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スマートグリッドについて富士通総研経済研究所主任研究員の高橋洋さんとお話ししました

スマートグリッドならびにスマートメーターについて富士通総研経済研究所主任研究員の高橋洋さんをお招きして、マル激でお話ししました。
8月18日に発売される『サイゾー』誌上で読むことができます。
例によって宮台発言のみ一部を抜粋しますが、ぜひ『サイゾー』で全体をご覧ください。


〜〜〜

宮台◇ 4月半ばのTBS報道特集が「スマートメーター」を扱いました。スマートグリッド化の前提になる装置で、電力網だけでなく情報網に接続し、一ヶ月の累積でなくリアルタイムで使用電力を計測。家電機器毎に使用量の自動制御もできるデジタル電力計ですね。

 スマートというと、スイッチに触れなくても自動的に制御してくれて、今まで以上に「おまかせ生活」になりそうですが、実は違う。番組でも紹介されたけど、発送電分離を前提に、電力会社も選べ、電源種も選べ、自家発電も選べるので、実は〈エネルギーの共同体自治〉の要となります。つまり、家庭では家族が、企業では財務担当者が、頻繁に電力会社や電源種や自家発電の選択が適切かどうか議論し、単に効率だけでなく、良い電源の選択による社会貢献(の与える満足)を追求できるようにするのが、スマートメーターです。


宮台◇ 〈共同体自治〉の発電システムがあれば、電力会社の大規模発電所が停電しても、「原発が停まった以上、停電は仕方ない」という発想はあり得ません。

宮台◇ [日本と欧州の反応の違いを引き起こす背景は]〈共同体自治〉の有無です。福祉国家政策破綻を背景に、国家依存を戒める立場として、アングロサクソン(米英)では「新自由主義」、ヨーロッパでは北イタリアのブラから「スローフード」が拡がる。どちらも「小さな政府」を志向するけど、前者は市場への切替、後者は共同体への切替を重視します。違いは相対的で、例えば「新自由主義」を最初に提唱した英国ダグラス・ハード男爵は、「小さな政府」の目標を財政回復と共同体自治回復の2つだとし、米国ミルトン・フリードマンも医療と教育の予算削減に反対した上、議論の焦点を、どのみち省益しか考えない行政官僚が公共性を看板に予算をハンドリングするのを許さない所に置く。どちらも市場原理主義では全くありません。「新自由主義」も「スローフード」も「大きな社会」の提唱が共通します。かくして統治形式が日本と分岐します。

 第一に、欧州は〈引き受けて考える作法〉で、日本は〈お任せして文句垂れる作法〉。自民党支持者が普段投票に行かず、汚職などがあった時だけ共産党に入れてお灸を据えるのが典型です(笑)。
 
 第二に、欧州は〈知識を尊重するコミュニケーション〉なのに、日本は〈空気に支配されたコミュニケーション〉。任せられた政治家や官僚が「今さらやめられない」「空気に抗えない」的に振る舞うのです(笑)。だから合理性を欠いた組織的行動が止まらない。
 
 第三に、欧州の政策的誘導は“儲けたいなら良いことをせよ”的〈市場インセンティブ〉型で市民の創意工夫を惹起するのに、日本は、特措法を作って特別会計からつぎ込み、適正配分を口実に特殊法人や財団法人を作って天下り先を確保する〈命令&報奨〉型。ご褒美が欲しい者たちが思考停止的に“指導”に従います。これでは持続可能性がありません。
 
 市場や国家など巨大システムに〈依存〉せず、〈共同体自治〉を通じた〈自立〉を志向するのが欧米的伝統です。欧「米」と言ったけど、米国は信仰共同体としての宗教的結社が重要です。他方、国家に、巨大システムに、自明性に、思考停止で〈依存〉するのが、日本的伝統。だから日本人はドイツに原子力安全委員会とは別に原子力倫理委員会がある理由を理解できない。欧米的伝統だと倫理の要は〈自立〉。共同体の同調圧力に流されて善いことをするのは、道徳的に善でも、倫理に従っていない。原子力政策も安全で効率的ならいいのでなく、適切な社会的枠組つまり〈共同体自治〉を経由すべきだというのです。
 
 チェルノブィリの同年に上梓された社会学者ベックの『リスク社会』はこう言います。原発事故は19世紀的リスクではない。19世紀的リスクは予測可能で計測可能で収拾可能なので保険を作れる。事象利得に生起確率をかけて全事象を合計すれば行動合理性を算定できる。他方、20紀以降の予測不能で計測不能で収拾不能なリスクの場合そうはいかない。例えばチェルノブィリ級の事故が一万年に一度しか起こらないとして、原発を立地することが合理的行動なのか否かを科学的に正当化できない。正当化できない選択を国家に委ねるのは倫理に反する。だから共同体自治(サブ政治)しかないのだ、と。
 
