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今世紀中に追いつくことは不可能…日本のドラマが韓国ドラマに大きく差をつけられたワケ

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なぜ韓国ドラマは世界中でヒットしているのか。『人生を変えた韓国ドラマ 2016~2021』(光文社新書)を書いた藤脇邦夫さんは「韓国には、2006年以降、次々と誕生したケーブル局が従来とは異なる意欲的な作品を作ってきた土台がある。スポンサーに配慮したドラマばかり作る日本とは企画力で大きな差がある」という――。

2009年9搈29日、アニメ「冬のソナタ」の完成披露会見に出席した韓国の俳優ペ・ヨンジュンさん(左)とチェ・ジウさん(東京都江東区の東京ベイコート倶楽部)第一次韓流ブームを作った韓国の俳優ペ・ヨンジュンさん(左)とチェ・ジウさん。2009年9月29日、アニメ「冬のソナタ」の完成披露会見に出席した(東京都江東区の東京ベイコート倶楽部) - 写真=時事通信フォト

「ドラマロス」状態の日本の視聴者に刺さった「冬のソナタ」

日韓ワールドカップに沸く2002年、最後の家族テレビドラマといわれる「北の国から」のスペシャル版「2002遺言」が終わった後、日本のテレビ視聴者は一種の「ロス」状態に陥った。

筆者も1980年代からのトレンディ・ドラマにはそれなりに夢中になった世代だったが、同時期の「ふぞろいの林檎たち」(1983~97年 TBS)が終わった頃から、筆者と同世代を対象にしたドラマはほとんど作られなくなった。少し上の団塊の世代にとってはなおさらだっただろう。

従来であれば、その頃からNHK大河ドラマ辺りに移っていくのだろうが、ロック世代でもある筆者としてはまだそこまで老け込む年代ではなく、映画DVDやアメリカテレビドラマ「24‐TWENTY FOUR‐」(シーズン1 2001~02年 FOX/日本放送 2004年 フジテレビ)等のレンタル視聴に移行していた。

そんな頃、アメリカテレビドラマ(以下、アメリカ・ドラマと略)の日本上陸と同時期、もう一つの未知の世界のドラマが、視聴者の心の片隅に寄り添って忍び込むようにさりげなく日本に紹介された。いうまでもなく、韓国ドラマ「冬のソナタ」(韓国KBS 2002年/日本放送 2003年 NHK―BS)である。

今振り返っても、「北の国から」の終了直後に、韓国ドラマが日本に紹介されたのは、ほとんど象徴的といっていい。

歴史は後から考えるとまるで作られたかのようにうまくできているというが、それからほぼ20年、韓国ドラマはレンタルショップの定番商品となり、BSテレビ放送の毎日視聴できる番組の一つとして、NHKテレビ小説より身近な映像として定着した。我々の生活の中に不可欠な存在となったわけだ。

若者向けに作られる日本のドラマに対する不満

日本で紹介された初期の韓国ドラマにおいて、女性は恋愛ドラマ、男性は時代劇に特化していったのは、筆者と同世代にとって見るべきドラマがなくなった、日本のテレビ番組に対する不満をよく表している。2017年になって、倉本聰が「やすらぎの郷」を書いたのは、その揺り戻しと捉えるべきだろう。

その後も依然として、日本のドラマは若者向けに作られる傾向が強くなり、定年を迎えた筆者の世代はますます韓国ドラマに傾倒していく二極状態が続いていた。当の韓国にしても、いつまでも「冬のソナタ」「宮廷女官 チャングムの誓い」のようなドラマばかり作り続けていたわけではない。

2010年代に入ると、日本でも韓国ドラマを見る視聴者層は必ずしもシニア世代だけではなくなった。若い世代にも訴求する、傑出した韓国ドラマが数多く登場し、K―POPの隆盛もあり、韓国エンタメは日本中を席巻する一大現象となる。

