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【読書感想】AKB48の戦略! 秋元康の仕事術


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AKB48の戦略! 秋元康の仕事術 (田原総一朗責任編集)

『おニャン子クラブ』『とんねるず』『川の流れのように』『着信アリ』『象の背中』『ジェロ』そして『AKB48』……。

テレビ、映画、CM、マンガ、ゲームなど、多岐にわたり活躍し、AKB48グループの総合プロデューサーを務めるなど、常に第一線で活躍するクリエーター。

そのヒットメーカー・秋元康に企画・発想・プロデュース…“刺さる"ビジネスノウハウを田原総一朗が徹底的に聞き出した!


AKB 総監督・高橋みなみの特別対談も収録。

「秋元康の仕事術」がわかる一冊!



この本、「AKBの戦略」とか「秋元康のものの見方」に興味がある人には、それなりに楽しめると思います。

その一方で、「秋元康の仕事術」として、世間一般の「仕事」をしている人が参考にするための本じゃないな、とも。

どちらかというと、「秋元康は、どういうスタンスでAKB48と接してきたのか?」を知りたい人向けです。

AKBの「裏話」がけっこう語られていますしね。

田原総一朗:未完成って、極論すればヘタクソなわけだ。ヘタで飽きられませんか?


秋元康:いや、”ヘタ”でも”一生懸命やっている”ことが大切です。よくあるのは、「ヘタだから弾いているふりをさせて、別の音を流しましょう」っていう発想です。みんな今までそうだったんですよ。そのほうが、まとまるじゃないですか。でも、それじゃ、おもしろくない。「えっ、AKBってこんなにヘタなの」でいい。

 だって、みんな自分たちがバンドをやった中学校の文化祭を思い出してください。みんなヘタくそなバンドに「イェーイ!」ってやっただろうと。一生懸命やる汗を見たいんです。バンドもので次のシングルを出したら「あ、前よりうまくなってるじゃん」と思われる。それがAKBなんです。


 

AKBというのは「ヘタであることを、ありのまま見せる」というコンテンツなわけです。

そしてその「進化」のプロセスを、ファンは追っていく。

秋元さんは「高校野球」という喩えを何度も使っているのですが、たしかに「技術だけでいえば、プロのほうが上手い」のは当たり前なのですが、高校野球には、高校野球ならではの魅力がありますよね。

もっとも、スポーツが苦手な僕からすれば、世間の人々が高校野球に抱いているような「純真な高校生たち」とか「青春の汗と涙」みたいなものは、「幻想」であったり「投影」であって、部内ではイジメやシゴキが横行しているというのも現実です。

でも、それはそれとして、「高校野球」というのは、人気を保ち続けているわけです。


前田敦子さんが、なぜ「センター」だったのか?

他にももっと可愛かったり、華がある子がいるのではないか?

そういう疑問に対して、秋元さんはこんなふうに答えています。

田原:では、前田敦子があそこまでいくことは、だいたい予想していた?


秋元:プロから見ると、まあこの子だろうな、というのはありました。一般のファンには「なんであいつがセンターなんだ」という声が少なからずあす。モデルのような美しさやタレントとしての完成度を求めているんだけど、プロに言わせれば勘違いです。



田原:プロは、どういうところを見るんですか?


秋元:一言でいえば「予定調和ではない」ということ。それから、この子が喜んで微笑んだときの愛くるしい顔は人の心を打つだろうなという天真爛漫さ。美人ということではなくね、前田の卒業特番で14歳のとき「将来の夢は女優さんです!」とかっていう映像が頻繁に流れましたけど、あの屈託のない感じが、やっぱりエースなんです。つまり、いちばん癖がなかった。ここでこうして、こうやっていくんだよ、というのを、本当にスポンジのように吸収できる子だったんです。


田原:すれてなくて癖がない。「私の売りはこれです」なんて強調しない。


秋元:はい、しないですね。でも、素材として、この子はどうやったらおもしろいだろうか、と何かとクリエイターをわくわくさせる。AKB48劇場は一種のショーケースで、さまざまな映画監督や、コマーシャル、ドラマをはじめいろいろなプロデューサーが来ます。すると、必ず「前田敦子がいいね」と言います。彼女には、プロに「この子は」と思わせる何かがありました。


僕には、前田敦子さんが持っていた「何か」って、正直よくわかりません。

でも、「秋元康さんの独断」というわけではなく、「プロのクリエイターをひきつけるもの」を前田さんが持っていたのは事実のようです。

そして、その「見る目」は正しかった、ということも。


この本のなかで、秋元さんは、こんな話をされています。

秋元:僕はビデオやDVDが大好きで、どんどん集めていったら、とうとう入りきらなくなって一部屋借りたんです。それでもあまりに雑然としているから、あいうえお順に並べるとか、バイトを雇って整理しようかなと思ったんです。