 僕の考えを加えると、「終わりなき日常」を生きるには〈共同体自治〉しかない。なぜなら自治は強度(濃密さ)を与えるからです。車マニアは、トヨタの車を買ってそのまま乗りますか。あり得ない。ブースターケーブルつけたりEFIをいじったりする。社会もそうで、お任せせずに自分たちで徹底的にいじる作業は、楽しい。米国にお任せし、政府にお任せし、負担を追わずに楽々。しかし個人別GDPが世界2位だった時期でさえ幸福度が75位よりも上に来たことはない。何もかもシステムに依存した結果、〈共同体自治〉が家族からも地域からも一掃されたからです。それがクソ社会をもたらしました。自殺率は英国の3倍、超高齢者所在不明問題や乳幼児虐待放置問題の蔓延、孤独死や無縁死の蔓延…。

宮台◇ [3.11以降の日本とドイツの地方選挙の差から]日本とドイツとの議論の成熟度の違いが分かります。チェルノブイリ事故のあと南イタリアのデュラムセモリナ小麦の畑が汚染され、日本でもイタリア産スパゲティが食べられなくなった。そういうことがあったのに、日本では農家こそが原発を推進する自民党を支持する(笑)。震災の後もドイツの地方選挙では緑の党が大躍進したのに、当の日本では保坂展人世田谷区長を除くと脱原発を唱えた首長や議員が落選(笑)。最近では玄海町町長がOKを出したので玄海原発を再稼働する云々。おい、玄海原発が大事故を起こせば福岡市は全滅だぜ。福島第一原発事故でどれだけの範囲が巨大被害を被ったと思ってるんだよ。

宮台◇ 僕が住む世田谷では、終業式があった3月20日過ぎに幼稚園や小学校で子供たちの半分が疎開していました。親たちは賢明にも政府や東電を信せず、宮台ツイートや津田大介ツイートを見まくっていた(笑)。その親たちがたいてい見ていたのがドイツのウェザーセンターの放射能飛散予報。でも、東京上空の飛散予報を得るために東京からドイツにアクセスしているのは変です。ドイツの人たちはどう思っているか。恥さらしです。

宮台◇ [脱原発は賛成だけど菅直人が言うならダメだという呑気な反応の背景にあるのは]第一に、情報の非対称性。電力会社のスポンサーシップに縛られたマスコミから、教科書に出鱈目を書かせる文科省まで含め、「原発絶対安全神話」を垂れ流してき結果、ドイツ国民が当然知っている事実情報を、日本国民が殆ど知らないことがあります。

 第二に〈共同体自治〉の不在。〈食の共同体自治〉の問題であるスローフードが日本では食材の問題(ロハス!)に縮小されたように、〈エネルギーの共同体自治〉の問題である再生可能エネルギーも「東電は太陽光を使え」みたいな電源種の問題に縮小されるのは確実です。「ツマラナイ快適生活」を変えることに繋がるってことが理解されないんです。
 
 ここに第一のマスゴミ問題が関わります。先に紹介したTBS報道特集では「スマートメーターがどんなものか」もさることながら「スマートメーターのある生活がどんなものか」に時間を割いていました。こういう番組があれば、個人の趣味に過ぎないライフスタイルでなく、社会的共同生活の全体に関わるソーシャルスタイルの問題だと理解できます。
 
 実は、原発事故による食やエネルギーの危機が訪れなくても、グローバル化すなわち資本移動自由化によって、機能不全に陥りがちな市場や国家への〈依存〉がますます危なくなるしかない以上、日本にその伝統があろうがなかろうが〈共同体自治〉の方向に踏み出す以外の選択肢はないのです。今回の原発事故を奇貨とし、〈食の共同体自治〉&〈エネルギーの共同体自治〉を通じて自明性への〈依存〉を改めないと、日本の未来は皆無です。

宮台◇ はい。僕は内閣不信任案騒動の頃から「再エネ解散」を各方面に呼びかけてきて、それもあってか(笑)菅総理も不信任案騒動の頃とは違って「再エネ解散」を現実的選択肢として考えているようです。でも「再エネ解散」があっても、本当の論点が理解されない限り、政治の刷新に結びつかないばかりか、大規模な投票行動に結びつかないでしょう。「発送電分離による地域独占供給体制打破と、それを通じた〈食とエネルギーの共同体自治〉への踏み出し」がスルーされ、東電や九電が使うべき電源種の問題に縮退するのであれば、結局は経産省が「特措法×特別会計×特殊法人×天下り」図式を、今度は再エネ分野にまで立ち上げて終わるでしょう。そうであれば日本の暗い未来は永久に変えられません。

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