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『テレビ千鳥』料理企画に仕掛けた“美味しさで包んだ悪意”

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「誰も傷つけない笑い」がもてはやされる今の時代。テレビ番組の視聴者の鼻は敏感に「悪意」を嗅ぎつけ、どんな番組も「悪意」の取り扱い方を誤れば、ネット炎上する。

でも、お笑いと「悪意」は不可分だ。お笑い番組は必ずどこかで「悪意」のはけ口を探している。

そんな中、先週の『テレビ千鳥』が放送していた「カレー粉かけたら何でも旨いんじゃ!第二弾」が巧妙な「悪意」のはけ口を用意していた。

別の企画でケンドーコバヤシが、枝豆にカレーをかける料理を作ったことをきっかけに生まれたこの企画。タイトルのとおり、呼び出されたお笑い芸人らの自慢の手料理にカレーをかけて試食するのだが、重要なのは、料理を作った張本人は「料理にカレーをかけられる」ということを事前には知らされていないということ。

作り手から料理のアピールポイント、こだわりなどを一通り聞いたあと、試食役の千鳥、ケンコバはいただきますをしたところで早速懐からカレー粉の瓶を取り出し、出された料理に大量にぶっかけ、美味い美味いと食べるのである。作った側のタレントは予期せぬ時代に驚き、呆れる。

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「あとでスタッフが美味しくいただきました」のテロップが示すとおり、現代において「料理の扱い方」ほど、視聴者を刺激するトピックもそうそうない。その中で、手料理を扱うこの企画は、巧妙な仕掛けが幾重にも張り巡らされている。

まず、「カレー粉を振ったことで料理が美味しくなる」というオチは、絶対的に揺るがない。料理において、「さらに美味しくなること」は、ほとんど誰も否定することができない絶対善なのだ。これは絶対に外すことはできない。これが実現できたのも、「カレー粉をかけたら何でも美味くなる」という、この番組が見つけた(のかは分からないが)「鉄の法則」の賜物だ。

千鳥やケンコバは、作り手の前で絶賛しながら料理に舌鼓を打つ。ただし、カレー粉をぶっかけ、完全にカレー味に染まった一品を。作った本人からしたら、喜んでいいのか喜ぶべきでないのか分からない。その複雑さが面白さを生む。

次に重要なのが、料理を作った側のタレントの反応だ。せっかく作った料理にカレー粉を振られたことに不平を漏らしていたものの、いざ自分でカレー粉入り料理を口にしてみると、「…美味しい…」と思わず口にする。

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ここまでの展開が、揺るがない一つのパッケージとなっているのは、料理が美味しくなることが絶対的な善だということを、作り手が熟知しているからだろう。

しかし、視聴者の中には、「料理の作り手が意図しない食べ方をされる光景」に眉をひそめる向きもあるかもしれない。世の中、繊細な人もいるものだ。それを知ってか知らずか、この番組はさらなる仕掛けを用意している。

ダメ押しとなるのは、料理を作らされる側のタレントに用意されるある“前提”だ。彼らは別の番組の企画で呼び出され、スタジオに入ったところで実はこれが『テレビ千鳥』で、料理を作ってほしいと頼まれる、というプチドッキリを仕掛けられている。

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そのあと作った料理にカレーをかけられるというメインのドッキリがあるため、この「別の番組だと思ったら『テレビ千鳥』だった」というプチドッキリは一見不要のように思える。現に、番組でも毎回この謎のドッキリの存在にひと笑い起きている。

しかし、不要のように思えるこのプチドッキリが、実は効果を発揮する。「急きょ料理を作らされるシチュエーション」ということは、つまり、事前に入念な準備をする間も与えられずに作った料理ということになる。丹精を込めて、何日も前から準備したわけではない。得意料理をぱぱっと軽く作らされるというシチュエーションであることによって、「作った後にカレー粉をかけられる事態」の悪意が少し軽量化されるのだ。

驚くべきことに、「人がせっかく作った料理の味にぞんざいにカレー粉をかけて味を変えてしまう」という最初にあった“悪意”が、このように何重にもコーティングを受けたことで、悪意と思えなくなってくる。

この企画が、悪意に敏感な現代の視聴者を意識して生み出されたかは分からない。面白くて変な企画を考えているうちに、たまたま生まれた可能性も捨てきれない。鳥が先か卵が先かはわからない。特に『テレビ千鳥』だ。時にどこに向かっているのか分からない、時にどういう感情を抱けばいいか分からない、前衛芸術のような、あるいはお笑い仙人が仕掛けてくる禅問答のような放送回もある。

そんな中、偶然にしろ必然にしろ、悪意を「美味しさ」でコーティングするこの企画は、現代の「悪意」に過敏な視聴者でさえカレーの匂いしか嗅ぎ取れない、見事な企画だった。

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