 でも、よく考えたら、これがTSUTAYAじゃないかと。TSUTAYAを自分のライブラリと思えばいいわけです。たぶんビデオ映像コンテンツなんかは、本当にほしいものがほしいときに手に入るオンデマンドの形が、いちばんいいんだと思う。つまり「所有」についての価値観が大きく変わってきた。日本人は敗戦後の高度成長期からずっと、テレビ、冷蔵庫、車、家と物を所有することにこだわってきたじゃないですか。

 

田原:豊かさとは、何をどれだけ所有できるかということ。その豊かさが、幸せに直結していた。


秋元:ビートルズやローリング・ストーンズのレコードを買ったときも、このジャケットいいなと、部屋に飾ったわけです。

 ところが、いまの子たちはそれを必要としていない。そうなってくるとグサッと刺さらなければ、彼らは動かない。

 

田原:それがアキバの劇場ね。刺さらなきゃダメだ、テレビの認知なんかクソくらえと。


この話を読むと、秋元康という人がAKB48でここまで成功した理由というのは、現代における「所有の概念」の変化に、いちはやく気づいていた、あるいはそれに対応しようとしたことではないか、という気がするのです。

iPodの普及やTSUTAYAなどのレンタルショップの増加、充実にともない、「わざわざ買って家に置いておかなくても、必要なときに借りてくるか、音楽ならiPodに入れておけば十分」だと考える人は、増えてきているのではないかと思います。

田原さんや秋元さんは、いまの若い人たちを「本を捨てられる世代」だと評しています。

僕は旅先でも本をなかなか捨てられなくて、どんどん荷物が重くなってくる人間なので、「本を捨てられる世代が出てきた」という驚きには、頷けるものがあるのです。

どんなDVDのコレクターでも、TSUTAYAの近くの店舗より充実したコレクションを個人で持っている人は、ほとんどいないはずです。

ネットでは、部屋にいながらにして、最新の音楽や映像を受け取ることもできますし。


そうなってくると、「差別化」できるのは「形にならないもの」すなわち「体験」しかなくなってきます。

そこで、「会いにいけるアイドル」AKB48。

どんなに人気になっても、握手会に参加すれば、「会ってくれる」。

逆に、こちらから会いに行くというモチベーションがなければ、その体験はどんなにお金を払っても得られない。

Amazonも、配達してくれない。


「なぜ、仲間内に序列をつくるような『総選挙』をやるのか?」という田原さんの問いに対して、秋元さんはこう答えておられます。

秋元:「格差社会」はよくありません。僕も格差社会は直していかなければいけないと思うんです。理不尽な理由で、社会格差が生まれてしまうのは問題で、チャンスはみんな平等でなければならない。自分が望まない格差はよくありません。

 しかしAKBの女の子たちは、応募した時点で、格差社会の芸能界に入ろうと思ったんです。AKBに受かる受からないという格差があり、入ってからもヒエラルキーがある。舞台でどのポジションに立つかという格差もある。だから、選挙で格差をつけるのはかわいそう、という話にはならない。むしろ、それを望んできたわけだから。

 もっといえば、総選挙は僕らの側の親心でもあるんです。「あなたたちは、芸能界を目指し、歌手や女優になりたいんだろう。そこでは歌や踊りや容姿だけじゃない、日常茶飯事すべてにわたってランキングされているんだ」と。歌番組で誰を呼ぼうか、映画の配役をどうしようか、コマーシャルにどのグループを起用しようかと、すべてランキングを見ながら選抜していますからね。


秋元さんのやり方については、さまざまな意見があります。

僕も「仲間内で勝負をさせるなんて、残酷じゃないか」とも思う。

でも、将棋の世界の「奨励会」みたいなもので、「ある程度の年齢、キャリアの時点で、結果を出せない人は、見切りをつけさせる。その目安を呈示する」というのは、かえって親切なのかもしれません。

人気に差がつく以上、すべての「アイドルになりたい人」を平等に扱うなんて、不可能なのだから。


ちなみに、「AKBでは専門の臨床心理士やスクールカウンセラーがチームを組み、話を聴いている」そうです。

「メディカルスタッフも常駐している」のだとか。

それだけハードな現場だということもあるのでしょうし、売れているからできることでもあるのでしょうけど、それなりの配慮はされているのではないかと思われます。


「役に立つ」かどうかはさておき、読んでいて、けっこう面白い本ではありました。

「個々のメンバーにはあまり興味はないけれど、現象としてのAKBには興味がある人」には、うってつけの本ではないかと思います。

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