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西野亮廣「映画、ドラマ、音楽も…日本のエンタメが韓国に負け続ける根本理由」

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イカゲーム、梨泰院クラス、BTSなど韓国エンタメが世界でヒットを飛ばしている。なぜ日本のエンタメは韓国の後塵を拝することになったのか。初めて製作総指揮を務めた映画『えんとつ町のプペル』が国内で170万人を動員し、さらにカタールのアジャル映画祭でMohaq部門 最優秀長編映画賞を受賞するなど、海外でも評価の高い西野亮廣さんに聞いた――。(前編/全2回)


撮影=森本真哉

狙わないと世界一にはなれない

——アジャル国際映画祭の最優秀長編映画賞受賞、おめでとうございます。西野さんは25歳から海外を狙うと宣言されて、映画『えんとつ町のプペル』ではそれを実現させました。そもそも海外を目指した理由はなんだったのでしょうか?

【西野】もともと僕は「世界で一番おもしろくなりたいなぁ」と思って芸人からスタートしました。それでテレビや舞台をがんばっていたのですが、あるとき、ふと、「このまま、この道を走ったとして、世界一になることが可能なんだっけ?」と疑問に思いました。

もちろん例外もありますが、日本語に依存した活動をしている時点で、基本的には海をまたぐことはありません。

あと、自分がプレイヤーとしての才能は無いということは、さすがに5年も活動していれば分かります。だからといって、作り手として才能があるのかはわからないのですが、少なくともプレーヤーとしての可能性が無いことはわかったので、もうやめようと。

そんなこんなで、次に始めるときには世界に続くレールに乗らないとだめだなって、まずは「非言語のエンタメ」か、「翻訳のハードルが極めて低いエンタメ」を“創る”ことに手を出そうと思って、辿り着いたのが「絵本」でした。

——世界に挑むための手段として絵本を選ばれたんですね。

【西野】はい。25歳でタレント活動から軸足を抜くことを決めてからは、「世界で戦うにはどうしたらいいのだろう?」と考えるようになりました。「世界一」はたまたま獲れるようなものでもなさそうなので、まずは優位性を探りました。

「日本は何が強いのだろうか?」という問いです。

エンターテインメント(以下、エンタメ)に限らず、すべてのジャンルのなかで「日本が勝っているものは何なのだろう?」と考えたときに、「制限がある勝負」「規格が統治された勝負」は善戦しているなと。

スポーツでたとえるなら体重別のスポーツ。「55kg級で世界一を競ってください」というようなものだったら結構勝てていますし、料理なんかもそうですね。「この素材を使って一番おいしいものをつくってください」といったときにも世界で勝てている。日本人は工夫力みたいなものは、非常に優れている。そもそも、真面目だし。そういう強みが発揮できる分野に挑めばいいのだろうなと思いました。

「工夫力がモノをいう場所」を言い換えると、「大資本が力を出せない場所」ですね。

最初から映画で世界に挑もうとしたら、ハリウッドやディズニーという大資本と同じ土俵で戦わないといけません。絵本は紙でつくるという制約があるので、100億円の予算はかけられない。絵本ならシンプルに才能勝負になるなと思って、それなら勝ち目はありそうです。

くれぐれも僕に才能があるとかそういう話ではなく、「才能勝負に持ち込んだら可能性がゼロではない」ということです。25歳のガキが予算無制限のエンタメで勝負をかけたら、負けるのは確実なので(笑)。

日本人のお金リテラシーの低さがエンタメを殺す

——西野さんはご自身の夢として世界に挑んできたわけですが、その間に日本は、国策としてエンターテインメント産業を育成した韓国に水をあけられていきました。西野さんは、いまの日本のエンタメ業界をどのように見ていますか?

【西野】あんまり元気じゃないのは間違いないですよね。

その原因を考えてみると、クオリティに問題があるというよりも、「日本人のお金リテラシーが絶望的に低い」というのはあると思っています。お客さんだけでなく、クリエイターも含めてです。お金リテラシーが低い、いまの日本の土壌では、おもしろいものはつくれないんだろうなと思っています。

たとえば、来年1月に上演する「プペル~天明の護美人間」で3万円のSS席というのをつくったんです。かぶりつきで見られる特等席を3万円で売ると、売り上げが確保できて、3000円の席をつくることができて、歌舞伎のハードルをグッと下げることができます。それに対して、どこかの頭の悪いメディアが「プペル歌舞伎は高い!」というニュースを出していました。ミスリードでアクセス数を稼ぐメディアの品の悪さは今に始まった話ではありませんが、お金リテラシーの低い人が、その記事を鵜呑みにしてしまい、「プペル歌舞伎は高い!」という批判を起こしてしまう。


11月22日、東京キネマ倶楽部で行われた新作歌舞伎「プペル~天明の護美人間~」制作発表記者会見の様子。主演の市川海老蔵さんと。(写真提供=CHIMNEY TOWN)

それって、「累進課税をてやめて、一律課税でいけー!」と叫んでいるようなもので、3万円のSS席を作らなかったら、ほかの席が4500円とか5000円になってしまう。すると、歌舞伎を見るハードルがあがってしまうから、新規のお客さんが入ってこない。これって小学生でもできる算数なのですが、お金教育をトコトンしてこなかった日本人には通用しない。こういうリテラシーの低さでとりこぼしているチャンスがめちゃくちゃあると思っています。

VIP席を作ったことがニュースになって騒いでしまうのって、本当に日本くらいです。飛行機のビジネスクラスとファーストクラスのことは知っているのに、ビジネスクラスとファーストクラスの売り上げで飛行機が飛んでいることは知らない。だけど、「VIP価格はなしでいこうよ」となると、チケット代が高くなって新規のお客さんは増えないし、制作費も減っていきます。

これだけではありませんが、日本人のお金リテラシーの低さから、日本のエンタメは海外勢にお金でマウントを取られてしまっている。韓国のアイドルグループがミュージックビデオをつくるときに、1億円ですと。一方、日本のアイドルグループは500万円でつくってくださいといわれたときに、同じダンスのクオリティだとしたら、韓国側に軍配があがってしまうので。

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