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「テレビCMよりも費用対効果がいい」銀のさらが"紙のチラシ"を年3億枚も配り続けるワケ

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宅配寿司大手「銀のさら」は、年間3億枚以上の紙のチラシを配布している。現在の注文のうち6割はWEB経由なのにもかかわらず、紙の質にまでこだわるほどの力の入れようだ。なぜ紙のメニューチラシを配り続けるのか。「銀のさら」を運営するライドオンエクスプレスの渋谷和弘さんに聞いた——。

「銀のさら」を運営するライドオンエクスプレスでデジタルマーケティングを担当する渋谷和弘さん

「銀のさら」を運営するライドオンエクスプレスでデジタルマーケティングを担当する渋谷和弘さん - 筆者撮影

宅配寿司としては後発、力を入れたのは「紙のメニューチラシ」

宅配寿司「銀のさら」は2000年にスタートして以来、自社配送・自社製造にこだわり、注文受付から調理、宅配までを一貫して担ってきた。

当時は今ほどフードデリバリーが普及しておらず、「宅配寿司チェーンがデリバリー市場を先に行く存在だった」と、ライドオンエクスプレス デジタルマーケティング部でエグゼクティブマネージャーを務める渋谷和弘さんは振り返る。

「銀のさらは、新規参入としては後発組でした。ただ当時の宅配寿司は、紙のメニューチラシに載っている寿司の写真と、注文して届いた実物の寿司との見た目のギャップが激しいことが多く、割高感の否めない風潮があったのです。そこで銀のさらは、写真のものと同じクオリティを出せるよう、メニューチラシのデザインから寿司のネタ、シャリに一層のこだわりを持って『後悔させない宅配寿司』を目指してきました。こうして、お店で寿司を食べたときと変わらない満足感を提供するために、地道に取り組んできた結果として、業界シェアNo.1になれたと考えています」

競合がひしめくなか、銀のさらの生命線になってきたとも言えるのが紙のメニューチラシだ。

根底には「商品と販促はつながっている」という考えがあるという。

「紙のメニューチラシは、お客様の手元に直接届けることのできる最良の販促です。だからこそ、高級感が伝わるよう、写真映えを意識したり、紙の材質や印刷にこだわったりしていて、当時から現在までずっとこだわりをもってメニューチラシを作成しています。また、制作会社や代理店に全行程を頼むのではなく、メニューチラシ専用の制作チームを自社で抱え、半内製化した体制をとってきました。

ここまでメニューチラシにこだわるのは、銀のさらの平均単価が約5000円という価格ゆえ、薄手の紙では魅力が伝わらず、見劣りしてしまうからです。そのため、メニューチラシを手にしたときの上質な手触り感や、興味をかき立てるような写真のビジュアルなどは、今も昔も変わらずに質の担保を心がけてきたのです」

「正面の感覚で食べたい」ニーズに応えた“放射盛り”

「たかがチラシ、されどチラシ」と言えるように、銀のさらはメニューチラシに並ならぬ執着を持って創意工夫を行っているのだ。

寿司の盛り付け方ひとつとっても、商品開発チームが並べ方や見せ方を考えているという。

「流し盛り」で盛り付けされた「加賀(かが)5人前」

「流し盛り」で盛り付けされた「加賀(かが)5人前」 - 画像提供=ライドオンエクスプレス

「放射盛り」で盛り付けされた「華(はな)5人前」

「放射盛り」で盛り付けされた「華(はな)5人前」 - 画像提供=ライドオンエクスプレス

「寿司を同じ向きに並べる『流し盛り』のほか、グループで食べる際に『どこからでも正面の感覚で食べたい』という要望に応えたのが『放射盛り』です。色鮮やかな寿司が放射状に広がるきれいな見栄えは、他社に真似されるほど好評を博す盛り付けになっています。そして、桶を見た時の美しさを重視するために、赤と白のコントラストを意識し、全体のバランスを考えながら寿司のネタを並べるなど、随所に工夫を凝らしています」(渋谷さん)

テレビCMよりメニューチラシの方が費用対効果がいい

そして、地域ごとの特性や消費者志向に合わせるべく、北海道/東日本/東海/関西/西日本・九州の5エリアでそれぞれ異なった商品展開を行っており、合わせてメニューチラシのデザインも変更している。

左が東日本エリア、右が関西エリアのメニューチラシ。地域ごとに最適化されたメニューチラシを作ることで需要喚起につなげている。メニューチラシは2021年10月発行のもの

左が東日本エリア、右が関西エリアのメニューチラシ。地域ごとに最適化されたメニューチラシを作ることで需要喚起につなげている。メニューチラシは2021年10月発行のもの - 画像提供=ライドオンエクスプレス

メニューチラシは四半期に一度、シーズナルのキャンペーン商品を投入する時に合わせてデザインを刷新している。配布枚数は、1店舗あたり4万~5万枚だ。その合計は、年間3億枚にのぼる。

だが、全国の各地域に広くあまねく訴求するのであれば、テレビCMを打った方が効率はいいだろう。

それでも銀のさらが、メニューチラシをポスティングし続けるのは「『宅配』というお届けできるエリアが限られたビジネスモデルのため、一軒一軒ピンポイントで告知ができるメニューチラシの方が費用対効果が良いから」だと渋谷さんは説明する。

「実は利用者の1世帯あたりの年間平均注文回数が2.35回というデータがあり、年に数回の注文を獲得するためにテレビCMを打つよりも、定期的にお客様の元へメニューチラシを配布した方がいいわけです。キャンペーンを行うのもお客様との接点を作るためで、ある種地域に根ざしながら、地道にお客様を育てていくような気概を持ってマーケティングに取り組んでいます」

こうして銀のさらは、ポスティングによる紙のメニューチラシを長年配布してきたことで、ブランド認知の向上や購買ニーズを醸成し、宅配寿司業界を牽引するようになったのだ。

2010年からデジタル化推進、6割はWEB経由に

さらに、不動の地位を築くのに大きく寄与したのがデジタル化だ。

今でこそ多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を掲げ、デジタルへのシフトに奔走している。一方で、銀のさらは渋谷さんが入社した2010年ごろから業界に先駆けてDX化を推進してきた。

なぜ早くに、デジタルを使ったマーケティングやプロモーションに目をつけたのか。

「当時、アメリカの宅配ピザ業界が先行して、日本の宅配ビザ業界でもネットを利用した宅配注文システムによるオーダーに力を入れ始めていました。そのとき、『これは早めに手を打っておかないと、取り残されてしまう』と危機感を抱き、宅配ピザ業界をベンチマークするようになりました。今まで紙のメニューチラシやDMをポスティングし、電話で出前の注文を取っていたのを、いきなりデジタルに切り替えるのは難しいので、徐々に浸透させていけるように意識しました」(渋谷さん)

デジタルでのマーケティングに取り組み始めた当初は、電話注文が95%に対してWEB経由での注文はわずか5%ほどだったという。

それが、LINE公式アカウントの運用やメールマガジンによる配信などのマーケティング施策を実行し、知見やノウハウを積み上げてきたことで、現在では全国平均で40:60の割合になった。

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