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「女性天皇になるか主婦になるか」引き裂かれ続けた愛子さまの20年

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天皇陛下の長女、愛子さまが12月1日、20歳の誕生日を迎えられた。神道学者で皇室研究者の高森明勅さんは、女性天皇に関する議論が先延ばしにされているために「敬宮殿下(愛子内親王)はお生まれになった時から、女性天皇になられるか、それとも主婦になられるかという、極端に異なる2つの未来像に引き裂かれたまますごしてこられたことになる」という――。

※本稿は、高森明勅『「女性天皇」の成立』(幻冬舎新書)の一部を再編集したものです。

皇居に入られる天皇、皇后両陛下の長女愛子さま=2021年5月6日、皇居・半蔵門
皇居に入られる天皇、皇后両陛下の長女愛子さま=2021年5月6日、皇居・半蔵門 - 写真=時事通信フォト

憲法も世論も「女性天皇」を否定しない

「女性天皇」という選択肢について、近年の各種世論調査の結果では、コンスタントに国民の高い支持を集めている。

平成30年(2018年)4月の「朝日新聞」の調査では、賛成76%に対し反対が19%。

同年9月のNHKの調査では、賛成92%に対し反対が12%。

同年10月の共同通信の調査では、賛成が82%に対し反対が14%。

同年11月の時事通信の調査では、賛成が76%に対し反対が19%。

平成31年(2019年)4月の共同通信の調査では、賛成が85%に対し反対が15%。

令和元年(2019年)5月の「読売新聞」の調査では、賛成が67%に対し反対が8%(ただし、同調査の設問には不備が指摘されている)。

令和3年(2021年)4月の共同通信の調査では、賛成が87%に対し反対が12%。

右のような実情だ。いずれも賛成が反対を圧倒している。もちろん、皇位継承という厳粛なテーマを変動幅がある世論調査の結果“だけ”で判断すべきではない。しかし一方、天皇が憲法で「国民統合の象徴」とされている以上、国民の受け止め方をまったく無視してしまうわけにもいかないだろう。その意味では、世論調査の結果にも、一定の関心を払う必要があるのは確かだ。

又、女性天皇は過去に10代・8方おられた事実がある。そのため、有力な否定論を見かけない。せいぜい「女系天皇につながるから反対」といった程度だ。旧時代的な「男尊女卑」の価値観に立たない限り、女性天皇の可能性を一方的には否定できまい。

憲法上も、帝国憲法の場合は「皇男子孫」(第2条)と条文自体によって女性天皇を排除していたのに対し、今の憲法では「世襲」(第2条)と規定するだけなので、特に女性天皇が問題視される余地はない。むしろ、「国民統合の象徴」であるはずの天皇に、男性しかなれない現在の制度は、国民の半数が女性である事実を考えると、いささか奇妙ではあるまいか。

皇族と憲法第3章

しいて問題点をあげるとすれば、次のような懸念が表明されるかも知れない。すなわち、もし女性天皇を可能にした場合、(継承順位の設け方にもよるが)急な制度変更によって当事者の人生プランが、根底からくつがえされることになるのではないか、と。

この点についてはどう考えるべきか。

まずは、少し冷酷に聞こえるかも知れないが、制度論的な整理をしておく必要がある。旧宮家案が“純然たる国民”を対象としているのに対し、女性天皇を可能にする制度改正の場合は、あくまで皇族が対象だという、基本的な前提条件に違いがある点を見逃してはならない。

対象が国民であれば、繰り返すまでもなく、当然ご本人の同意が絶対的な前提条件になる。しかし、対象が皇族の場合だと、憲法第3章の全面的な適用は受けず、むしろ第1章、なかんずく第2条「皇位は、世襲」の適用が優先される。よって、当事者のご意向は不可欠の要件とはされないというのが、少なくとも制度論上の考え方になる。

誕生時に触れられた「女性天皇」の可能性

しかも、重要な事実がある。それは天皇陛下のご長女、敬宮(としのみや)(愛子内親王)殿下がお生まれになった時(平成13年(2001年)12月1日)、昭和天皇の弟宮でいらっしゃった高松宮(たかまつのみや)のお妃(きさき)、喜久子(きくこ)妃(ひ)が『婦人公論』(平成14年(2002年)1月22日号)にお祝いの一文を寄せられ、その中で「女性天皇」の可能性について、はっきりとお触れになったことだ。

「女性の天皇が第127代の天皇さまとして御即位遊ばす場合のあり得ること、それを考えておくのは、長い日本の歴史に鑑みて決して不自然なことではないと存じます」と。

この文章は敬宮殿下ご本人のお誕生を祝したものである以上、殿下のご成長のさほど遅くない時点で、必ずやお目にとまる機会があったに違いないと考えるのが自然だろう。敬宮殿下にとって「女性天皇」という選択肢が政治の場で浮上することは、決して唐突な事実ではなかったはずだ。

しかも、小泉純一郎内閣の時に設置された「皇室典範に関する有識者会議」(吉川弘之(よしかわひろゆき)座長)が平成17年(2005年)11月に提出した報告書では、「今後の望ましい皇位継承資格の在り方」として次のように結論づけていた(同会議のヒアリングには私も応じた)。

「今後における皇位継承資格については、女子や女系の皇族に拡大することが適当である」と。

二重橋
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/redtea

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