記事

マイナンバー法(国民共通総背番号制)の問題点 個人情報ダダ漏れの国家監視・管理社会

1/2
画像を見る

マイナンバーは監視の番号 [単行本(ソフトカバー)] やぶれっ! 住基ネット市民行動 (著)

 安倍内閣は2013年3月1日、国民一人一人に番号を割り振って所得や納税実績、社会保障に関する個人情報を1つの番号で管理する共通番号「マイナンバー」制度の関連法案を閣議決定、国会に提出しました(「社会保障・税共通番号制」に係る法律。正式名称「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」)。

 この法案には野党の民主党も賛成の方向で調整しており、今国会で成立する公算が大きく、政府は2016年1月の利用開始を見込んでいます。

 このマイナンバー制度が導入されると、赤ちゃんからお年寄りまで、全国民にマイナンバーは付き、中長期在留の外国人や法人にも番号が付けられます。そして、この番号をキーにして、納税額や年金・介護の保険料納付状況などの個人データを引き出し照合するのが共通番号制の仕組みです。

 政府はこのマイナンバー制度について、各個人の所得水準や年金、医療などの受給実態を正確に把握し、効率的な社会保障給付を実現することを目的とするとしており、行政事務の簡素化、効率化や、生活保護の不正受給や脱税の防止効果が期待されるとしています。

 ところが、マイナンバー法については、以下で述べる数々の致命的な問題点があるのです。

[画像をブログで見る]

[画像をブログで見る]

1 個人の情報コントロール権の侵害

 まず、現代社会において極めて重要な基本的人権であるプライバシー権の核心的内容は、情報主体の「事前の同意」による自己情報コントロール権にあります。そして、情報コントロール権の前提は当然のことながら、個人個人が自己情報の利用について認識し、それを受け入れていることです。

 ところが、マイナンバー法について、2011年3月におこなわれた政府の調査によれば、国民の8割以上が公表されているマイナンバー法の内容を理解していないとの結果が示されており、その後も一向に理解が進んでいるとは言えません。今、この文章を読んでおられる皆さんも、制度を十分把握しているという気持ちにはなれないでしょう。わたしも同じです。

 それにもかかわらず、マイナンバー法を施行しようとすることは、政府が個人情報の活用の推進を優先し、国民の情報コントロール権をないがしろにしているといえるでしょう。つまり、個人の力の及ばないほど国家の権能を極端に強力にしようとする発想そのものが、個人の自由と人権を軽視していることを表しています。

 兵庫では自衛隊募集の便宜を図るため、神戸市役所が自衛隊に住民登録記録を市民に無断で閲覧謄写させてしまうという事件もありました。マイナンバー制度を肯定する考え方は、国家は決して国民の人権を侵害しないだとか、公務員は決して間違えないという無謬性を信じるユートピア的な発想で、非現実的です。

総選挙の争点8 あなたは支配者に奴隷的拘束を受けたいのか、自由に人間らしく生きたいのか

2 個人情報流出の危険性 公務員による情報漏えい

 具体的には、「マイナンバー」に含まれる情報が、税と社会保障全般に及ぶということは、私生活のさまざまな分野の個人情報を含むものです。たとえば、どこの病院にどんな病気でかかったかという病歴など他人に知られたくない情報も含まれることになるわけです。

 このような情報が1つの番号の下に統合され、刻々と集積され、国・地方公共団体によって一元的に管理されます。しかし、もし当該管理に欠陥があり、それにより情報が流出するようなことになれば、深刻なプライバシー侵害が発生するのです。現に情報管理を徹底しているはずのクレジットカード会社、金融機関や保険会社などからも毎週のように個人情報の漏えいが起きています。

 そして、マイナンバー制度で「名寄せ」された情報が漏えいすると、いわゆる「なりすまし」による被害が発生する危険も高まり、最終的には個人に回復不能の損害を生じさせる危険性があります。しかも、一挙に大量に。

 日本でも秘匿されなければならない行政情報が、ずさんな管理や職員の漏えいなどによって流出する事例は後を絶ちません。公務員が過失で、もしくは情報を売るために故意に情報を漏えいすることも日常茶飯事になっているのです。先月一か月だけでも末尾の各記事のように、市職員、国税庁職員、警察官などが情報を漏えいした罪で判決を受けたり、起訴されたり、逮捕されたりしています。

 こんな状態で、過度に行政に個人情報を一元化するべきではないのです。

 わかりやすくいうと、例えば、ご家庭の印鑑は、実印、銀行印、認印などをその用途に応じて使い分けているはずです。宅配便を受け取るときに実印をつくことはまずないでしょう?つまり、誰でも必要とされるレベルに応じて印鑑を使い分けることで、個人情報である印鑑の悪用や盗用を防いでいるわけです。ところが、個人情報を一元化したマイナンバー制度のICカードを広くさまざまな分野で使用することは、言ってみれば、ご家庭の印鑑を実印に一本に限ってしまい何にでも使うようなもので、これが大変危険なのは明らかでしょう。

 現に、すでに早くからソーシャルセキュリティーナンバー(社会保障番号)制度を導入している「マイナンバー先進国」のアメリカでは、不法移民が職を得るために盗んだり、死んだ家族に成り済ましてナンバーを使い続け、年金を受け取るなど、いわゆるID詐欺も多く起きていて、全米で年間1,000万人が被害に遭い、過去5年間、全米で最も多い犯罪はID詐欺となっているのです。

 そのため、アメリカ国防総省では国防上の観点から職員や家族に独自の番号を採用することになっています。州法で社会保障番号の利用を制限している州もあります。さらに、ドイツでは税分野に限定することで、なりすまし犯罪に利用されることを防いでいるのです。このような個人情報秘匿の世界の潮流は明らかに日本の国民総背番号制度の発想とは異なります。日本は逆コースに行こうとしているのです。

画像を見る

共通番号制度のカラクリ―マイナンバーで公平・公正な社会になるのか? [単行本]

田島 泰彦 (編集), 白石 孝 (編集), 水永 誠二 (編集), 石村 耕治 (編集)

あわせて読みたい

「マイナンバー」の記事一覧へ

トピックス

ランキング

  1. 1

    悪質な収集家に裁判官怒りの一言

    阿曽山大噴火

  2. 2

    立民議員の官僚叩きに批判が殺到

    音喜多 駿(参議院議員 / 東京都選挙区)

  3. 3

    ベガルタ選手 交際相手DVで逮捕

    SmartFLASH

  4. 4

    国に従わず支援求める朝鮮学校

    赤池 まさあき

  5. 5

    淡々とデマ正した毎日新聞は貴重

    文春オンライン

  6. 6

    歴史消す日本政府と追及せぬ記者

    田中龍作

  7. 7

    初鹿明博氏が議員辞職する意向

    ABEMA TIMES

  8. 8

    岸防衛相の長男 フジ退社で衝撃

    文春オンライン

  9. 9

    マスク拒否で降機「申し訳ない」

    ABEMA TIMES

  10. 10

    米山元知事が橋下氏の煽動に苦言

    SmartFLASH

ランキング一覧

ログイン

ログインするアカウントをお選びください。
以下のいずれかのアカウントでBLOGOSにログインすることができます。

コメントを書き込むには FacebookID、TwitterID のいずれかで認証を行う必要があります。

※livedoorIDでログインした場合、ご利用できるのはフォロー機能、マイページ機能、支持するボタンのみとなります。