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「朝鮮学校を人質扱いしている」 高校無償化「除外」に校長や生徒が抗議

文部科学省が朝鮮学校を「高校無償化」の対象から外す省令改正をしたことを受け、東京朝鮮中高級学校の慎吉雄校長らが2013年2月25日、東京・有楽町の外国特派員協会で記者会見を行った。慎校長は「外国人学校のなかで朝鮮学校だけを高校無償化制度から排除することは、極めて差別的な措置であり、朝鮮学校生が有する『教育を等しく受ける権利』を著しく侵害する行為だ」と、日本政府に対して強く抗議する姿勢を表明した。【亀松太郎、三好尚紀】

朝鮮学校は、基本的に在日朝鮮人の生徒が通う学校。文科省は北朝鮮の拉致問題が進展していないことなどを理由として昨年12月、朝鮮学校を高校無償化の対象としないことを決め、このたび省令の改正を行った。12月に文科省の方針が明らかになった際にも朝鮮学校の関係者が強く抗議していたが、今回の外国特派員協会での記者会見は、海外メディアを通じて国際社会に訴えかける狙いがあるとみられる。

「教育を等しく受ける権利を侵害する不当な行為」

東京朝鮮中高級学校の慎校長は会見で、全国朝鮮高級学校校長会と全国朝鮮学校オモニ会連絡会、全国朝鮮高級学校学生連絡会の連名による声明を発表した。

「今回の文部科学省による省令改正は、各種学校の認可を得た外国人学校の中で、朝鮮学校だけを高校無償化制度から排除することを唯一の目的とした極めて差別的な措置であり、朝鮮学校生たちが有する『教育を等しく受ける権利』を著しく侵害する不当極まりない行為だ」

このように述べた上で、下村文科相が「拉致問題の進展が見られないこと」を対象除外の理由にあげている点について、「政府当局が朝鮮半島情勢などにからむ政治問題を神聖な教育の場にまで持ち込み、朝鮮学校生徒を犠牲にする、とても卑劣で不当な差別」と批判した。

また、一部の地方自治体で朝鮮学校への補助金を打ち切る動きが出ていることにも触れて、「日本政府や一部の地方自治体によるこのような不当な措置は、共存と平等を掲げた日本国憲法や『教育を等しく受ける権利』を定めた国際人権規約、民族・出自による差別を禁止する人種差別撤廃条約などに著しく違反する露骨な人権侵害」と訴えた。

さらに現在、東京都が進めているオリンピックの招致運動にも言及。「日本政府などによるこのような民族差別は、人種、宗教、政治、性別、その他の理由にもとづく国や個人に対する差別を禁じたオリンピック憲章にも反しており、このような差別が横行するなら、オリンピック開催地としてもふさわしいとは言えない」と非難した。

「朝鮮人として育成するには、朝鮮学校しかない」

声明発表後の質疑応答では、記者から北朝鮮の拉致問題についての質問が出た。拉致問題に対しての認識を問われると、慎校長は次のように答えた。

「拉致問題は在日朝鮮人のすべての人たちが心を痛めていることで、朝鮮学校では、拉致問題について『二度とあってはならないこと』と教えている。被害に遭われた家族の方、親戚の方に対して申し訳ないと思っていることを伝えて、これからはこのようなことのない日本と朝鮮との関係、東北アジアの平和のために尽くさないといけないと教えている」

一方で、安倍政権が拉致問題と高校無償化の問題を関連づけていることについて、「本来、政治と教育は相容れないものだが、日本政府は、学校教育を政治問題化して、朝鮮学校を『人質扱い』している。朝鮮学校を無償化させないことによって、朝鮮からの譲歩を引き出そうとしている」と批判した。

また、「金日成や金正日に対する忠誠心が、どれくらい授業に反映されているのか」という質問に対しては、次のように返答した。

「生徒たちに、指導者に対する忠誠を誓わせるということはない。本校(東京朝鮮中高級学校)では、子供たちの国籍の比率は、韓国籍が52%、朝鮮籍が46%、日本籍が1%。このような多様ななかで、忠誠を誓わせるようなことはできない。祖国を愛し、民族を愛しなさいと教えている」

さらに、「ネット上では『日本の公立学校へ行けばいいのではないか』といった意見もあるが、それに対してどのように考えるか」と問われると、「日本の公立に行くということは、民族の言語も歴史も習えないということ。生徒を朝鮮人として育成するには、朝鮮学校しかない」と答えた。

「北朝鮮の国を見るのではなく、私達の姿を見てほしい」

この日の記者会見には朝鮮高校の生徒たちも出席して、意見を述べた。男子生徒は「高校無償化制度が発表されたとき、家庭の負担が少しでも減ると喜んでいた。しかし、日本政府はそのあと、高校無償化制度を朝鮮学校に適用することを見送った」と無念の思いを口にした。

また、女子生徒は「朝鮮学校だけを高校無償化から除外するという差別は、すごく悲しいこと。北朝鮮の国を見るのではなく、私達の姿を見てほしい」と、その思いを吐露。「このような差別がある以上、後輩と力を合わせて、これからもずっと闘っていくつもり」と言葉に力を込めた。

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