ケーブル局放送の登場が「韓国ドラマ」の質を変えた

2000年代以降の韓国ドラマ史上、最大の変化は、何といっても2006年からのケーブル放送局「tvN」の開局、2011年からのCJENM経営による有料ケーブル局「OCN」のテレビドラマ製作開始、同年の韓国の新聞社4社(中央日報、朝鮮日報、東亜日報、毎日経済新聞)による総合編成チャンネル(同順に、JTBC、TV朝鮮、チャンネルA、MBN)の開局である。

これによって、今まで地上波独占だったKBS、SBS、MBC以外の局からのドラマ製作が可能になった。

放送用機器※写真はイメージです - 写真=iStock.com/PRANGKUL RUANGSRI

2010年代の話題番組は、ほとんど地上波以外のケーブル局によるもので、特に、総合編成チャンネルのJTBC、専門ケーブル局のtvN、OCNの3局が間違いなく台風の目である。同時期の地上波ドラマは明らかに後手に回ってしまい、意欲的な番組はすべてこの3局から発生したといっていい。

日本における韓国ドラマブームは、俳優が話題の中心となった「冬のソナタ」出現の2003~10年を第1次とすると、2011~15年の第2次はシナリオ・発想・シノプシス・プロットの充実期であり、2016年から始まった第3次ブームは、K―POP人気に加えて、前出のケーブル3局の躍進が加わり、これによって「韓国ドラマ」のクオリティはアメリカ・ドラマに匹敵するほどの水準にまで引き上げられた。

今世紀中に日本が韓国ドラマに追いつくことは不可能

そして、2019~21年の第4次ともいえるブームは、まさに第3次以降の成熟による一大ルネッサンス期──黄金期であり、後述する「愛の不時着」「梨泰院クラス」「賢い医師生活」といった秀作を続々と生み出した。

現在、世界の映像ソフトの中で、テレビドラマ(ネット動画配信全盛の今、実はこの定義さえ怪しくなっているのだが、とりあえずテレビによる放送、及びモニターで視聴するために製作された映像の総意)に限っていうならば、最高峰は、アメリカ・ドラマと韓国ドラマといって差し支えない。

この点だけでも、広義の映像(テレビドラマ・映画)のジャンルにおいて──日本最強の映像ソフトである「アニメ」を唯一の例外として──、21世紀中に、日本が韓国に追い付くことは、もはや不可能といっていい。

韓国ドラマが日本のドラマよりずいぶん先を歩いていることは誰の眼にも明らかな事実であり、この距離感を埋めることは、これから先もおそらく無理だと思われる。

ネット配信の成否を左右するのはドラマ映像

前作『定年後の韓国ドラマ』(2016年 幻冬舎新書)を刊行して5年になるが、その間の最大の変化ともいえる、第4次ブーム到来の理由として、次の2点が挙げられる。

一つ目は先述したケーブル局と映像配信による、視聴環境の大幅な転換である。特に、tvN、JTBC、OCN等を始めとするケーブル放送局製作ドラマの一部をネット動画配信の最大手Netflixに配信委託したことにより、韓国ドラマの特異性を否応なく、日本も含めて、全世界の国、地域に強烈にアピールすることとなった。

タブレットを操作する女性※写真はイメージです - 写真=iStock.com/hocus-focus

1963年のケネディ暗殺を告げる日米初の衛星同時中継、衛星放送の時代は彼方に去り、実質的に、現在世界の放送事業業態の趨勢(すうせい)は、電波事業から、インターネットを中心とした通信・配信事業に移行しつつある(民放テレビ局がネット事業者と手を組まないのは、認可業種である放送業の既得権益を守るためであることは業界の常識だが──テレビ放送と同時のネット配信は年内に一部の民放が予定している──、5年、10年先の状況はもうわからない)。

その最も顕著な象徴として、例えばNetflixは2020年に全世界の契約者数が2億人を突破した。配信アイテムの一つとなった韓国ドラマは「愛の不時着」を筆頭に、190カ国で視聴可能な最強の映像ソフトの地位を手に入れたわけで、ネット配信の効用と意義は大いにあったことになる。

テレビ放送であろうと、ネット配信であろうと、その成否を左右するのはドラマ映像というソフト・コンテンツに他ならない。

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