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本が売れなくなった本当の理由とその処方箋~出版界への果たし状

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明日から3日間(3/1-3)、東京国際文芸フェスティバルを主催する。東大、六本木アカデミーヒルズ、ゲンロンカフェ、国際文化会館、早稲田、都電荒川線といった都内各所で国内外の作家や編集者たちと文芸について語り合うという企画で、日本で初の国際文芸フェスとなる。

今日はその前夜祭として、ノーベル文学賞のJ・M・クッツェー氏ら海外招待作家と、平野啓一郎さんや綿矢りささんらフェスに登壇する日本人作家らを迎えたウェルカムレセプションを行った。単なるいちスタッフとしての参加だっただけに、初めは名立たる作家さんに話しかけるのに遠慮していたが、勇気を出して話しかけてみると意外と気さくに応えてくれた。

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恥辱 (ハヤカワepi文庫)

それで、いろいろと話をしていると何だか作家さんたちの本が無性に読みたくなった。最近はビジネス書や教養本を読むことがめっきり増えていたけど、学生時代に平野さんのデビュー作『日蝕』を読んだときの衝撃を思い出したりした。役に立たない文学でもじっくりと読みたい、そんな想いに駆られた。

いま、出版界はかつてない不況に陥っている。前夜祭に参加した作家さんや大学教授からもそんな声が挙がっていた。もちろん、インターネットの台頭や、映画、ゲームといった様々な娯楽のレベルが(刺激と手軽さという点で)上がったこともその大きな理由だろう。しかし、本が読まれなくなった本当の理由はそれだけだろうか?

私もこれまで7冊の本を書いてきたが、その度に「あれっ?これってどうなの?」と疑問に思うことがある。いわゆる出版界のあからさまな商業主義だ。たとえば、私の場合、出版社が必ず「東大・ハーバード」という学歴をタイトルに入れたがる。著者本人としては、もう卒業して何年も経ってるんだから、「東大・ハーバード卒」を誇ってるようなイメージを与えかねないタイトルはやめてほしい。何度もそう主張しても、なかなか承諾してくれない。タイトルでなければ帯に入れようとする。それもやめてほしいが、やめてくれない。タイトルと「売り方」に関して、著者には全く権限がないのだ。

さらに言わせてもらうと、出版が通りやすい企画は、中身のある濃いものよりも、すぐに実用が効くハウツーものばかりだ。私は、「ハウツー」よりも「Why?」を考えさせることのほうがよっぽど重要だと考えている。その信念をかたちにしようと、「学びの哲学」という企画で8冊目の本を出そうと、これまでで最も力を入れて原稿を書いてるわけだが、これがどうも出版社に「うん」といってもらえない。これまで十数社にあたってもらったがすべて「ノー」だ。これが、「すぐに役立つ○○勉強法」とかになると、「東大・バーバード」の売り文句で一発採用という具合だ。私の筆致力が足りないことも確かだが、出版界の大きな流れの中に、信念なり情熱なりを感じられないことが、本好きの一人として何よりも悲しい。

出版界の皆さんに問いたい。

なぜあなたは出版業界に入ったのですか?なぜ本に携わる仕事をしたいと思ったのですか?

本が好きでたまらないからではないですか?本に心を揺さぶられからではないですか?本で人生が変わったからではないですか?本で人々に感動を与えたいからではないですか?

出版界が厳しいときだからこそ、目先の売れそうな企画にだけ走らないでほしい。信念をもって本物の本をつくってほしい。そして、こんな想いでこの本創りに携わったんだと、熱く語り合ってほしい。

明日から始まる日本初の国際文芸フェスは、職場で毎昼休みに一緒にサッカーをしている友人、辛島デイヴィッドがはじめた企画だ。上司に反対されても押し通した熱意が、国境を越えて文学好きに伝染し、大きなうねりになろうとしている。「日常生活に本や物語があって、街には読書のイベントがある。そんな社会であればいいですね。(デイヴィッド)」そんな社会だったら、本は自然と読まれるようになるのではないだろうか。

先日書いた「星の王子様」の記事は、一つには現在の出版界を念頭において書いたものだ。星の数を忙しく数えることで自分のものだと言い張っている「実業家」になっていないだろうか?「本当に大切なもの」を見失っていないだろうか?

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