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中小企業の6割に「ゾンビ企業化」の恐れ…これから日本のサービス業を見舞う"借金地獄"

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コロナ禍で売り上げの急減に見舞われた対人サービス業は、今後、以前の状態に戻れるのだろうか。野村総合研究所の梅屋真一郎さんは「中小企業は金融機関への借入金返済が重い負担となり、多くが『ゾンビ企業』となる恐れがある」という——。

※本稿は、梅屋真一郎『コロナ制圧 その先の盛衰』(日経BP)の一部を再編集したものです。

督促状を受け取った人

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Yusuke Ide

コロナが対人サービス業に残した爪痕

残念ながら、特に宿泊・飲食・生活関連サービスなどの対人サービス業の企業に大きな爪痕を残した新型コロナの影響は、長期化する可能性がある。そして、企業によっては存続そのものが難しくなるケースも出てくる恐れがある。

筆者が主宰し、2020年3月初めに立ち上がった野村総合研究所の自主研究プロジェクトチーム「NRIコロナ対策プロジェクト」では、対人接触が前提の業務が中心で新型コロナの経営への影響が大きい以下の4業種を「コロナ対人4業種」と呼び、その影響度合いを分析した。

・宿泊業
・飲食サービス業
・生活関連サービス業
・娯楽業

これらの業種は、いずれも企業の稼ぐ力や財務体質が脆弱(ぜいじゃく)な中小企業が多く、労働集約型であるとともに、新型コロナの影響による対人接触の削減が売り上げに直接的に悪影響を及ぼす業種である(図表1)。

コロナ対人4業種と小売業の売り上げ状況(対前年同月比)

出所=総務省統計局「サービス産業動向調査」、経済産業省「商業動態統計」より野村総合研究所作成

新型コロナの影響による対人接触の削減で売り上げ低迷が続く中、政府による資金繰り対策がコロナ対人4業種を支えた。図表2は東京商工リサーチが行った企業アンケートの結果である。

業種別資金繰り支援策利用率

出所=東京商工リサーチ「第8回『新型コロナウイルスに関するアンケート』調査」

この図表からもわかるように、コロナ対人4業種は政府の資金繰り支援策によって支えられ続けた。しかし、このことはこれらの業種の企業にとって非常に重い負担を与える結果になっている。

借入金返済の負担が企業体力を枯渇させる

資金繰り支援策によって大きく膨れ上がった金融機関借入金は、融資である以上、最終的には元本・利子を含めて返済を行う必要がある。実質無利子・無担保融資と言えども、据え置き期間を過ぎれば返済を求められるし、利子も発生する。問題は大きく膨れ上がった債務を返済するだけの企業体力を持っていない企業が、特に中小企業には多く存在する可能性があることである。

企業が日々の活動の中で借入金を返済するためには、営業活動で稼いだ資金を返済に回す必要がある。企業の稼ぐ力をEBITDAと呼び、一般には営業利益+減価償却費で計算される。EBITDAを使えば、借入金をどの程度の期間で返済可能かがわかる。それが短ければ短いほど企業体力がある。

一般に金融機関は、営業活動で企業が稼いだ資金を使って借入金を何年で返済可能かを債務償還年数と呼んでおり、その償還年数が一定程度を上回った場合には、その企業の債務者区分を、要注意先または破綻懸念先として取り扱う。

破綻懸念先とは、現時点で経営破綻の状況にはないが、経営難の状態にあり、今後、経営破綻に陥る可能性が大きいと認められる債務者のことを言い、企業として存続が難しい局面にあることを示している。

経営者の高齢化で事業継続はさらに困難に

ただし、実際の金融機関の企業への対応に際しては、必ずしもこのような機械的な区分で対応を変えることはなく、その他全般の経営状況を見ながら支援などを行っているが、いずれにしても借入金の負担が企業体力から見て非常に重いことを表している。

一般に、借入金の償還年数で図表3のような債務者区分に分かれるとされており、償還年数が20年を超すと債務返済が困難な危険水準と言える。

一般的な債務者区分

出所=野村総合研究所作成

また、日本では経営者の高齢化も進んでいる。帝国データバンクが全国94万社を対象に社長の年齢を調べたところ、21年1月時点で平均年齢は60.1歳と60歳を超えている。また、後継者不足に悩む企業が65%に達すると言われており、経営者の年齢を勘案しても長期に渡る借入金返済は実質的に不可能と言えよう。

企業持続性の崖に直面するコロナ対人4業種以上の問題意識から、「NRIコロナ対策プロジェクト」では、財務データを用いた企業の債務償還期間の状況を分析し、20年10月に公表した。

この分析では、特に「コロナ対人4業種」企業の債務の返済能力に注目し、新型コロナウイルスの影響が長期化した場合、新型コロナの影響が収束したとしてその後もそれらの企業が事業継続可能かについて、資金繰り融資で膨れ上がる債務をEBITDAでどの程度の期間で償還可能か、その年数を推計することで判断した。

コロナ影響が2年間続くと危険水準

具体的には、

①新型コロナの影響で長期間売り上げが一定比率減少し、企業の維持コストである固定費がそのままでは賄えなくなると想定し、その分だけ資金繰り融資で対応すると仮定
②新型コロナの影響が一定期間継続した後でなくなり、その後EBITDAを全額債務償還に充てると仮定
③その債務償還期間を、業種ごとの財務データを用いて試算する

といった形で試算を行った。中小企業への影響と大企業への影響の差を分析するため、財務データとしては資本金1千万円以下の企業もカバーする「法人企業統計年次別調査」である19年度法人企業統計を使用した。

20年10月の分析で、すべての業種で一定期間売り上げが7割減少するとし、「コロナ対人4業種」の4つの業種に関して分析を行ったのが図表4である。

コロナ対人4業種の債務償還期間試算〔売り上げ減少に伴う維持コスト(固定費)を資金繰り融資で対応と仮定〕

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