。

中国共産党幹部は、インターネットの規制をかけて内容をコントロール出来ると考えているが、それも、中国国内という限定的空間でのことである。グローバル時代、特にスマート・フォン(スマホ)等、どこでも気軽に情報が見られる時代であれば、最早限定的空間における規制は無意味ではないか。

それにしても、インサイダー取引や政府(党)による市場コントロール、癒着、汚職、億単位のドルを動かして行なわれているのが、今の中国の現状だ。今後、これらの資金が、それを保有する人材とともに海外に流出することが予想される。

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